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Environmental Law Newsletter

グリーンウォッシュをめぐる近時の各国の規制動向-シンガポール・韓国・オーストラリア-

Ⅰ. はじめに

環境問題に対する意識は国際的な高まりを見せており、諸外国において、脱炭素化に向けた法整備が進められています。もっとも、そのような状況を逆手に取り、あたかも環境に配慮したものであるかのような主張、表現を行うことで、環境意識の高い消費者の購買意欲を刺激する、いわゆるグリーンウォッシュの問題が提起されてきました。この問題に関して、当事務所は、以前のニュースレター(グリーンウォッシュをめぐる日本及びEUの近時の規制動向Recent Regulatory Trends in Japan Concerning Greenwashing)にて、グリーンウォッシュに関する日本及びEUの規制動向をご紹介していました1

昨今、アジア環太平洋地域においても、グリーンウォッシュに関する規制が相次いで整備されています。直近では、2025年10月に、シンガポールにおいて、競争消費者委員会(Competition and Consumer Commission of Singapore)(以下では「CCS」といいます。)がグリーンウォッシュの問題に関連したガイドラインを公表しました。

本ニュースレターでは、アジア環太平洋地域における先進諸国のうち、シンガポール・韓国・オーストラリアに焦点を当て、グリーンウォッシュに関する各国の規制動向の概要をご紹介します。

Ⅱ. シンガポールの規制動向

シンガポールは、2021年2月、包括的な環境政策であるSingapore Green Plan 2030(Singapore Green Plan 2030)を公表し、電気自動車の積極的な導入や、都市地区への植樹の推進等、様々な取組みを実施しています。

そのような背景のもと、CCSは、2025年10月6日、事業者に明確かつ真正な品質関連表示(Quality-related Claims)を行わせるためのガイドライン(CCS Guide on Quality-Related Claims.pdf)を公表しました2(以下では「CCSガイドライン」といいます。)。これは、グリーンウォッシュに対する懸念を踏まえて策定されたものであり、公表に際して、CCS長官であるAlvin Koh氏は、透明性のある表示が、消費者の適切な判断を下支えし、品質本位の競争を促進することにつながる(“Greater transparency ultimately enables consumers to make informed decisions and promote competition on merit.”) と述べ、消費者による適切な取捨選択を通じた品質本位の競争力確保という制度趣旨が端的に示されています3

CCSガイドラインは、以下の4項目に加え、具体例が示された別紙(Annex)が添付される形で構成されています。

 

  1. 対象(Scope)
  2. 消費者保護法の下での不公正取引への対処(Unfair Trade Practices under the CPFTA)
  3. 各原則(Guiding Principles)
  4. 結語(Conclusion)

1. CCSガイドラインの対象

CCSガイドラインは、冒頭で、ある製品が市場に流通する際に、製品それ自体やパッケージを通じて、当該製品の品質関連表示も併せて流布されるという市場の状況を確認し、そのうえで、CCSガイドラインが、このような品質関連表示のうち、シンガポール内の消費者取引に関与するサプライヤーが行う品質関連表示を対象とするものであることを定めています(CCSガイドライン1.1~1.3)。

そして、品質関連表示に関する大原則として、品質関連表示は、信頼できる証拠によって裏付けられた真正なものでなければならないこと、サプライヤーは、消費者が十分な情報の下で自己決定できるよう、品質関連表示に関する明確で、正確かつ十分な情報を提供すべきであることが示されています(CCSガイドライン1.5)。

2. 消費者保護法の下での不公正取引への対処

次に、グリーンウォッシュを含む不公正取引に対するシンガポールの法規制に関する言及があります。

シンガポールでは、消費者保護法4(Consumer Protection (Fair Trading) Act 2003)(以下では「CPFTA」といいます。)が整備されているところ、グリーンウォッシュのような、消費者取引における誤導・虚偽のおそれがある品質関連表示の使用は、CPFTAにいう不公正取引(Unfair practice)に該当し得ること(CPFTA4条)、そのような不公正取引に対しては、CCSが法律によって与えられた権限に基づく調査を行い、必要に応じて適切な措置を講ずること(CPFTA Part 3A)が指摘されています(CCSガイドライン2.2)。

また、CCSの調査の際には、サプライヤーが情報の正確性を検証するために努力を尽くしたか等が考慮され、サプライヤーの事業規模や利用可能なリソースの範囲も踏まえて、対応の要否が決せられるとされており(CCSガイドライン2.3)、サプライヤーは、合理的な努力を尽くして情報の正確性を検証したと説明できるような記録を保存しておく必要があります。

