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Tax Law Newsletter

最新事例解説 組織再編成に係る行為計算否認規定(法人税法132条の2)の適用を否定した裁判例(PGM事件高裁判決-東京高裁令和7年7月23日判決)

ポイント

  • 税務上の適格合併については、消滅会社の繰越欠損金を存続会社に引き継ぐことが認められています(法人税法57条2項)。他方、課税当局は、組織再編成に係る行為計算否認規定(法人税法132条の2)を適用し、適格合併による繰越欠損金の引継ぎを否認することができるとされています。そのため、どのような場合に繰越欠損金の引継ぎが否認されてしまうのか(法人税法132条の2の適用要件)を理解することは、M&A取引やグループ内再編のストラクチャリングの実務において極めて重要です。
  • 企業グループ内の適格合併による繰越欠損金の引継ぎを法人税法132条の2で否認した課税処分に対し、納税者がその取消しを求めて提起した税務訴訟において、東京高等裁判所は、当該合併は不自然ではない上、当該合併を行うことの合理的な理由となる事業目的等も存在することから同条の適用要件を満たさないとした東京地方裁判所の判断を支持し、当該課税処分を違法と判断しました(東京高裁令和7年7月23日判決LEX/DB文献番号25623510)。
  • 今回の判決は、M&A取引やグループ内再編の実務に重要な示唆を与えるものであり、過去の同種事案(TPR事件)における裁判所の法解釈を否定している点においても重要な裁判例と考えられます。

Ⅰ. はじめに

昨年7月に東京高等裁判所で、企業グループ内の組織再編による繰越欠損金の引継ぎを法人税法132条の2を適用して否認した課税処分につき、当該課税処分を違法とした判決が言い渡されました(東京高裁令和7年7月23日判決LEX/DB文献番号25623510。以下「本判決」といいます。)。

本件は、パシフィックゴルフマネージメント株式会社を持株会社とするゴルフ場運営などを手掛ける企業グループ(以下「PGMグループ」といいます。)の構成法人の1つであるPGMプロパティーズ株式会社(以下「原告」といいます。)が、約58億円の繰越欠損金を有するPGMグループの他の会社を吸収合併して当該繰越欠損金を引き継いだところ、課税当局が、組織再編成に係る行為計算否認規定である法人税法132条の2を適用し、当該引継ぎを否認した事案です。

本判決は、法人税法132条の2に関するこれまでの否認事案(後述するヤフー事件及びTPR事件)とともに、企業グループ内の適格合併による繰越欠損金の引継ぎがどのような場合に否認されるのか、という点の検討に大変有益と考えられます。

そこで、本ニュースレターでは、本件の事案の概要や本判決の内容等を紹介した上で、裁判所の判断内容を検討します。なお、当職らは本件の納税者代理人ではなく、本ニュースレターの内容は、訴訟当事者ではない第三者として適法に入手した情報に基づくものであることを念のため申し添えます。

Ⅱ. 繰越欠損金の引継ぎとその否認について

1. 企業再編における合併消滅会社の繰越欠損金の引継ぎ

グループ内再編やM&A等の企業再編において、合併や分割等の組織再編行為を用いることはごく当たり前のこととなっています。これらの組織再編行為が税務上の適格組織再編成(適格合併、適格分割等)に該当する場合、対象会社・対象事業の含み益は組織再編行為時に認識されず、将来に繰り延べられるという税務上のメリットを受けられます。

さらに、適格合併については、消滅会社の繰越欠損金を存続会社に引き継ぎ、これを合併後の存続会社において損金算入することが認められています(法人税法57条2項。ただし、企業グループ内の適格合併の場合は、同条3項により、「みなし共同事業要件」を満たすか、支配関係が生じてから5年経過した後の合併である必要があります。)。

2. 法人税法132条の2による否認

(1)法人税法132条の2の概要
もっとも、法人税法上、繰越欠損金の引継ぎの要件を満たす適格合併であっても、課税当局は、組織再編成に係る行為計算否認規定である法人税法132条の2を適用し、繰越欠損金の引継ぎを否認することができるとされています。すなわち、適格合併による繰越欠損金の引継ぎについては、常に、法人税法132条の2による否認の可能性があるということになります。

法人税法132条の2の適用要件は、条文上、「法人の行為又は計算で…これを容認した場合には…法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがある」場合(以下「不当性要件」といいます。)とされています。

