1. 人工知能戦略本部の設置・人工知能基本計画の骨子公表
2025年9月1日、政府は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律に基づいて、内閣に人工知能戦略本部を設置しました。本部長は内閣総理大臣、全閣僚が構成員となり、今後、人工知能戦略本部を中心に政府横断でAI政策を推進する施策が検討されることになります。
また、同年9月12日に開催された人工知能戦略本部の会合において、今後の政策指針となる「人工知能基本計画」の骨子が公表されています。この人工知能基本計画の骨子は、日本の目標を「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」と位置付け、次の4本柱を提示しています。
- AI利活用の加速的推進(AIを使う)
- AI開発力の戦略的強化(AIを創る)
- AIガバナンスの主導(AIの信頼性を高める)
- AI社会に向けた継続的変革(AIと協働する)
上記の4本柱に従って、具体的な取組の例として、医療、介護等、人手不足の課題を抱えている分野におけるAIの開発・実証の支援や、AIデータセンター等、AI開発力を支える利用基盤の増強確保などが示されています。今後、人工知能戦略本部や専門調査会での議論を通じて、2025年内に正式な人工知能基本計画が策定されることが予定されています。
他方で、AIを巡る法的課題は国内外で顕在化しています。例えば、2025年8月、読売新聞社は米AIスタートアップPerplexityに対し、同社の著作権を侵害したとして訴訟を提起し、また、日本経済新聞社と朝日新聞社も同社に対して、差止めや削除、損害賠償を求める訴訟を提起しています。生成AIによるコンテンツ利用の在り方が司法判断の対象となる大型訴訟であり、今後の権利保護・AI規制の方向性に大きな影響を及ぼすと見込まれます。
今後も企業においては、人工知能戦略本部から公表される予定の人工知能基本計画など、政府のAI関連政策の動向や、民間におけるAIを巡る利害関係者の動向を一層注視する必要があります。
2. 公正取引委員会:スマホ競争促進法に関する指針等の策定
公正取引委員会は、2025年7月29日、スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(スマホ競争促進法)に関する政令、規則、ガイドラインを公表しました。これは、同年5月15日から6月13日まで募集していたパブリックコメントを踏まえたものです。全面施行の日は、2025年12月18日となります。
この法律に基づき規制対象となる指定事業者は、2025年3月31日、政令で定められた基準に基づき、Apple Inc.、iTunes株式会社、Google LLCの3社です。ガイドラインで定められている事項は多岐にわたるため、以下では、例として、アプリストアに関する制限について抜粋して紹介します。
スマホ競争促進法7条1号は、指定事業者が、他の事業者がアプリストアを提供することを妨げる行為を禁止しています。ガイドラインでは、ここにいう「妨げる行為」について、代替アプリストアの提供又は利用を実質的に困難にさせる蓋然性の高い行為も含むとしています。例えば、代替アプリストアの提供が困難になる蓋然性の高い手数料の徴収等が想定例として挙げられています。
また、この行為は、サイバーセキュリティの確保、利用者情報の保護、青少年の保護その他政令で定める目的のために必要であり、他の行為によってその目的を達成することが困難な場合は正当化事由があるものとして認められます。ここにいう政令で定める行為は、スマートフォンの動作の著しい遅延その他のスマートフォンの異常な動作の防止と、スマートフォンを利用して行われる賭博その他の犯罪行為の防止の2つが規定されています。
また、この正当化事由については、上記の目的と、競争の促進という2つの要請のバランスに配慮しながら的確な判断が必要とされています。ガイドラインでは、例えば、正当化事由が認められる想定例として、指定事業者が、代替アプリストアに対して、サイバーセキュリティの確保等の観点から必要な基準に照らした審査等を行い、当該アプリストアが当該基準を満たしていない場合に代替アプリストアの提供を禁止することなどが挙げられています。
3. こども家庭庁:インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ 課題と論点の整理
こども家庭庁は2025年8月7日、「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ」の課題と論点の整理を取りまとめました(本体、および概要)。スマートフォンや生成AIの普及により青少年のネット利用が低年齢層にも広がる一方、違法・有害情報、闇バイト、誹謗中傷、AIによるディープフェイクなど多様なリスクが顕在化している状況を踏まえ、検討の基本的方向性、および政府において取り組むべき課題と論点が示されています。
海外では、SNS利用の年齢制限が実施・検討されている国もありますが、本整理においては、法律によって特定の年齢や発達段階にある者の利用コンテンツや利用時間を一律に制限するよりも、年齢と発達段階にふさわしいコンテンツやサービスが提供される環境を確保するため、年齢確認や青少年自身のリテラシー底上げ等の多面的かつ総合的な対応を講ずることが基本的方向性とされたことが注目されます。
主な課題としては、①青少年インターネット環境整備法のアップデート、②民間企業等による自主的な取組の促進、③アダルト広告等の青少年有害情報(コンテンツ・リスク)への対応、④闇バイト、いじめ、セクスティング等(コンダクト/コンタクト・リスク)への対応、⑤消費者関連リスクへの対応、⑥生成AIやVR等の先進的技術による横断的リスクへの対応、⑦低年齢化、長期間利用、心身への影響、アルゴリズムによる横断的リスクへの対応、⑧広報・啓発活動が挙げられています。
今後はこども家庭庁が中心となり各府省庁が連携して、短期での対応が可能なものと、中長期での検討が必要となるものに分けて対応を進め、後者については2026年を目途に法的対応を含めた具体的な取組内容を取りまとめ、さらに2027年に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第7次)」に反映することとされています。