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目次
Ⅰ. インドネシア: 実質的支配者の確認・監督に関する新規則の施行
2025年2月4日、インドネシア法務省(「MOL」)により、法人の実質的支配者(Beneficial Owner)の確認及び監督に関する新規則(MOL規則2025年2号:「本規則」)が施行されました。
本規則は、法人の透明性を確保し、マネー・ロンダリングやテロ資金供与を防止するため、法人の実質的支配者の特定、確認及び更新に関して、従前より厳格なルールを規定しています。本規則の施行により、従前、法人による実質的支配者の確認の監督手続を規定していた法務人権大臣規則2019年21号(「旧規則」)は廃止されています。
本レターでは、本規則のうち重要な事項を紹介します。
(1) 実質的支配者の定義
本規則上、実質的支配者は「①法人の取締役、コミサリス又は経営陣等の任免権を有する者、②法人を支配する能力を有する者、③法人から直接・間接に利益を受ける権利を有し若しくは実際に利益を受ける者、④法人の資金・資産の実質的所有者である者、及び/又は⑤関連法令に定める基準を満たす者」と定義されています。同定義自体は、旧規則から変更されていません。
(2) 実質的支配者の特定等に関する追加義務の制定
本規則においては、旧規則同様、実質的支配者の特定・届出が求められており、かつ、実質的支配者に変更があった場合、変更についての届出が求められています。
さらに、本規則では、上記の義務に加え、①実質的支配者に関する情報の年次更新、②実質的支配者に関する書類・記録の保管、及び③実質的支配者に関する調査票の記入、の各義務が規定されています。
旧規則上、①については頻度が定められていなかったところ、本規則において年次更新が義務付けられました。また、旧規則上、③の義務の名宛人は法人のみであったところ、本規則において、公証人も名宛人に追加されました。なお、②の義務については旧規則から変更ありません。
特に、①については、実質的支配者に変更がなくとも情報の更新が必要とされており、提出された情報が最新であることがより担保される仕組みとなっています。
(3) リスクベースでの検証・継続的なモニタリングの枠組み
本規則により、マネー・ロンダリングやテロ資金供与のリスクに応じた、実質的支配者の正確性等についての検証の枠組みが導入されており、各法人、公証人、MOL及びその他の政府機関が、それぞれ検証の責任を負うとされています。また、継続的なモニタリングの仕組みとして、法人及び公証人は、設立、定款変更及び会社情報の変更・更新、実質的支配者の変更の際には、実質的支配者に関する調査票の記入が求められます(上記のとおり、旧規則では法人のみが義務を負うことが規定されていました。)。
(4) 行政罰の導入
旧規則では、実質的支配者の特定・届出の懈怠について、特段の行政罰は規定されていませんでしたが、本規則においては、上記の懈怠、及び不正確な情報の報告について以下の行政罰が規定されています。
- 書面警告
- MOLの管理するブラックリストへの掲載(同リストは公表される)
- MOLのオンラインシステム(AHUオンラインシステムといわれ、登記等に利用される)へのアクセス禁止
本規則においては、定款変更や会社情報の変更・更新時等において公証人にも実質的支配者に関する調査票の記入が義務付けられたため、上記コーポレートアクションに関与する公証人から、実質的支配者に関する情報提供がより厳格に求められることが想定されます。また、本規則上、行政罰は原則として書面警告から順に段階的に課されることになっているものの、事案によっては、MOLがその裁量に基づき、書面警告を経ずにMOLのブラックリストへの掲載やAHUオンラインシステムへのアクセス禁止措置を課す可能性があるとされているため、罰則の適用状況含め、今後の実務動向を注視する必要があります。
Ⅱ. タイ: 更新権付の長期不動産賃借権の法的有効性に関する土地局通達