この意味について、いわゆるヤフー事件最高裁判決1は、「『法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの』とは、法人の行為又は計算が組織再編成に関する税制(以下「組織再編税制」といいます。)に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいうと解すべきであり、その濫用の有無の判断に当たっては、①当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とは乖離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか〔筆者注:以下「行為計算の不自然性」といいます。〕、②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか〔筆者注:以下「事業目的等の不存在」といいます。〕等の事情を考慮した上で、当該行為又は計算が、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である。」と判示しています。

(2)合併による繰越欠損金の引継ぎに対する法人税法132条の2の適用
ヤフー事件最高裁判決の後の否認事案であるいわゆるTPR事件においては、課税当局が法人税法132条の2を適用し、親会社が長年全株式を保有していた子会社との適格合併により当該子会社の繰越欠損金を引き継ぐことを否認しました2。このTPR事件では、一審判決・控訴審判決ともに納税者が敗訴し、最高裁が実質的判断をすることなく上告棄却等したため、課税当局の勝訴が確定しています。

TPR事件の控訴審判決3は、上記ヤフー事件最高裁判決の判断枠組みを踏襲しつつ、適格合併及びこれによる繰越欠損金の引継ぎに関して、「組織再編税制は、組織再編成による資産の移転を個別の資産の売買取引と区別するために、資産の移転が独立した事業単位で行われること及び組織再編成後も移転した事業が継続することを想定しているものと解され」るため、「完全支配関係がある法人間の合併についても、他の2類型の合併4と同様、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続を想定しているものと解される」と判示し、さらに、「(適格合併による繰越欠損金の引継ぎを認める)法人税法57条2項についても、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続を想定して、被合併法人の有する未処理欠損金額の合併法人への引継ぎという租税法上の効果を認めたものと解される」と判示し、同事件の100%親子間の適格合併について、「形式的には適格合併の要件を満たすものの、組織再編税制が通常想定している移転資産等に対する支配の継続、言い換えれば、事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえず、適格合併において通常想定されていない手順や方法に基づくもので、かつ、実態とはかい離した形式を作出するものであり、不自然なものというべきである5等と述べて、課税当局による法人税法132条の2に基づく否認を是認しました。

このように、TPR事件では、完全支配関係がある法人間の適格合併について、繰越欠損金の引継ぎに「合併による事業の移転及び合併後の事業の継続」の存在を必要とする明文の規定がないにもかかわらず、「合併による事業の移転及び合併後の事業の継続」がないことをもって、当該適格合併は不自然であり、法人税法57条2項の本来の趣旨目的を逸脱するものであるとして、不当性要件を満たすと判断されました。

Ⅲ. 本判決の事案の概要

本判決の判断の前提とされた事実関係は、大要以下のとおりです。

1. PGMグループのビジネスモデル

PGMグループのビジネスモデル(以下「本件ビジネスモデル」といいます。)は、経営危機に陥るなどしたゴルフ場運営法人を買収して規模を拡大させ、多数のゴルフ場を本部で集中管理し、ゴルフ用品等を一括購入するなどしてスケールメリットを追求するとともに、買収により増え続ける子会社の数を合併により削減することにより、経営の合理化・効率化を追求するというものでした。そして、本件ビジネスモデルに基づき、後述する本件各合併の10年以上前から、買収によってPGMグループのパシフィックゴルフプロパティーズ株式会社(以下「PGP」といいます。)の子会社の数がある程度増える都度、グループ内での吸収合併を繰り返し、最終的には原告にこれらの会社を吸収合併させることによって、ゴルフ場の保有機能を原告に集約させつつ、PGPの子会社の数を削減するための合併を繰り返していました。

2. PGPAH6の買収及び同社の事業再編

PGPは、2009年4月、大手商社から、ゴルフ場運営会社(以下「PGPAH66といいます。)を買収して子会社化しました。その後、同年7月に、PGPAH6は、ゴルフ場事業をPGPAH6の100%子会社であるA社に会社分割で移転させ、さらに、同年9月当該A社の株式を他のPGMグループの構成法人であるB社に譲渡しました(7頁の取引図の①~③参照)。