このほか、消費者に対する救済として、不実な品質関連表示等の不公正取引に巻き込まれた消費者が、消費者団体(Consumers Association of Singapore)や広告協会(Advertising Standards Authority of Singapore)といった機関に救済を求めることができる点についても言及されています(CCSガイドライン2.1)。

3. 各原則

CCSガイドラインは、以下の5原則を定めており、かつ、それぞれに下位原則が複数規定されています。

 

  1. 表示が真正かつ正確であること(Claims should be true and accurate)
  2. 表示が明確かつ理解しやすいこと(Claims should be clear and easily understood)
  3. 表示が意味のあるものであること(Claims should be meaningful)
  4. 表示には重要な情報を添えること(Claims should be accompanied by material information)
  5. 表示が証拠によって裏付けられていること(Claims should be supportable by evidence)

 

(1)原則1:表示が真正かつ正確であること
原則1によれば、品質関連表示は、真正かつ正確でなければならず、消費者を誤導しないものでなければなりません。この原則につき、CCSガイドラインでは、以下のような下位原則が示されています。

 

  • 特定の基準を満たしていることや、特定機関の認証を受けていること等を表示する際には、当該表示が真正で正確かつ最新のものであることを確認しなければならない。また、それらの認証の趣旨や範囲を誤って記載しないよう留意しなければならない(CCSガイドライン3.5)。
  • 表示全体が消費者に与える印象に配慮する必要があり、品質、効能等を誇張してはならない(CCSガイドライン3.7)。
  • 品質関連表示が市場に流布される前に、その情報が真実かつ正確であることを確かめるための合理的な検討段階を経なければならない。一般情報や第三者の情報については、それが当該製品に適用できる真正かつ正確な情報であることを合理的な検証を経て確認しない限り、品質関連表示に含めてはならない(CCSガイドライン3.8)。
  • 表示が常に真正かつ正確であることを確保すべく、定期的な見直しを行うべきである(CCSガイドライン3.9)。

 

(2)原則2:表示が明確かつ理解しやすいこと
原則2によれば、品質関連表示は、明確かつ理解しやすいものでなければならないとされています。この原則につき、CCSガイドラインでは、以下のような下位原則が示されています。

 

  • 曖昧かつ広範な表示をすると、製品の実際の品質、効能等に関して一般消費者の誤解を招くおそれがある(CCSガイドライン3.10)。
  • 表示の明確性、容易性は、一般消費者の通常の理解の仕方を規準として判定すべきであり、一般消費者が想定するものとは異なる意味で用語や画像を用いてはならない(CCSガイドライン3.11)。
  • 自己宣言ラベル(self-declared label)(独立した第三者からの認証を受けたものではなく、サプライヤー自らが作成したラベル)を用いる際には、独立した第三者からの認証を受けたかのように消費者を誤認させないようにしなければならず、このようなラベルが自社の内部基準に基づく表示であることを明示することが望ましい(CCSガイドライン3.12)。
  • 一般消費者にとって理解し難い表現を用いることは誤導表現に該当し得るため、専門用語を用いる場合には、一般消費者にも理解できる平易で日常的な用語による説明が付されなければならない。また、自社の製品が優良であると誤認させるような専門用語を生み出してはならない(CCSガイドライン3.13)。

 

(3)原則3:表示が意味のあるものであること
原則3によれば、品質関連表示は、消費者にとって意味があり、有益である必要があります。この原則につき、CCSガイドラインでは、以下のような下位原則が示されています。

 

  • 製品が備えるべき必須の要件や、重要でない属性を強調するだけでは、意味がある表示とは言えない。他方、製品の特性のうち、重要かつ非標準的で、必須でない特性に関する表示であれば、意味ある表示であって、不公正取引と評価される可能性は低い。また、求められる水準を上回る取組みを自主的に行っている場合には、その旨を表示に含めることが望ましい(CCSガイドライン3.14)。
  • 他社製品と比較して自社の製品の属性や効能を強調する場合には、説明を求められた際に、比較対象とした製品を特定し、当該製品と自社製品を同じ条件の下で比較したことを説明できるようにしておく必要がある(CCSガイドライン3.15)。

 

(4)原則4:表示には重要な情報を添えること
原則4によれば、消費者が十分な情報に基づいた判断ができるよう、品質関連表示には、必要十分な情報を添える必要があります。この原則につき、CCSガイドラインでは、以下のような下位原則が示されています。

 

