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Strategic Intelligence Newsletter

インドネシアの中間層 ― 拡大する支出レンジと、見えない実像

Ⅰ. はじめに

インドネシアの人口は約2億8,000万人に達しています1。また、2024年の一人当たり国民総所得(GNI)は4,910ドルを超えており2、同国は上位中所得国に分類されています3

こうした背景のもと、インドネシアの内需市場は、日本企業を含むさまざまな業種のグローバル企業の関心を集めています。その中心にあるのが、「中間層」という概念です。もっとも、中間層に該当する消費者の実像は、必ずしも明確ではありません。

Ⅱ. 中間層の支出レンジ

インドネシアにおける中間層は、世界銀行の基準に基づいて定義されています。世界銀行は、各国の貧困ラインに対する一定の倍率に基づき、1人当たり月間支出額(所得ではなく支出ベース)を用いて経済階層を分類しています4
 

分類貧困ライン
(倍率)
1人当たり月間支出額
インドネシアルピア日本円5
貧困層< 1< 641,443< 約6,000
脆弱層1 – 1.5641,443 – 962,165約6,000 – 9,000
中間層予備軍1.5 – 3.5962,165 – 2,245,051約9,000 – 21,000
中間層3.5 – 172,245,051 – 10,904,531約21,000 – 101,000
富裕層> 17> 10,904,531> 約101,000

表1. インドネシアの経済階層分類(2025年)
 

2025年時点のインドネシアの中間層の支出レンジは、1人当たり月間約220万ルピアから1,090万ルピアに及びます。日本円に換算すると、約2万円から10万円程度であり、相応に幅広い支出水準を含んでいることが分かります。

Ⅲ. ジャカルタ―「1,000万人規模の中間層都市」

インドネシアの首都ジャカルタの人口は約1,000万~1,100万人であり6、東南アジアでも有数の大規模都市市場です。

インドネシア中央統計局によると、2025年のジャカルタにおける1人当たり月間支出額は約296万ルピアであり、上記の中間層の支出レンジ内に位置しています。したがって、ジャカルタでは中間層レベルの消費市場が、1,000万人規模で広がっているともいえます。

Ⅳ. 拡大する支出レンジと実像とのギャップ

過去10年にわたり、インドネシアにおける中間層の支出額レンジは大きく拡大してきました(図1)。
 

図 1. インドネシアの中間層支出レンジ(2015年~2025年)

図1. インドネシアの中間層支出レンジ(2015年~2025年)
 

インフレ等により貧困ラインが上昇すると、それに連動して各階層の閾値も引き上げられます。その結果、図1のとおり、中間層の支出額は年々上方にシフトし、かつその幅も拡大してきました。一見すると、消費水準の向上を示しているようにも見えます。

しかし、このレンジは、人々がその中のどこに分布しているかを示すものではありません。中間層は、この広いレンジの中に均等に分布しているのでしょうか。

便宜的に、中間層を以下の3つに区分して考えてみます。:
 

  • 中間層(低):220万〜510万ルピア 
  • 中間層(中):510万〜800万ルピア 
  • 中間層(高):800万〜1,090万ルピア 
     

仮に中間層の大半が上記の「中」レンジに集中している場合、510万〜800万ルピア程度を支出する「平均的な」中間層を想定した商品やサービスは、十分に需要が見込まれます。これに対し、その水準に想定されるほど消費者が存在しない場合には、「平均的な」中間層を前提とした販売戦略は、期待した成果を得にくい可能性があります。

Ⅴ. おわりに

インドネシアの中間層は、ひと括りの集団として語られることが多いものの、実際には幅広い支出レンジを持つ層です。

内需を適切に捉えるためには、単に中間層の定義を把握するだけでなく、その内部における分布まで視野に入れて理解することが重要と考えられます。そうでない場合、市場の捉え方と実際の市場構造との間にズレが生じるおそれがあります。他方で、適切に照準を定めることで、有望な事業機会をより着実に捉えることができるでしょう。

インドネシアの中間層の分布構造及び市場戦略について、より詳細な分析をご希望の場合は、お気軽にお問い合わせください。

  1. Badan Pusat Statistik (BPS – Statistics Indonesia), Penduduk, Laju Pertumbuhan Penduduk, Distribusi Persentase Penduduk, Kepadatan Penduduk, Rasio Jenis Kelamin Penduduk Menurut Provinsi, 2026
  2. World Bank, GNI Per Capita Ranking, Atlas Method and PPP Based, December 2025(https://datacatalog.worldbank.org/
  3. “Upper-middle-income country” is defined by the World Bank as a country with Gross National Income (GNI) between USD 4,496 to USD 13,935 (World Bank, World Bank country classifications by income level for 2024-2025, July 2024 (https://blogs.worldbank.org/))
  4. World Bank, Aspiring Indonesia: Expanding the Middle Class, September 2019
  5. 為替レートは2026年時点の水準に基づく概算(約1ルピア=0.0093円)
  6. Badan Pusat Statistik (BPS – Statistics Indonesia), Penduduk, Laju Pertumbuhan Penduduk, Distribusi Persentase Penduduk, Kepadatan Penduduk, Rasio Jenis Kelamin Penduduk Menurut Provinsi, 2026

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