これは、PGPAH6では、当時同社の代表取締役の横領事件が発生しており、それに関連して同社が負う可能性があった損害賠償義務等の簿外債務(以下「本件簿外債務」といいます。)を抱えていたため、上記の会社分割によりゴルフ場事業を営まず不動産等の主要な資産を有しないPGPAH6に本件簿外債務に係るリスクを負わせてA社が本件簿外債務に係る弁済をすること等を回避し、上記の株式譲渡により本件簿外債務に係るPGPAH6の債権者がA社の株式を差し押さえるのを防止しようとしたものです。

なお、上記の株式譲渡により、PGPAH6において多額の株式の譲渡損失が生じており7、これが、後述する本件未処理欠損金額の大半を占めています。

また、A社は同年12月に他のPGMグループの構成法人であるC社に吸収合併され、B社は2010年6月に原告に吸収合併されており、A社のゴルフ場事業を承継したC社は原告の完全子会社となっていました(7頁の取引図の④⑤参照)。

3. 2017年の2つの合併によるPGPAH6の繰越欠損金の引継ぎ

その後、2017年になって、PGPAH6は同じくPGPの100%子会社である8PGMプロパティーズ4株式会社(以下「PGMP4」といいます。)に吸収合併され(以下「本件合併1」といいます。)、そのPGMP4及びC社その他のPGMグループの構成法人は、PGPが99.99%株式を保有する原告に吸収合併されました(以下「本件合併2」といい、本件合併1と併せて「本件各合併」といいます。)(7頁の取引図の⑥⑦参照)。本件各合併は、いずれも適格合併として税務処理され、PGPAH6の繰越欠損金について、PGMP4を経由して原告に引き継ぐ処理がなされました。

この本件各合併に関し、課税当局は、法人税法132条の2を適用し、PGPAH6が本件合併1の直前に有していた、前9年内事業年度において生じた約58億円の繰越欠損金(以下「本件未処理欠損金額」といいます。)の引継ぎを否認して、原告に対し、課税処分を行いました。

なお、本件各合併までに、本件簿外債務に係る債権者と称する者が2名現れた以外に本件簿外債務に関する特段の問題は生じておらず、PGPAH6は、遅くとも2013年12月以降、本件簿外債務への対応に関する具体的な活動をしていなかった上、PGPAH6にて横領行為を行った者が代表取締役であったのは2007年5月までであり、本件各合併に係る各合併契約が締結された2016年12月14日までに9年以上が経過していました。

また、上記のとおり、PGPAH6は、本件合併1・本件合併2という二段階の合併を経て原告に吸収されていますが、仮に、原告がPGPAH6を直接吸収合併していた場合、当該合併は適格合併に該当しないため、PGPAH6の繰越欠損金を原告が引き継ぐことはできなかった可能性が高いと考えられます。

そのため、国は、本件訴訟において、「原告とPGPAH6とが直接合併した場合には、適格合併として取り扱われる余地はなかったため、本件各合併については、原告に対する本件未処理欠損金額の引継ぎを実現させること以外に事業上必要のないPGPAH6とPGMP4との完全支配関係適格合併(本件合併1)を差し挟んだ上で、PGMP4と原告とが支配関係適格合併(本件合併2)を行うという、本件各合併を二段階に分けて実行することによって、原告とPGPAH6とが直接合併した場合の従業者引継要件及び事業継続要件の欠缺を回避し、同合併が形式上適格合併として取り扱われることを可能にしたものと評価することができる。」、「以上を踏まえると、本件各合併は、PGPAH6の繰越欠損金を最終的に原告に引き継がせるための具体的な手順等をPGMグループ内において繰り返し検討した上で、原告を含む関係法人が、原告に本件未処理欠損金額を引き継がせること以外に事業上の必要性のない本件合併1を同日に差し挟んだ上で、本件合併2を行い、本件各合併を二段階に分けて実行するというあえてう遠な手順や方法をとることにより、本来は組織再編税制上の非適格合併である原告とPGPAH6との合併が適格合併として取り扱われるという形式をあえて作出したもの(適格作り)ということができる。」などと主張していました。

(取引図)

Ⅳ. 本判決の内容

1. 地裁判決(東京地裁令和6年9月27日)

