Ⅰ. ベトナム:個人データ保護法の制定
ベトナムでは、2025年6月26日、国会において個人データ保護法(Personal Data Protection Law:「PDPL」)が可決され、2026年1月1日より施行される予定です。ベトナムにおける個人データ保護規制としては、これまでは2023年7月1日に施行された(法律より下位の)個人データ保護政令(Decree No.13/2023/ND-CP:「PDPD」)が存在していましたが、PDPLの施行により、法律の形式で初めて個人データ保護が包括的に規制されることとなります。PDPLは、基本的にはPDPDの規制内容を踏襲しているものの、新たな規制の追加や規制の明確化等が図られており、以下、両法令の主な相違点について解説します。なお、PDPLが施行された場合にPDPDの適用関係がどうなるかは必ずしも明らかではありませんが、PDPDは今後PDPLのガイドラインのような位置付けとしてPDPLを補完する内容となるよう改正されるのではないかとの推測もあるところです。PDPDの規制の概要については、本レター第151号(2023年5月号)をご参照ください。
(1)適用範囲
PDPDとPDPLのそれぞれの適用範囲は以下のとおりです。両法令の適用範囲は基本的には異ならず、ベトナムに所在しない(すなわち拠点を有さない)外国の団体・組織・個人については、ベトナム国籍者・ベトナム居住の個人識別証明書を有するベトナム系無国籍者の個人データの処理に直接関与又は関連する場合にのみ適用されることが明らかとなりました。
【適用範囲】
PDPD | PDPL |
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(a) ベトナムの団体・組織・個人 (b) ベトナムに所在する外国の団体・組織・個人 (c) 国外で活動を行うベトナムの団体・組織・個人 (d) ベトナムにおける個人データの処理に直接関与し又は関連する外国の団体・組織・個人 | (a) ベトナムの団体・組織・個人 (b) ベトナムに所在する外国の団体・組織・個人 (c) ベトナム国籍者及びベトナムに居住し、個人識別証明書を有するベトナム系無国籍者の個人データの処理に直接関与し又は関連する外国の団体・組織・個人 |
(2)個人データの定義
PDPLでは、個人データは「デジタルデータ又はその他の形態であって、特定の個人を識別する又は特定の個人の識別に寄与する情報であり、基礎個人データ及びセンシティブ個人データを含む」ものと定義されています。個人データの定義につき、PDPDでも、PDPLと同様に個人データを基礎個人データとセンシティブ個人データに区分した上で、それぞれの区分に含まれる具体的な個人データの種類が列挙されていましたが、PDPLでは各区分に該当する具体的な個人データの種類は列挙されておらず、どのような情報が各区分に属するかは別途政府が特定することとされています。これにより、今後、政府は新種の個人データの登場や機微性の変更等に応じて柔軟に各区分に属する個人データを整理することが可能となると考えられます。
また、PDPLでは、PDPDと異なり、匿名加工処理が施された後の個人データはPDPL上の「個人データ」には該当しないことも明確化されました。
(3)個人データの処理に関する同意取得の例外
PDPL・PDPL上、個人データの処理についてデータ主体から同意を取得する必要があるところ、それぞれ、データ主体の同意なく個人データを処理できる場合が規定されています。具体的には以下のとおりであり、両法令上の同意取得の例外が認められる場合は基本的には共通するものの、PDPLでは、正当な権利・利益について侵害行為から保護する場合も例外として加えられ、また、別途法令で定めることで同意取得が不要な場合をより柔軟に加えることが可能とされています。
【同意取得の例外】
PDPD | PDPL |
---|---|