タイ民商法(Civil and Commercial Code:「民商法」)540条は、不動産の賃貸借の期間の上限を30年までと定めつつ、30年を超えない期間であれば、賃貸借を更新することが可能である旨を定めています。そこで、30年を超えて賃貸借を存続させることを当事者が希望する場合、当初の賃貸借期間を30年としつつ、その後の30年の賃貸借の更新権を定めておくという、いわゆる「30年+30年リース」と呼ばれるスキームを用いる例も実務上見受けられるところです。
(1) 更新権付の長期不動産賃貸借に関する最高裁判例と「30年+30年リース」の法的有効性への示唆
このような賃貸借スキームの有効性については、近時の最高裁判例(No. 4655/2566)が、表面上は民商法540条に従った30年の賃貸借となっている場合であっても、当事者の真意が30年を超える期間の賃貸借を合意することにある場合には、当該賃貸借のうち、当初の30年を超える期間は無効になり得る旨を判示しました。当該最高裁の事例は、30年の更新権が2回定められた事例(「30年+30年+30年」の合計90年)であったものの、その判断の内容は「30年+30年リース」の有効性を検討するに際しても同様に当てはまると考えられることから、以下に紹介させていただきます。
当該事例においては、以下の事実が認定されています。
- 当初の賃貸借期間は30年であるものの、二度にわたる30年の更新権が合意されている(最長90年の賃貸借が可能)。
- 更新権を含む全ての契約条件は、同日のうちに合意されている。
- 契約締結後2週間以内に、更新後の期間を含む90年分の賃料が一括で支払われている。
このような事情の下、最高裁は、当事者には当初から90年の賃貸借を行う意図があったと認め、民商法540条の潜脱であるとして、当該賃貸借のうち、二度の30年の更新権を定める条項は無効であると判断しました。以上を踏まえると、「30年+30年リース」についても、更新権を含む全ての契約条件が同日に合意され、かつ、契約締結後間もないタイミングで60年分の賃料が一括で支払われるような場合、民商法540条の潜脱であると認定されるリスクがあると考えられます。
(2) リースに関する土地局の通達
上記の最高裁判例を受け、土地局(Department of Land)は、2025年4月、更新権を含む賃貸借契約の登記実務につき明確化する通達を新たに公表しました。
当該通達は、主に以下の内容を定めています。
- 従前の30年の賃貸借期間が満了したことを条件とする、二度目の30年の賃貸借の登記申請は、受理することが可能である。
- しかし、賃貸借契約の構造全体に鑑み、当初から30年を超える期間の賃貸借を意図していると認められる場合は、登記が経由されているとしても、当該賃貸借は執行不能となり得る。
- 法令に従って賃貸借契約を締結することは当事者の義務であり、土地局による登記の受理は、当該賃貸借の法的有効性を何ら担保するものではない。
以上の(1)及び(2)を踏まえると、更新権付の賃貸借契約又は賃貸借契約の再契約を締結するにあたっては、契約締結当初から更新又は再契約をコミットする意図があったと認定されることがないよう、更新又は再契約を行うかは将来の判断に委ねられていることを明確にする必要があると考えられます。裁判所は、賃貸借契約の構造全体を評価するため、賃料の支払方法、更新権行使の時期及び更新権行使書面の記載内容等の様々な観点に留意する必要があるものと考えられます。
Ⅲ. フィリピン: 企業結合に関する届出の金額基準の変更(2025)
2025年2月27日、フィリピン競争委員会(Philippine Competition Commission:「PCC」)は、フィリピン競争法における企業結合に関する届出の金額基準を変更する決定(Commission Resolution No. 04-2025:「本決定」)を行いました。本決定は、2025年3月1日に発効しています。
本レターでは、本決定における新しい金額基準について、紹介します。
(1) 当事者の規模(Size of Party)の基準
新しい金額基準においては、当事者の規模(買収者又は被買収者のいずれかについて、その属する企業グループのフィリピンの年間売上高又は資産)の基準が、78億フィリピンペソ(約200億円)超から85億フィリピンペソ(約218億円)超に変更されました。