本判決の原審である東京地裁は、次のように、納税者勝訴の判決を下しました。なお、後述のとおり、当該地裁判決は、本判決において概ね維持されています。

(1)不当性要件に係る判断枠組み
地裁判決は、上記Ⅱ.2.(1)のヤフー事件の最高裁判決において判示された不当性要件の判断枠組みを採用し、「①適格合併が行われた結果、未処理欠損金額が引き継がれ、租税負担が減少する場合があるというのは、組織再編成税制〔筆者注:原文ママ〕が予定しているものであること」及び「②利益を生み出し、これを株主に対して還元することを究極の目的とする株式会社において、一定規模以上の取引をするに当たり、税務上の影響を全く考慮しないことは考え難く…、むしろ、かかる考慮をしないで取引を行えば、取締役の責任を追及される事態も生じかねないのであって、株式会社が事業の目的に沿って種々の経済活動を遂行するに当たり、業務の管理・遂行上、財務上又は税務上等の様々な観点から、利益を最大化し得る方法を法令の許容する範囲内で自由に選択することができると解されること」から、「行為・計算の不自然性が全く認められない場合や、そのような行為・計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等が十分に存在すると認められる場合には、他の事情を考慮するまでもなく、組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用したものということはできず、不当性要件に該当すると判断することは困難である」ため、「株式会社が合理的な事業目的のある組織再編成を行うに当たり、通常は想定されない手順や方法ではなく、実態と乖離した形式を作出するものでもない、不自然性の全く認められない複数の手順や方法の中から最も税負担の少ないものを採ったとしても、そのことから直ちに組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用したものということはできない」としています。また、合併時期についても、「いつ合併するかは基本的に当事者の自由であり、合併につき合理的な事業目的がある場合には、税務上の効果が最大となる時期を見定めて合併を実行したとしても、そのことから直ちに不当性要件に該当すると判断することはできない」としています。

(2)組織再編税制に係る法人税法57条2項等の趣旨及び目的
地裁判決は、上記(1)の不当性要件の判断枠組みを前提として、「組織再編税制に係る法人税法57条2項等の趣旨及び目的は、組織再編成により資産を移転する前後で経済実態に実質的な変更がない場合には、その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を継続させるというものであり、経済実態に実質的な変更がないか否かを判断するなどのために、法人税法2条12号の8及びこれを受けた法人税法施行令4条の3等において、適格合併と判定するための具体的な要件が定められているものと認められる」と述べています。

そして、上記Ⅱ.2.(2)のTPR事件の控訴審判決における判示を踏襲した「法人税法57条2項等は、完全支配関係適格合併の場合も含めて、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続を前提として、被合併法人の有する未処理欠損金額の合併法人への引継ぎを認めたものと解すべき」という国の主張に対しては、「法人税法及びこれを受けた法人税法施行令の規定上、支配関係適格合併及び共同事業適格合併においては、従業者引継要件及び事業継続要件等が必要とされているのに対し、完全支配関係適格合併については、これら従業者引継要件及び事業継続要件等のいずれについても必要とされていない」上、「法57条2項等の規定をみても、完全支配関係のある法人間の合併について、事業の継続がない場合には一律に適用がない旨をうかがわせる文言はない」ことや、組織再編税制の立法時の議論等も踏まえ、「完全支配関係適格合併の場合において、『合併による事業の移転及び合併後の事業の継続』が法人税法57条2項等の適用の『前提』となっているとか、『合併による事業の移転及び合併後の事業の継続』がない完全支配関係適格合併に上記規定を適用することはその本来の趣旨及び目的に反するなどと解することはできない」として、国の主張を排斥しています。

(3)あてはめ
まず、PGPAH6を合併することについては、「PGMグループにおいて、PGPAH6を同グループ内の既存法人に吸収合併することとしたのは、本件簿外債務に係る新たな債権者が現れる可能性が低く、本件簿外債務に係る債権は概ね時効により消滅しており、本件簿外債務に係るリスクが顕在化する可能性は低減していると評価し、PGPAH6を本件ビジネスモデルに基づく組織再編成の対象から除外して残存させておくべき特段の必要性はないと判断したことによるものと認められ」、たとえ休眠会社であっても管理コストが継続的に発生し得ること並びにPGMグループにおいて本件ビジネスモデルによる経営の合理化・効率化及びこれによる大幅な費用削減が実現されていること等から、「PGPAH6を残存させず、PGMグループ内の既存法人に吸収合併することには、合理的な理由となる事業目的が十分に存在するといえる上、何ら不自然なものではない」と判示しています。