(a) 緊急時にデータ主体又は他者の生命・健康を保護する必要がある場合 (b) 法令に基づき個人データを開示する場合 (c) 当局による個人データの処理であって、(i) 国防、国家安全、社会秩序・安全、大規模災害、重大な疫病等の場合、(ii) 国防・国家安全に対する脅威が存在するものの、緊急事態宣言には至っていない場合、又は(iii) 暴動、テロ、犯罪や法令違反について法令に基づき防止・排除する場合 (d) 関連する機関・組織・個人に関するデータ主体の契約上の義務を法令に基づき履行する場合 (e) 専門法に規定された国家機関の活動に使用する場合 | (a) (i) 緊急の場合において、データ主体又は他者の生命・健康・名誉・尊厳・権利及び正当な利益を保護する場合、又は(ii) 自己・他者・国家・機関・組織の正当な権利・利益を、当該利益を侵害する行為から必要な方法で保護する場合 (b) 緊急事態の解決、国家安全保障への脅威(緊急事態宣言を要するほどではない場合)、暴動やテロの防止・対策、犯罪及び法令違反の防止・対策の場合 (c) 法令の定めに従い、国家機関の活動及び国家管理活動に資する場合 (d) データ主体と関連する機関・組織・個人との契約を法令に基づき履行する場合 (e) その他、法令で定められる場合 |
(4)個人データ移転影響評価の免除
PDPL上、PDPDと同様、ベトナムの域外に個人データを移転する場合、域外移転の初日から60日以内に、個人データ移転影響評価(Data Transfer Impact Assessment)を行い、報告書を当局に提出する必要があります。もっとも、PDPDでは個人データ移転影響評価の実施・報告を免除する規定は存在しなかったのに対して、PDPLでは、以下の場合にはこれを免除することを規定しています。
- 権限を有する国家機関によるデータの域外移転の場合
- 団体・組織が従業員のデータをクラウドサービスに保存する場合
- データ主体が自身の個人データを自ら域外移転する場合
- その他政府が定める場合
PDPDにおいても、データ主体が自身の個人データを自ら域外移転する場合(例えば、ベトナム国内のデータ主体がベトナム国外のサービスプロバイダーに対して自身の個人データを直接提供する場合)に、個人データ移転影響評価の対象になるか否かの議論があったところですが、上記3.の規定により、PDPLでは、この場合には個人データ移転影響評価が不要であることが明確となりました。
(5)特定分野・範囲の個人データに関する規制
PDPLにおいては、以下の分野・範囲に属する個人データにつき、データ主体の保護・管理者等に対する規制の強化等(同意等の要件の厳格化、セキュリティ措置の整備等)が図られています。そのため、これらの分野・範囲の個人データを処理する場合には、一般的な規制に加えて、各分野・範囲特有の規制も遵守しなければならない点に留意が必要です。
- 児童、民法上の行為能力を喪失又は制限されている者、及び自己の行為を認識又は制御することに困難を有する者
- 従業員の採用、管理及び利用
- 医療及び保険業務
- 金融、銀行及び信用情報活動
- 広告サービス業務
- ソーシャルネットワーク及びオンライン通信サービス
- ビッグデータ、人工知能(AI)、ブロックチェーン、仮想空間及びクラウドコンピューティング
- 位置情報及び生体認証
- 公共の場所・公共活動における音声・映像記録
(6)違反時の制裁措置及び罰金
PDPDでは、個人データ保護規制に違反した場合の罰則等は特段定められていませんでした。これに対して、PDPLでは、同法及びその他個人データの保護に関する関連法令の規定に違反した場合、違反の性質、程度及び結果に応じて行政処分(罰金)又は刑事訴追の対象となる旨が規定されました。PDPL上の行政処分(罰金)については、以下のとおり違反内容に応じて定められています。なお、以下の罰金額は違反者が組織の場合に適用される金額であり、違反者が個人の場合には罰金額の上限は2分の1の金額となります。
違反内容 | 罰金額 |
---|---|
個人データの売買に関する違反 | 違法に得た利益の最大10倍(ただし、違法に得た利益が存在しない又は違法に得た利益の10倍が30億ベトナムドン(約1,690万円)未満である場合、最大30億ベトナムドン(約1,690万円)) |
