Chat GPTに代表される生成AIは、これまでのAIとは質的に異なる(ように感じられる)実用性を伴ってここ数か月の間に世の中を席巻し、経済社会の様々な分野に少なからぬ影響を及ぼしています。法律分野もその例外ではなく、知的財産法をはじめとするいくつかの分野において、生成AIを活用した事業活動が引き起こす新たな法的問題について議論がされはじめています。また、独禁法/競争法、競争政策の分野においても、海外の研究者の一部が論文を発表したり、いくつかの法律事務所がニュースレターを発出したりと、当該トピックを取り上げて論じる動きが一定程度見られるところです。他方で、このような新たなテーマの常として、生成AIを活用した事業活動に固有の問題などありえず、あくまでもこれまでの独禁法/競争法や競争政策の延長で検討すべきであって、取り立てて当該トピックを取り上げることは的外れであるという指摘も十分あり得るところかと思います。
本発表では、Chat GPTに代表される生成AIを用いた事業活動と独禁法/競争法・競争政策との関係について、既存の各種技術とは異なる生成AIの特徴とは何であってそれが競争環境の分析に際してどのように影響するのか、生成AIを用いた事業活動が広く普及した経済社会においては何が競争の源泉となるのか(これまでと異なる点はあるのか)、デジタルカルテルやブロックチェーンと競争法、メタバースと競争法といったここ数年において時折議論されてきた「流行りのテーマ」と生成AIとは、事業活動に与える影響や競争環境の分析に与える影響が大きく異なるのかといった点に注目して検討を行うとともに、人材と独禁法/競争法や競争政策、イノベーションと競争政策といった国内外の議論と同トピックとの関係を意識したご紹介をし、皆さんに議論の素材をご提供できればと考えています。なお、本トピックに限らず、近時の独禁法/競争法・競争政策の分野のトピックに関しては、「ハードロー」による事前規制に大きく舵を切る欧州競争関連当局の動きや、政治的な影響を大きく受けているともいわれる米国関連当局の動きも重要な分析材料になるかと思いますので、時間があればそうした角度からの示唆なども盛り込むことができればと考えています。
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