また、本件各合併が本件合併1と本件合併2の二段階で実施されたことについての国の主張(上記3.)に対しては、①合併に順序及び条件を付すに当たり、税務上の観点を考慮して順序及び条件を付すことは制限されておらず、むしろ、かかる観点も考慮して順序及び条件を付すのは通常のことと考えられる、②株式会社が合理的な事業目的のある組織再編成を行うに当たり、通常は想定されない手順や方法ではなく、実態と乖離した形式を作出するものでもない、不自然性の全く認められない複数の手順や方法の中から最も税負担の少ないものを採ったとしても、そのことから直ちに組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用したものということはできないところ、PGPAH6及びPGMP4らを吸収合併することは、本件ビジネスモデルに基づくものであり、合理的な事業目的が十分に認められる上、本件各合併のスキームをみても、通常は想定されない手順や方法ではなく、一般に採られている合理的な手順・方法の一つと認められ、かつ、実態と形式との間に乖離はみられない、③しかも、本件各合併のスキームは、〔1〕課税上のメリットがなく、かつ、事務効率化のメリットもない(事務の煩雑さがある)手順・方法(原告が直接PGPAH6を吸収合併する場合)と、〔2〕課税上のメリットがあり、かつ、事務効率化のメリットもある(事務の煩雑さが生じない)手順・方法(本件各合併の場合)のうち、後者を採用したというものであるから、事務効率化のメリットを数値化したり、課税上のメリットと事務効率化のメリットの大小や目的の主従関係を比較したりして検討するまでもなく、営利企業にとって合理的な経済活動と評価できるものであって、何ら不自然なものではない、などと判示して、国の主張を退けました。

そして、結論として、本件各合併「の各部分を個別にみた場合においても、その全体をみた場合においても、『通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づくもの』でも『実態とは乖離した形式を作出したりするもの』でもなく、何ら不自然なものとはいえないし、かかるスキームを採用して合併を行うことの『合理的な理由となる事業目的その他の事由』が存在することからすると、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるものとは認められ」ず、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(法人税法132条の2)には当たらないと判示しました。

2. 本判決

東京高裁は、上記1.の地裁判決の判示をそのまま維持した上で9、法人税法132条の2の適用を否定し、納税者を勝訴させました。また、国が控訴審においてした追加主張については、それぞれ次のように判示しています。

(国の主張)
ヤフー事件最高裁判決の判断枠組みによれば、「事業目的等の不存在」の要素における「行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等」を検討するに当たっては、「税負担の減少目的」と「それを除外した事業目的」とを区別した上で、その主従関係を考慮すべきである。税負担の減少による経済的利益の獲得を、行為又は計算の合理性を肯定する事情として考慮するのであれば、それはヤフー事件最高裁判決に実質的に反する。
 (判旨)
「控訴人が指摘するように、最高裁平成28年判決〔筆者注:ヤフー事件最高裁判決〕でいう考慮事情②〔筆者注:「事業目的等の不存在」の要素〕に関し、税負担の減少目的とそれを捨象した事業目的との主従関係を考慮することを指摘する文献は存在し(甲60・最高裁平成28年判決の判例解説)、その前提として税負担の減少目的とそれを除外した事業目的を区別することは必要であるものと解される。」と述べつつ、「しかしながら、控訴人が指摘する文献等において指摘されているのは、税負担の減少以外の事業目的が存在するか否かだけでなく、それが正当なものといえるかどうかを判断すべきと指摘するもの(甲60)や、税負担の軽減という目的を捨象した場合に合理的経済人として経済的合理性を欠く行為であるかどうかを検討すべきと指摘するもの…等であって、目的の主従関係を考慮することについて、税負担の減少目的がそれ以外の事業目的よりも少しでも重いものであれば不当性要件に該当するといった趣旨で述べられているものとは解され」ず、「本件のように未処理欠損金額が多額である場合、それによる税負担減少の効果が大きいため、法人として税負担減少目的が相対的に重視されることは少なくないものと解されるが、不当性要件の当否は、本来的に金額の多寡によって直ちに決せられるものではない」ため、「税負担の減少目的とそれを捨象した事業目的とのいずれがより重視されていたかを単純に比較するようなことを前提とする主張は、採用することができない。」と判示。

 