個人データの域外移転に関する違反 | 前事業年度の売上高の最大5%(ただし、前事業年度の売上高がない場合又は前事業年度の売上高の5%が30億ベトナムドン(約1,690万円)未満である場合、最大30億ベトナムドン(約1,690万円)) |
その他の個人データ規制の違反 | 最大30億ベトナムドン(約1,690万円) |
(7)経過措置
PDPL上、小規模の企業(small enterprises)やスタートアップ企業(start-ups)は、PDPLの施行日から5年間は個人データ影響評価報告及び個人データ保護の担当部署・責任者の設置を行わなくてもよいことが規定されています。ただし、当該企業が個人データの処理サービスの提供、センシティブ個人データの直接処理、又は大量のデータ主体の個人データの処理を行う場合には、当該5年間の猶予期間が適用されないこととされている点に留意する必要があります。
(8)まとめ
PDPLは、ベトナム国内外の事業者に対し、PDPDと同様にグローバル水準の厳格な個人データ保護体制の構築を求めつつ、PDPDでは定められていなかった罰則を新たに導入するものであり、政府による規制の実効性の確保・強化の姿勢が窺われます。今後、政府によるPDPDの改正を含むガイドライン等の策定や実務動向を注視しつつ、これまでは必ずしも行われてこなかった個人データ保護規制違反の取締りの状況についても動向を見守る必要があります。
Ⅱ. インド:新登録法案の公表-デジタルで変わる不動産登録制度
2025年5月27日、インド政府は、約117年にわたり運用されてきた不動産登録制度に関するRegistration Act of 1908(「現行登録法」)の刷新を目的として、新登録法案(Draft Registration Bill, 2025:「本法案」)を公表しました。本法案は、昨今のデジタル技術の進展や社会経済環境の変化に照らし、不動産取引の透明性・効率性・信頼性を高めることを目的としています。本レターでは、現行登録法の問題点及び本法案による主要な改正ポイントについて紹介します。
1. 現行登録法の概要及び問題点
現行登録法は、インド憲法の施行前である1908年に制定され、以来1世紀以上にわたりインドにおける不動産取引や様々な財産関連書類の登録制度の礎を築いてきました。もっとも、時の経過に伴い登録文書の役割は重要性を増し、進化する社会や技術の発展に適応できる登録制度の構築が待たれていました。既に一部の州では、オンラインでの書類提出やデジタルID検証を導入する等、現行登録法下でも迅速な手続を推し進める枠組みが構築されていましたが、今般、インド政府は、統一的かつ信頼性、効率性の高い登録制度を実現するために、本法案を公表しました。
2. 本法案の主要な改正ポイント
(1)オンライン登録の導入
本法案では、書類の電子提出、電子署名、Aadhaar(インドの個人識別番号)による本人確認、電子登録証明書の発行、デジタル記録の保存が可能とされています。オンライン提出が認められることで、簡易に手続を完結させ、物理的に不動産登録所へ出向く手間が減少することが期待されています。
(2)登録義務文書の拡大
現行登録法上、一定の文書については登録が義務付けられていますが、本法案では登録文書の範囲が拡大されます。登録文書の範囲拡大により、取引の法的安定性が強化され、紛争や不正のリスクが低減することが期待されています。
(3)行政手続の透明性・救済措置の強化
手続の公正性・透明性の向上を目的として、当局による登録拒否や取消しに関する異議申立て・不服申立手続等も整備されることが予定されています。また、本法案では、管轄政府が指定した裁定機関による、虚偽や違法取引に基づく登録取消制度も設けられることが予定されています。
(4)一般市民・事業者フレンドリーな設計の確保
本法案では、法的文書の複雑さを軽減するべく、平易な言語による書類作成や標準テンプレートの提供が予定されています。また、複数書類を伴う取引においては、主たる文書のみが登録手数料の徴収対象になる等、コスト負担軽減が図られている点も主要な改正ポイントとして挙げられます。