  • 消費者が十分な情報の下で自己決定ができるよう、消費者に対し、品質関連表示と併せて十分な重要情報を与えなければならず、それらの情報は、迅速かつ目立つように、あるいは、容易にアクセスできる方法で付与されることが望ましい(CCSガイドライン3.16)。
  • 表示された内容がある特定条件の下で妥当するものの場合には、そのような制限がある旨を明確に示さなければならない。品質関連表示が前提とする条件が、一般消費者が通常想定する条件と異なる場合には、当該前提条件に関する情報が与えられなければならない(CCSガイドライン3.17)。
  • 製品に関して特定機関の認証を受けていることを表示する場合、消費者が認証機関や認証基準に関する情報にアクセスするための情報を提供すべきである。そのような認証を受ける場合、国際的に認められた手法が採用されているなど、透明かつ明確な基準が採用された第三者機関の認証制度を活用することが望ましい(CCSガイドライン3.18)。
  • 品質関連表示に関する条件や根拠といった情報は、品質関連表示と併せて明確かつ目立つように表示される必要があるが、場所的な制約がある場合には、URLやQRコードを併記し、それらを通じて情報提供することでもよい。小さく目立たないような文字で重要事実隠蔽したりすると、不公正取引に該当する(CCSガイドライン3.20)。

 

(5)原則5:表示が証拠によって裏付けられていること
原則5によれば、表示内容が有効かつ信頼できる証拠によって合理的に裏付けられたものである必要があります。この原則につき、CCSガイドラインでは、以下のような下位原則が示されています。

 

  • 最新の有効かつ信頼できる証拠によって表示内容を合理的に裏付けることができるか、評価しなければならない。ここにいう合理性の有無は、以下のような要素を考慮して判断される(CCSガイドライン3.21)。

    -サプライヤーの事業規模
    -サプライチェーンにおける立場
    -他のサプライヤーから提示された表示内容
    -利用可能なリソース
  • 有効かつ信頼できる証拠とは、表示された効能や属性に関連した証拠であって、試験データや、専門家による検証を経た研究資料等が含まれる。関連する科学領域で一般に受け入れられていないような試験データや研究に依拠してはならない(CCSガイドライン3.22)。
  • 将来的な抱負や目標を記載する場合には、それらを達成する意図とそのために行う取組みを、証拠と共に示す必要がある。これに関する計算、予測を行う場合、国際的に認められた評価、会計の方法を用いなければならず、かつ、定期的な見直しが必要である(CCSガイドライン3.24)。

4. 結語及び別紙(Annex)

CCSガイドラインは、末尾において、CCSガイドラインが品質関連表示に関する包括的な指針であることを改めて確認したうえで、これがCCSの権限を制約するものではないことを留保しています(CCSガイドライン4.1、4.2)。また、CCSガイドラインとは別に、サプライヤーが参照できるものとして、シンガポールの広告業界の自主規制団体である広告協会が公表しているシンガポール広告実務規則(Singapore Code of Advertising Practice)があることにも触れられています(CCSガイドライン4.3)。

そして、前記3.で示された各原則につき、別紙(Annex)において、下位原則に対応する具体例が掲載されています。

例えば、サプライヤーが、ある製品が一定の業界基準を満たしている旨を表示しているものの、実際には、当該基準は製品全体ではなく、製品の一部品にのみ適用されるといった設例に関し、当該表示が誤導表現であって不公正取引に該当する可能性があること、サプライヤーは特定部品のみが当該基準を満たすものであることを正確に表示すべきであって、製品全体が当該基準を満たすかのような表示をしてはならないことといった考え方が示されています(Example 3.5(1))。

このように、実務的には、別紙に記載の具体例や考え方が、各原則の趣旨、適用範囲を模索するうえで、有益な手がかりとなるものであり、参照価値が高いものであると言えます。

Ⅲ. 韓国の規制動向

韓国でも、かなり厳しくグリーンウォッシュが規制されています。

韓国では、気候エネルギー環境省5(Ministry of Climate, Energy and Environment)と公正取引委員会(Korean Fair Trade Commission)がグリーンウォッシュに関する問題を所管し、環境技術産業支援法6(Environmental Technology and Industry Support Act)(以下では「ETISA」といいます。)と公正表示広告法7(Act on Fair Labeling and Advertising)(以下では「AFLA」といいます。)に基づく規制が設けられています。

ETISAは、製造業者が環境表示に関して消費者を欺いたり、誤導したりするおそれのある虚偽又は誇張の表現・広告や誹謗中傷的な表現・広告を用いることを禁止しており、環境大臣は、市場に流通する製品の表示・広告がこの規定に反しないか調査することができるとされています(ETISA 16-10条)。また、AFLAは、表示・広告一般を対象に、上記のような消費者を欺くおそれのある虚偽や誇張の表現・広告等を禁止しています(AFLA 3条)。