(国の主張)
経済実態に実質的な変更がない場合かどうかは、合併による事業の移転や合併後の事業の継続という観点も考慮して、判断すべきである。
 (判旨)
「行為計算の不自然性」及び「事業目的等の不存在」に係る事情として、事業の移転・継続状況が考慮される事例が全く想定されないというものではないと解されるが、…完全支配関係の適格合併の場合に事業の継続が一律に適用の前提になっていたとまでは認められないこと、完全子会社を吸収合併した後に当該子会社の事業を廃止する事例や、休眠会社である完全子会社を吸収合併する事例が容易に想定されるにもかかわらず、組織再編税制の議論においてこれらを適用除外とするような検討がされた形跡が見られないことなどからすれば、完全支配関係の適格合併の場合における事業の移転及び合併後の事業の継続という事情は、不当性要件の判断において、特に重視すべき要素ということはできない。」と判示。

 

(国の主張)
本件各合併は、合併時期及び合併相手につき、PGMグループ内で最も税負担の減少効果が高いものが選択され、PGMグループは、2009年に多額の未処理欠損金額が生じた当時から、その利用について検討していたことから、本件各合併は、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものといえる。
 (判旨)
「合併時期については、原判決説示のとおり、本件各合併当時、本件簿外債務リスクは完全に消滅はしていなかったものの、相当程度そのリスクが低減した時期にあったこと、PGPAH6を存続させ続ける限り一定の管理コストが継続的に発生することなどから、時期の選択には合理性が認められるのであって、税負担の減少という目的を捨象しても、本件各合併の時期が不自然であるとか通常あり得ない時期であったなどと解することはできない。」と判示。
また、合併相手については、本件未処理欠損金額の大半は、PGPAH6における固定資産等の含み損に起因するものであるところ、「PGPAH6から切り離されたゴルフ場運営事業等は、A社を経てC社に引き継がれ、本件各合併の直前において、C社は被控訴人の完全子会社となっており、かつ、本件合併2でC社は被控訴人〔筆者注:原告〕に合併した」ことから、「税負担の減少目的を捨象してみても、繰越欠損金を生じさせた事業を営んできた法人に引き継ぐという観点に照らし、本件未処理欠損金額の引継ぎ先として被控訴人が選択されたことに、不自然・不合理な点はないものというべきである。」と判示。

Ⅴ. 本判決の検討

1. 完全支配関係適格合併の場合における「合併による事業の移転及び合併後の事業の継続」の要否

上記Ⅱ.2.(2)のとおり、TPR事件では、完全支配関係がある法人間の合併について、「合併による事業の移転及び合併後の事業の継続」がないことが、「行為計算の不自然性」ひいては不当性要件充足の根拠とされました。

これに対し、本判決は、上記Ⅳ.2.のとおり、「『行為計算の不自然性』及び『事業目的等の不存在』に係る事情として、事業の移転・継続状況が考慮される事例が全く想定されないというものではないと解されるが、…完全支配関係の適格合併の場合における事業の移転及び合併後の事業の継続という事情は、不当性要件の判断において、特に重視すべき要素ということはできない」と判示し、完全支配関係がある法人間の合併に関し、TPR事件の上記の法解釈を明確に否定している点が注目されます。

TPR事件の上記判示は、個別規定の文言や条文構造から一義的に読み取ることができない「想定」を基準として不自然性や個別規定の趣旨目的からの逸脱を判断していることから、多くの租税法学者・実務家から批判・疑問視されていました10。本判決は、一般論として事業の継続性等が不当性要件の考慮事情となる余地を残しつつも、完全支配関係適格合併については、原判決を踏襲し、事業の継続性等の不存在は不当性要件該当性を肯定する事情とはならないことを明らかにしたものといえます。

2. 税負担の減少目的と事業目的の区別・両者の主従関係について

本判決は、「事業目的等の不存在」の要素に関し、地裁判決の上記Ⅳ.1.(1)の判示を是認した上で、「税負担の減少目的」と「それを除外した事業目的」との主従関係を考慮すべきであるとの国の主張について、上記Ⅳ.2.のとおり、かかる主従関係を考慮することを指摘する文献(ヤフー事件最高裁判決の調査官解説)が存在すること、その前提として上記の二つの目的の区別は必要であることを指摘しつつも、それらの文献において指摘されているのはあくまで「税負担の減少以外の事業目的が存在するか否かだけではなく、それが正当なものといえるかどうかを判断すべき」などというものであって、「目的の主従関係を考慮することについて、税負担の減少目的がそれ以外の事業目的よりも少しでも重いものであれば不当性要件に該当するという趣旨で述べられているものとは解され」ず、「税負担の減少目的とそれを捨象した事業目的とのいずれがより重視されていたかを単純に比較するようなことを前提とする主張は、採用することができない。」と判示しました。

