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Asian Legal Insights

Asian Legal Insights 第181号(⁠2025年11月号外)
【今月のトピック】ミ⁠ャンマ⁠ー

ミャンマー:倒産法の運用開始~倒産実務家登録証の発行により会社清算手続が可能に

ミャンマーにおける会社清算手続について定める倒産法については、2020年2月の制定以降、その動向に関して本レターで逐次お伝えしてきており、直近では、本レター第178号(2025年8月号)において、倒産実務家(Insolvency Practitioner)の登録申請の受付が2025年7月に開始した旨をお伝えしておりました。倒産法の運用開始に向けては、倒産実務家の登録のみが最後のステップとして残っておりましたが、今般、2025年10月30日付で、合計20名の弁護士及び会計士が倒産実務家としての登録を完了し、登録証の発行を受けました。これにより、倒産法に基づく会社清算手続が法律上有効な形で開始できる基盤がようやく整備されたことになります。

倒産法では、会社清算手続等の開始に際して選任が法律上必須とされている清算人(liquidator)には、倒産実務家として倒産実務家監督評議会(Insolvency Practitioners’ Regulatory Council)の登録を受けた者のみが就任可能とする枠組みが導入されました。しかし、2020年3月25日の施行後も、5年以上にわたって倒産実務家の登録は行われず、法律的に有効な会社清算手続が開始できない状態が続いていました。2020年以降、コロナ禍や政変の影響で現地事業からの撤退を検討した日系企業は相当な数に上りますが、上記のような状態が続いていたこともあり、株式譲渡による撤退の方法を採るか、倒産実務家の登録が完了するまで会社清算手続の開始を待つといった対応を採った会社が多くありました。他方で、投資企業管理局(Directorate Investment and Company Administration:「DICA」)では、倒産実務家として登録を受けていない者が清算人に就任するような会社清算手続を受理してきた実態もありました。そのような形で行われた会社清算手続の法的有効性には疑義が残るものの、倒産実務家の登録がいつ完了するのか全く見通せない状況の中で、倒産実務家以外の者による会社清算手続を進めてきた会社も一定数存在します。

倒産法施行から5年を経て、倒産実務家の登録がようやく完了しました。今後は、倒産実務家として登録を受けた者を清算人に選任することにより、有効性に疑義のない形で会社清算手続を開始することができます。ただ、倒産法の実質的な実務運用はこれから開始することになりますので、DICAを含む当局がスムーズに対応できるのかという懸念は残ります。また、ミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commission:「MIC」)を含む投資関係当局は、外資企業がミャンマーから撤退することについて敏感になっているとの情報があります。そのため、MICによる投資許可を受けている場合等、会社清算に際して必要な当局の事前承認の取得に時間が掛かる可能性があります。さらに、会社清算に向けた残務処理や財産処分が完了した後、残余財産を日本やシンガポール等の本国に送金するためには、2025年11月現在、ミャンマー中央銀行(Central Bank of Myanmar)傘下の外国為替監督委員会(Foreign Exchange Supervisory Committee)の承認を得なければならず、資金回収を含む撤退完了までにどれくらいの時間が掛かるか、明確な見通しが立てにくい状態にあります。

上記で指摘した以外にも会社清算に関連する論点は多く残っておりますが、会社清算を開始するために必要なインフラが整備されたことは大きな進展であると評価できます。弊事務所では、シニア・リーガルアドバイザーであるKhin Cho Kyi弁護士が倒産実務家の登録を受けており、会社清算についてサポートできる体制を整えておりますので、是非ご相談を頂ければと存じます。

(ご参考)
本レター第178号(2025年8月号)

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