そして、これらのハードな規制に加えて、韓国においても、ソフトローが重要な役割を担っています。例えば、公正取引委員会が公表したEnvironmental Labeling and Advertising Review Guidelineによれば(Labeling and Advertising - Fair Trade Commission)、製品やサービスに伴う環境に関する表現・広告を対象に、真実性(Truthfulness)、明確性(Clarity)、重要性(Significance)、検証可能性(Verifiability)、製品サイクル全体への配慮(Entire Process)、特定性(Specificity)、完全性(Completeness)の7個の大原則が示され、更に、具体例を用いた解説やセルフチェックリストが付記されています。

韓国では、大手企業がグリーンウォッシュの問題を指摘され、広く報道されるなど、社会的な関心も高まっています。例えば、韓国最大の鉄鋼メーカーであるPOSCOは、“INNOVILT”という建材の自社ブランドを設け、INNOVILTに認定された建材があたかも環境にやさしい(eco-friendly)ものかのように謳っていましたが、実際には、INNOVILTに認定されるかどうかの判断基準において、環境への配慮や持続可能性といった観点は、マイナーな考慮要素にとどまっていました。そこで、公正取引委員会は、これが虚偽又は誇張の広告に当たるとして、2025年4月、POSCOに対して是正命令を出しました8。また、「エコレザー」と広告された製品が、実際には環境に配慮された製品ではなかったとして、公正取引委員会が、2025年5月、韓国の人気アパレルブランドであるMusinsa Standard等を運営する大手ファッション会社4社に対して警告処分を行うなど9、規制の執行事例が相次いでおり、グリーンウォッシュに対する同国の近時の問題意識の高さがうかがえます。

Ⅳ. オーストラリアの規制動向

オーストラリアにおける公正取引や製品安全は、競争消費者委員会(Australian Competition & Consumer Commission)が所管しており、競争消費者委員会は、オーストラリア消費者法(Australian Consumer Law)10(以下では「ACL」といいます。)の執行を主たる責務としています。ACLは、製品やサービスに関して虚偽又は誤導表示を行うことを禁止しています(ACL29条以下)。そして、競争消費者委員会は、2023年12月、この点に関するガイドラインを公表しました11Making environmental claims - A guide for business | December 2023)。ここでは、具体例と併せて以下の8原則が示されており、オーストラリアで事業活動を行う企業にとっては、参照価値の高いものとなっています。

 

  1. 正確かつ信頼できる環境主張を行うこと(Make accurate and truthful claims)
  2. 環境主張を支える十分な根拠を確保すること(Have evidence to back up your claims)
  3. 重要な情報を隠したり省略したりしないこと(Do not hide or omit important information)
  4. 環境主張に関する条件や制限を説明すること(Explain any conditions or qualifications on your claims)
  5. 広範・無制限な環境主張を避けること(Avoid broad and unqualified claims)
  6. 明確かつ分かりやすい表現を用いること(Use clear and easy to understand language)
  7. 視覚情報が誤った印象を与えないようにすること(Visual elements should not give the wrong impression)
  8. 持続可能な事業モデルへの移行状況を率直に公表すること(Be direct and open about your environmental sustainability transition)

 

最近のオーストラリアにおけるグリーンウォッシュに関する事例として、一般消費財の大手メーカーである Clorox Australia Pty Ltdに対する2025年4月の罰金支払命令があります。この事件の中で、同社が2021年から2023年にかけて、「50%海洋プラスチックリサイクル」(“50% Ocean Plastic Recycled”)と表示したごみ袋等を販売し、リサイクルされた海洋プラスチックが原料として利用されているかのように表示していたところ、実際には、海洋プラスチックではなく、インドネシア内陸のあるコミュニティから回収されたプラスチックが原料として利用されていたことが判明しました。オーストラリア連邦裁判所は、これがACLに違反するものと認定し、同社に対し、800万ドルを超える罰金の支払いを命じました12

Ⅴ. おわりに

アジア環太平洋地域においても、グリーンウォッシュに対する懸念から、法整備が進んでおり、執行事例も集積しています。また、日本でも、環境省に設置された環境表示のあり方に関する検討会において、現在、環境表示ガイドラインの改訂に向けた検討が進められています(環境表示のあり方に関する検討会 | 環境省)。

このように、グリーンウォッシュに対する問題意識は、国際的な課題として位置付けられることが予想され、各国の動向を含め、グリーンウォッシュに対する規制状況には、注意を払っておくべきと考えられます。

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