この点、ヤフー事件最高裁判決の調査官解説は、同判決において「事業目的等の不存在」につき、「『税負担の減少以外に合理的な事業目的その他の事由が存在するかどうか』という表現ではなく、『……そのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的……』というやや複雑な表現が用いられている」のは、「行為・計算の不自然さ(異常性・変則性)の程度との比較や税負担の減少目的と事業目的との主従関係等に鑑み、行為・計算の合理性を説明するに足りる程度の事業目的等が存在するかどうかという点を考慮する…考え方を採用する旨を明らかにするものと考えられよう」と述べ、「行為・計算の異常性の程度等とは切り離して考え、租税回避以外の事業目的等が『存在するか否か』のみを基準とする」考え方を否定していました11

本判決の上記判示は、ヤフー事件最高裁判決の調査官解説の上記記述を踏まえ、「事業目的等の不存在」は、法人の行為計算が不自然(異常・変則的)である場合に限って問題となる考慮事情であり、当該法人がそのような不自然な行為計算を行うことが合理的であるといえるような事業目的等が存在するかを問題とすべきであることを明らかにしたものであり、「事業目的等の不存在」という考慮事情の有無について、行為計算の不自然性の有無や程度を顧慮することなく、単純に税負担の減少目的と事業目的との主従関係を比較検討して判断してはならないことを述べたものと解されます。

3. 納税者のビジネスモデルの位置づけ等

本件においては、PGMグループが本件各合併の前から本件ビジネスモデルに基づいてグループ内で合併を繰り返していたこと及び本件各合併が本件ビジネスモデルに基づくものであったことが、本件各合併が合理的な事業目的のある組織再編成であるとの評価に繋がり、ひいては「行為計算の不自然性」及び「事業目的等の不存在」をいずれも否定することに繋がりました。

このような判示からは、裁判所が、不当性要件該当性はあくまでも否認対象とされた組織再編行為に関する諸事情を踏まえて判断すべきであり、否認対象とされた組織再編行為そのものだけでなく、当該組織再編行為が行われることとなった背景、経緯等も含めて不当性要件該当性を判断するとの立場に立っていることがうかがわれます。

また、本判決においては、地裁判決に追加して、本件未処理欠損金額の大半がPGPAH6における固定資産等の含み損に起因するものであるところ、PGPAH6のゴルフ場運営事業等と当該本件未処理欠損金額の大半を併せて原告が引き継いでいるという点も不当性要件該当性を否定する事情として挙げられています(上記Ⅳ.2.)。

もっとも、本判決が、「PGMグループにおいては、経営危機に陥るなどしたゴルフ場運営法人を買収して規模を拡大させ、多数のゴルフ場を本部で集中管理し、ゴルフ用品等を一括購入するなどしてスケールメリットを追求するとともに、買収により増え続ける子会社の数を合併により削減することにより、経営の合理化・効率化を追求するというビジネスモデル(本件ビジネスモデル)の下、事業を営んでいる。」との地裁判決の事実認定を引用したうえ、「PGMグループにおいては、本件ビジネスモデルの下、繰り返し合併を行い、子会社の数を削減することにより、経営に係る意思決定や監査の迅速化等を包む経営の合理化・効率化を継続的に追求しており、これにより大幅な費用の削減が実現されていること(…)からすると、…PGPAH6を残存させず、PGMグループ内の既存法人に吸収合併することには、合理的な理由となる事業目的が十分に存在するといえる上、何ら不自然なものではない。」との地裁判決の判断をそのまま引用していることからすれば、本判決は、具体的な合併相手はさておき、本件ビジネスモデルの一環としてのPGMグループ内の既存法人への合併であれば、「行為計算の不自然性」及び「事業目的等の不存在」が否定されると判断しており、上記事情はかかる結論を左右するものではないと考えられます。また、完全支配関係適格合併において、個々の合併での事業の継続性等の不存在を問題としないにもかかわらず、最終的に事業とそれにより生じた繰越欠損金を併せて引き継いでいるという事情を考慮することは、論理的には整合せず、上記事情は完全支配関係適格合併に関する考慮要素として一般化すべきものではなく、仮に被告の主張する法人税法57条2項の趣旨目的の理解を前提としても本件においては不当性要件該当性を肯定することができないことを念のため述べたものに過ぎないと思われます。