フィリピン競争法の施行細則(Implementing Rules and Regulations:「IRR」)が制定された2016年3月当時は、当事者の規模の基準は10億フィリピンペソ(約26億円)超とされていたことから、約9年の間に8.5倍に増額されたことになります。
(2) 取引の規模(Size of Transaction)の基準
新しい金額基準においては、取引の規模(議決権株式の取得の場合は、対象会社及び対象会社が支配する会社が有するフィリピンにおける資産又は売上高。また、合弁会社の設立の場合は、合弁会社に出資されるフィリピンにおける資産の額又は当該資産による売上高)が、32億フィリピンペソ(約82億円)超から35億フィリピンペソ(約90億円)超に変更されました。こちらの金額基準も、IRRが制定された2016年3月時点の10億フィリピンペソ超から、約9年の間に3.5倍に増額されたことになります。
なお、議決権株式の取得の場合は、当事者の規模の金額基準と取引の規模の金額基準の両方を満たすことに加え、取引の結果、買収者が、対象会社の議決権の35%超(当該取引の前に35%超を保有している場合は50%超)を保有することになる場合に企業結合に関する届出が必要となります。
2025年3月1日以後に適用される企業結合に関する届出の金額基準は上記のとおりです。なお、2025年3月1日より前に届出が行われた取引、フィリピン競争委員会が現在審査中の取引、及び、既にフィリピン競争委員会が審査した取引については、新しい金額基準は、適用されません。
フィリピン競争委員会のホームページ(2025年6月2日時点)によれば、フィリピン競争委員会はこれまでに286件の取引について企業結合に関する審査を行っており、フィリピン競争委員会による執行が活発に行われていることが窺われます。
フィリピンの企業結合の届出の金額基準は、これまでに8回変更されており、フィリピンでM&Aを行う企業は、常に最新の基準を確認する必要があります。
Ⅳ. マレーシア: 個人データの越境移転に関するガイドラインの制定
2025年4月29日、マレーシアにおいて、個人データの越境移転に関するガイドライン(Cross Border Personal Data Transfer Guidelines:「本ガイドライン」)が施行されました。
マレーシア個人情報保護法(PDPA)は2025年4月に改正され、個人データの越境移転に関する適法性要件も改められました。本ガイドラインは、この新しいPDPAの下で、データ管理者がマレーシアから外国に個人データを移転するために採るべき措置などに関する指針を明示するものです。
本ガイドラインのもとでは、それぞれ、以下のような場合に個人データの越境移転が認められることとなっています。
PDPA129条の要件 | 本ガイドラインの定め |
---|---|
原則ルール(①又は②) | |
① 移転先の法域がPDPAと実質的に類似の法律を有している場合(129条2項(a)) | データ管理者は、移転影響評価(Transfer Impact Assessment:「TIA」)を実施する必要があります。TIAは、大まかにいえば、①移転先の法域を特定し、②当該法域における個人情報保護法制などを分析し、③個人データを移転する判断がPDPAに準拠していることを確認する、という流れで行われます。TIAは3年間のみ有効です。 |
② 移転先の法域が、個人情報の取扱いに関し、最低限PDPAにより与えられているのと同等の、適切な水準の保護を提供している場合(129条2項(b)) | TIAを実施する必要があるのは129条2項(a)の場合と同じです。 |
例外適用ルール((a)-(g)) | |
データ主体の同意がある場合(129条3項(a)) | データ主体の同意を取得するために、データ管理者は、越境移転の移転先となる第三者の属性及び越境移転の目的を、個人データ保護通知に記載の上提供し、得られた同意の記録を適切に作成管理する必要があります。 |
データ主体との契約を履行するために必要な場合(129条3項(b)) | 129条3項(b)に基づき移転する場合には、越境移転を必要とする契約上の義務が、その契約の主要な目的を果たすためのものであることが必要です。 |