3. 不動産実務への影響と今後の展望
不動産登録制度に関する全国一律の登録基盤が整備されることで、企業が行う不動産デューデリジェンスや取引の迅速化・コスト削減・法的安定性の向上が期待される一方、デジタル格差やサイバーセキュリティの確保、円滑な手続を実施する体制整備等の課題も指摘されています。インド政府は、2025年6月25日を期限とした意見公募手続を実施済みであり、寄せられた意見を踏まえ最終的にどのような法案が定められるのか、今後の動向に注視が必要です。
Ⅲ. タイ:住宅用建物賃貸借契約に関する告示の公布
2025年6月6日、タイ消費者保護局(Office of the Consumer Protection Board)は、「住宅用建物賃貸事業を、契約内容を規制する対象事業とする旨の契約委員会告示」(Notification of the Contract Committee Re: Prescription of Business of Renting Out Buildings for Residential Purposes as a Business Subject to Contract Control B.E. 2568 (2025):「本告示」)を公布しました。本告示は、2025年9月4日より施行されます。
本告示は、同内容に関する2019年に公布された告示の内容を一部修正するものです。具体的には、住宅用建物の賃貸借契約に関する規制のうち、従前不明確であった点を明確にするものであり、これにより、賃借人の保護の強化と建物賃貸借市場の公正性の向上が企図されています。
(1)適用範囲
本告示は、住宅用に賃貸された建物(戸建住宅、コンドミニアムの各ユニット、独立した建物内の各部屋等)(「住宅用建物」)に適用されます。なお、オンラインプラットフォームを通じた賃貸借も本告示の対象となります。
本告示の適用対象となる事業者は、同一又は異なる場所・プロジェクトにおいて、3戸以上の住宅用建物を賃貸する個人オーナーやデベロッパーを含む事業者です。なお、別途それぞれ関連法令の適用を受ける学生寮やホテルの所有者は、本告示の適用対象外となります。
(2)主な禁止条項等
本告示は、適用対象となる賃貸借契約について、以下のような条項を含めることを禁止しています。
- 正当な理由なく賃貸人の責任を免除・制限する条項
- 月単位の賃貸借の場合は3か月分、年単位の賃貸借の場合は1年分を超える前払い賃料やデポジットの徴収を認める条項
- 賃貸人による、契約期間中の賃料・サービス料の一方的な値上げを認める条項
- 賃借人に過失がない場合であっても賃貸人による前払い賃料やデポジットの没収を認める条項
- 緊急時を除き、事前通知なく賃貸人が物件に立ち入ることを認める条項
- 公共料金の実費を超える料金請求を認める条項
- 適切な契約解除の手続を経ずに、賃借人の物件への立入り禁止や、賃借人の財産の差押えや移動を認める条項
- 契約更新料の請求を認める条項(なお、更新時に賃料の前払いやデポジットを請求することは認められると考えられます)
- 賃借人の違反がないにもかかわらず、賃貸人の契約解除権を認める条項
- 通常損耗や不可抗力による損害について賃借人に責任を負わせる条項
このほか、本告示は、契約書はタイ語で作成し、2ミリメートル以上のフォントサイズで1インチ当たり11文字以内とすることといった形式面の要件も定めています。契約書はタイ語で作成しなければならない点について、現時点で例外規定は定められておらず、契約当事者に外国人が含まれる場合であっても契約書はタイ語でなければならないものと解釈されますが、今後の例外規定の制定の有無や実務上の運用を注視する必要があるように思われます。なお、タイ語版を正本として、参考英訳を添付することは認められております。
また、本告示には、標準契約書式が添付されています。標準契約書式の使用は義務ではありませんが、同書式で必須と定められている条項は全て契約書に含める必要があります。