Ⅵ. 終わりに

本判決は、M&A取引やグループ内再編の検討の実務に重要な示唆を与えるものであり、TPR事件における裁判所の法解釈を否定している点においても重要な裁判例と考えられます。

国側は、最高裁に上告受理申立てをしており、本判決は確定しておりませんので、本件については引き続き注視が必要です12

  1. 最高裁平成28年2月29日判決民集70巻2号242頁
  2. Tax Law Newsletter 2017年10月号(Vol.27)参照
  3. 東京高裁令和元年12月11日判決金商1595号8頁
  4. 50%超100%未満のグループ内における適格合併(法人税法2条12の8ロ)(いわゆる支配関係適格合併)及び共同で事業を行うための適格合併(同号ハ)(いわゆる共同事業適格合併)を指します。
  5. 同事件では、合併の効力発生日に、100%子会社の従業員や事業用資産等(製造設備等を除きます。)が新設した別の子会社(商号、会社の目的及び役員構成が同一で、本店所在地も合併の翌日に同一地に移転)に移管されており、製造設備等も合併で承継した親会社がその別の子会社に直ちに賃貸していた、といった事情がありました(脚注2のTax Law Newsletter 2017年10月号(Vol.27)参照)。
  6. 各社の商号はいずれも変更後の商号を記載しています。
  7. 現行の法人税法においては、100%グループ内の株式譲渡は、グループ法人税制の適用により原則として譲渡損益の認識が繰り延べられます(法人税法61条の13)。しかし、上記の株式譲渡はグループ法人税制が導入される前に実行されているため、PGPAH6は株式譲渡損失を認識できたものと考えられます。
  8. 2015年3月31日時点ではPGMP4の発行済み株式の一部をPGP以外の法人が有していましたが、同年10月9日、PGMP4が当該法人の保有株式を取得の上消却したことにより、PGPはPGMP4の発行済株式の全部を保有することとなっています。
  9. 地裁判決の判示について若干の補正はされていますが、上記1.で述べた判示部分についてはそのまま維持されています。
  10. 渡辺徹也「組織再編成に係る一般的否認規定と合併による欠損金の引継ぎ」ジュリスト1544号(令和元年度重要判例解説)192頁、吉村政穂「繰越欠損金の引継ぎと組織再編成に係る行為計算否認規定の適用」税務事例研究177号1頁、泉絢也「適格合併による繰越欠損金の引継ぎを認める法人税法57条2項の『本来の趣旨及び目的』には『事業の継続』が含まれるか?―TPR事件を素材として―」千葉商大論叢57巻3号107頁、長戸貴之「組織再編税制における租税回避―個別的否認規定の観点から」租税法研究50号70頁等。
  11. 『最高裁判所判例解説民事篇(平成28年度)』(法曹会、2019)109頁(徳地淳・林史高)
  12. 国は、上告受理申立て理由書において、①本判決は、専ら、趣旨目的からの逸脱という客観的要素に関する事情のみを考慮するものであって、租税回避の意図という主観的要素に関する事情を明示的に考慮していない、②原告に引き継がれた繰越欠損金が、本件各合併時点で何らの事業用の移転資産等を保有していない休眠会社であるPGPAH6のものであったということは、法人税法132条の2の適用に当たり、同法57条2項等の趣旨に反しているかを判断する上での重要な事実であるというべきである(なぜなら、そもそもこのような休眠会社は、移転資産を保有しておらず、譲渡損益の繰延べを認める根拠となる移転資産の支配の継続すらないのであって、欠損金だけを有する休眠会社を合併することは、それ自体、経済合理性がないからである。)、③本件各合併は、PGMグループの本件ビジネスモデルとして説明できる範囲を越えており、本判決の不当性要件該当性の当てはめには著しい経験則違反がある、などと主張しています。
    また、国は、同理由書の参考資料として、法人税法132条の2の適用において主観的要素を重視する今村隆日本大学大学院法務研究科客員教授の意見書を提出しています。

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