(i)データ主体の要請により、又は(ii)データ主体の利益のために第三者と契約を締結又は履行するために必要な場合(129条3項(c)) | 「必要な」の判断要素は129条3項(b)と同じです。 129条3項(c)に基づき移転する場合には、(i)の要請は書面その他証拠化できるものである必要があり、また(ii)の場合その契約の主要な目的がデータ主体に直接の利益を与えるものである必要があります。 |
法的手続や、法律上の権利を基礎づけ、行使し、保護するための助言を得るために必要な場合(129条3項(d)) | 法的手続は訴訟に限られず、仲裁等法定外の手続も含まれます。また、法的手続開始前でも、データ管理者が、外国の当局から、正式な法的手続を見据えた情報開示要請を受けた場合なども129条3項(d)の適用があり得ます。 |
諸般の事情を総合考慮の上、①データ主体に対する悪影響を軽減する目的であり、②データ主体の同意を取得することが現実的でなく、かつ、③求められればデータ主体が同意するであろうと見込まれる場合(129条3項(e)) | ②の場合としては、データ主体の意識がない場合や、手段を尽くしてもデータ主体と連絡を取ることができない場合や、同意を取得するために必要な情報を全て提供することが難しい時間的制約があるような場合が例示されています。 |
個人データが移転先において、マレーシアであればPDPA違反となるような取扱いをされないことについて、データ管理者が十分な予防措置を取り注意義務を尽くした場合(129条3項(f)) | データ管理者はこの予防措置・注意義務を果たしたといえるために以下のいずれかのメカニズムを用いることができます。
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データ主体の極めて重要な利益を守るために必要な場合(129条3項(g)) | この重要な利益に対するリスクが、PDPA上の懸念を上回る必要があります。 |
個人データの越境移転ルールについて、いわゆるBCRやSCC等、欧州のGDPR類似のルールを導入したものと見受けられますが、今後の現地実務の動向には引き続き注視が必要です。
Ⅴ. シンガポール: コーポレート・サービス・プロバイダー法の改正
2025年6月9日、シンガポールにおいて、Corporate Service Providers Act 2024(「改正法」)が施行されました。シンガポールでは、マネー・ロンダリング対策の強化を目的として、企業コンプライアンス体制に関する法改正が継続的に行われており、改正法は、その一環としてコーポレート・サービス・プロバイダー(「CSP」)への規制を強化するものとなります。本レターでは、改正法の主要な内容・ポイントについて紹介します。
(1) CSPのACRAへの登録義務
改正法では、コーポレート・サービス事業を営むCSPに対して、(たとえ顧客に代わって会計企業監督庁(「ACRA」)への取引の登録を申請しない場合であっても、)ACRAへの登録を義務付けています(「登録CSP」)。ここでいう「コーポレート・サービス」とは、①法人の設立、②取締役又は秘書役の就任、③登記される事業所・住所の提供、④名義株主への就任、⑤会計サービスの一部、及び⑥ACRAの電子取引システムを使用した取引など、広範な内容が含まれており、登録義務を懈怠した場合には刑事罰が科せられます。
(2) 登録CSPによるマネー・ロンダリング防止、テロ資金対策及び大量破壊兵器の拡散に関する資金調達に関する義務の遵守
改正法では、以下の場合に、登録CSPが顧客についてデューデリジェンスを実施することを義務付け、これに違反した場合、登録CSP及びその上長には刑事罰が科されることが規定されています。
- 顧客に対してコーポレート・サービスを提供する前
- マネー・ロンダリング、テロ資金の調達又は大量破壊兵器の拡散に関する資金調達を疑う合理的な理由がある場合
なお、顧客に対するデューデリジェンス措置として、改正法上は以下の内容が定められており、より詳細な方針、手順、管理方法等については、Corporate Service Providers Regulations 2025(「CSP規則」)に定められています。
- 顧客及びその代理人を特定し、その身元を確認すること
- 顧客の全ての実質的所有者を特定し、当該実質的所有者の身元を確認すること
- 登録CSPと顧客との間の取引関係の目的に関する情報及びその性質に関する情報を取得すること