(3)罰則
本告示に違反した場合、1年以下の禁錮若しくは10万バーツ(約458,000円)以下の罰金又はその両方が科される可能性があります。
本告示の対象となる事業者は、本告示の内容を確認し、2025年9月4日の施行までに、賃貸借契約書の見直しを行うことが推奨されます。
Ⅳ. シンガポール:取締役の注意義務違反の厳罰化
シンガポールの会社法では、「公式か非公式かを問わず、他者の指示や意思に基づき、行動する義務を負っている、又はそのような事実上の関係にある取締役」について、会社はノミニー取締役として登録しなければならないとされています。このノミニー取締役に関する制度は、実質的には意思決定を行っておらず第三者からの指示により取締役としての活動をしているような取締役がいる場合において、そうした第三者についての情報を明らかにさせ、会社の意思決定の透明性を向上させることを目的としています。
一方で、他の国の会社法と同様、シンガポール会社法でも取締役の注意義務が定められており、ノミニー取締役についても通常の取締役と同様に注意義務を負っています。取締役がこの注意義務に違反した場合、会社に対して損害賠償義務を負うのはもとより、シンガポールでは刑事罰(禁固刑・罰金)を科される可能性があります。ノミニー取締役が会社法上の注意義務に違反した場合、これまでは罰金刑のみが科されることが一般的でしたが、近時の裁判例(Public Prosecutor v. Zheng Jia [2025] SGHC 76)において、禁固刑が量刑判断の出発点とされることとなりました。日系企業のシンガポール子会社でもノミニー取締役を登録している事例もあると思われるため、以下では裁判例の概要をお知らせします。
1. 事件の概要
本件の被告人は、主に外国人顧客向けにシンガポールにおける会社設立を支援するサービスを提供していた者です。このサービスには、シンガポールの居住取締役として登録する者の提供、及び銀行口座の開設の補助も含まれていましたが、設立した会社の業務や銀行取引について一切管理・監督をしていませんでした。2020年、被告人が取締役を務めていた会社(A社)及び被告人が雇用していた従業員が取締役を務めていた会社(B社)の銀行口座を通じて詐欺の犯罪収益が送金されるという事件が発生しました。被告人は、同従業員に対しても、B社の管理・監督を行わないように指示していたため、これらの事件について①A社の取締役としての注意義務に違反したこと、②従業員によるB社の取締役としての注意義務違反を教唆したことについて起訴されました。
第一審では、過去の判例(過失による取締役の注意義務違反に対する量刑は罰金が原則であり、故意又は重大な過失による取締役の注意義務違反の場合にのみ禁固刑の適用を検討する)に基づく量刑基準に従い、8,500シンガポールドルの罰金が科されました。
2. 高裁(High Court)の決定
これに対し、高裁は、被告人が、①シンガポールの居住取締役となるノミニー取締役を提供するというサービスを提供する公認会計士であったこと、②取締役を務める会社の管理・監督を怠ったことに着目し、過去の判例の量刑基準を適用することを否定しました。その上で高裁は、以下の三段階からなる新たな量刑基準を採用し、本件のような事件については、禁固刑の適用が原則であり、被告人側が禁固刑を回避すべき特段の事情を証明しない限り、禁固刑が科されることを明確にしました。
第一段階:関連する犯罪固有の要素の特定
第二段階:適切な量刑バンドの適用
第三段階:被告人個別の事情による量刑の調整
具体的には、量刑を決定するにあたり、まずは第一段階として以下のような事項を考慮すべきとしました。
(正犯の場合)
- 取締役によるデューデリジェンスの程度
- 会社が当事者となっている取引に対する監督の程度
- 取締役が自身の注意義務違反により、第三者が会社の仕組みを濫用するおそれのあることを認識していた、又は認識し得た程度
- 違反の継続していた期間
- 違反行為が事業又は営利活動の一環であったか