- マネー・ロンダリング、テロ資金の調達又は大量破壊兵器の拡散に関する資金調達を検出又は防止するためのその他の措置
(3) 名義取締役に関する登録CSPの適格性の評価及び手配の義務化
登録CSPは、名義取締役を手配する際、対象者が適格性かつ適正性を有すると判断しない限り、その手配をしてはならないことが定められました。CSP規則では、名義取締役の適格性及び適正性を判断する際の考慮要素として、以下の項目を列挙しています。
- 詐欺や不正行為、又は関連する犯罪で有罪判決を受けたことがあるかどうか
- 免責を受けていない破産者への該当性の有無
- 取締役を務めていた会社の過去の行動やコンプライアンス履歴
- 過去の経験や既存のコミットメント(既存の取締役職の数を含む)に照らし、名義取締役としての義務を適切に果たす能力、資質、適性の有無
CSPに関する規制は、マネー・ロンダリング対策の一環として注目を浴びており、本改正からも企業コンプライアンスを強化し、マネー・ロンダリングを防止しようとするACRAの姿勢を垣間見ることができます。企業としては、提携するCSPが改正法を遵守しているかどうか、注視する必要がありそうです。
※当事務所は、シンガポールにおいて外国法律事務を行う資格を有しています。シンガポール法に関するアドバイスをご依頼いただく場合、必要に応じて、資格を有するシンガポール法事務所と協働して対応させていただきます。
今月のコラム -ヤンゴンから見たミャンマーの今-
友人に「ミャンマーで仕事をしています」と話すと、ほぼ毎回のように「今のミャンマーに行って大丈夫なの?」という質問が返ってきます。こうした質問は、「そもそもミャンマーに入国できるの?」「3月の地震で街が壊れてしまっているのでは?」といった懸念を含んでいるのだと思います。筆者なりの結論を一言で言えば、「大丈夫です」。本稿では、当事務所が拠点を置くヤンゴン(2025年6月現在)の様子を簡単にお伝えしたいと思います。ただし、筆者自身が直接見ているのはヤンゴンという都市の限られた一部にすぎませんので、国全体の状況とは必ずしも一致しない可能性がある点はご留意ください。
「そもそも今のミャンマーに入国できるの?」
→入国は可能です。以前は、日本を含む一部の国に対して観光目的でのビザ免除措置が取られていた時期もありました(2018年から約2年間)。現在この措置は終了しており、ミャンマーへの渡航にはビザ取得が必要です。ただし、必要なビザを取得すれば、基本的には従前と同様に入国は可能です。
「3月の地震で街が壊滅状態になっているのでは?」
→ヤンゴンに関しては特段の被害はありません。3月28日に発生した地震(マグニチュード7.7〜7.9)は、ミャンマー中部のマンダレー近郊が震源地でした。ヤンゴンは南部に位置し、震源から直線で500キロ以上離れています(東京〜大阪間と同程度の距離です)。ヤンゴンでも震度3程度の揺れがあったと聞いていますが、建物の倒壊や道路の損傷といった被害は確認されていません。被災地からヤンゴンへ移動する人が増えているという情報もありますが、それに伴う大きな混乱は生じていないようです。

こちらは2025年6月現在のヤンゴン・ダウンタウンの様子を写した写真です。倒壊した建物などは見当たらず、街は平常通りに見えます。
一部報道ではヤンゴンの治安悪化が指摘されることもあります。かつてはアジアの中でも特に治安が良いとされたミャンマーですが、近年の社会状況の変化を背景に、都市部では治安の変化が見られる面もあります。ただし、ヤンゴンに関して言えば、日常生活に大きな支障があるような状況ではなく、街は落ち着いて動いており、出張等で訪問された方からも「思ったよりも普通の街の様子だった」との感想をよく聞きます。
もっとも、統計上の貧困率は上昇しており、物価の上昇や電力供給の不安定さなど、市民生活に影響を与えている要素も見られます。今年12月以降には総選挙の実施が予定されていると報じられており、それに伴って現在の緊急事態宣言も近く終了することが見込まれます。今後、総選挙を経てどのような方向性に進むのかは現時点では見通せませんが、地震や社会情勢の変化にも負けず日々の生活を営む人々が、今後も安定した生活を送れるよう、情勢の改善を願っています。
(井上 淳)