- 違反行為の隠蔽の有無
- 違反行為が複数国間のものであったか
- 被害の性質及び程度
(従犯の場合)
正犯の場合に考慮されるべき上記事項のうち、従犯についても当てはまるものに加えて、以下の事項も考慮される。
- 注意義務違反の教唆、幇助の動機
- 従犯と取締役との知識・専門性の格差
- 従犯の行為が営利目的であったか
その上で、量刑判断の第二段階として、上記のうち個別の事案で該当すると判断された事項(量刑を重くする方向で考慮すべきとされた事項)の数に応じて、以下の量刑バンドに分類し、基準となる量刑を定めます。
該当事項の数 | 基準となる量刑 | |
---|---|---|
Band 1 | 1-3個 | 4か月以下の禁固刑 |
Band 2 | 4-6個 | 5-8か月の禁固刑 |
Band 3 | 7個以上 | 9-12か月の禁固刑 |
その上で、最後に量刑判断の第三段階として、①併合された犯罪、②前科、③反省の有無、④自白の有無、⑤被害弁済の有無、⑥当局への協力の有無、等を考慮して量刑の調整が行われます。
以上を考慮して、高裁は、本件の被告人に対し、A社の取締役としての注意義務に違反したことについて禁固3か月、従業員によるB社の取締役としての注意義務違反を教唆したことについて禁固7か月を言い渡しました。
3. 本件の意義
以上の裁判例からは、ノミニー取締役の義務違反に対しても厳格な刑事罰で臨むというシンガポールの裁判所の姿勢が見て取れます。以上の裁判例の事案と異なり、日系企業のシンガポール子会社の取締役は、ノミニー取締役であったとしても、一切会社の業務を管理・監督していないという事例は少ないと思われますが、注意義務違反が問題となるような事案が発生した場合には、ノミニー取締役であるということのみをもって禁固刑を免れられるわけではないことが明らかになった点は注目されます。
今月のコラム -美容大国タイの新しい美容薬?-
おいしい食事やゴルフ、寺院、リゾート等たくさんの魅力のあるタイですが、美容大国としても知られています。ジェンダーの垣根の低さ等が理由といわれていますが、実際に暮らしてみると、美容医療が日本に比べて格段に手ごろな価格で提供されている影響もあってか、男女問わず、美容医療に対する垣根が低く、美容医療に対してオープンな印象を受けます。タイでは、定期的にプロモーションが行われるので、美容予約アプリやクリニックのSNS等をチェックして、適切なバウチャーを購入することで、極めてお得に様々な美容医療やスパを受けることができます。特に、ゾロ目の日等は、盛大なプロモーションが行われることが多く、筆者も先日、7月7日のプロモーションを利用して様々なバウチャーをお得に手に入れることができました。
美容大国といわれる背景には、美容医療のほかにも、スパやマッサージの充実や、タイコスメの流行等があります。タイコスメについては、価格の安さとタイの温暖な気候の中で開発されたことによる汗をかいても崩れない等の機能性から、近年、国外からも注目を集めているようです。私自身も実際に使用していますが、手ごろな価格のうえに、35度の暑さの中でスポーツをして汗をかいても全く崩れず、その機能性には驚かされています。
さて、美容で最も重要なことは睡眠といわれますが、最後に、タイで流行中の睡眠サポートグミについて紹介させていただければと思います。
1袋4個入りで40タイバーツ(約180円)、1回あたり2粒食べる形になります。
眠りが浅いことが悩みだった私も、気になって試してみたところ、すーっと眠りに落ちていきそのまま朝まで熟睡することができました。長く張り付いていた目の下のクマも消え、すっかり愛用しております。私のお気に入りは、コラーゲン入りのラズベリー味なのですが、そのほかにもグレープやマンゴー等の味があり、効果が強いものもあります。
なお、主な成分は、霊芝エキスやカモミールパウダーといったもので、危険な成分は含まれておりません。コンビニ等で売られておりますので、タイにいらした際には、ぜひ、試してみてください。
皆さんも、美容を堪能するタイ旅はいかがでしょうか。
(田代 潤奈)