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Space Law Newsletter

宇宙活動法等の改正案の概要と実務への影響

Ⅰ. 背景と概要

近年、日本の宇宙開発利用は、新規参入事業者の急増や技術革新の進展等により急速に多様化しています。ロケットの打上げを取り巻く環境も大きく変化し、開発競争が激化する中で、様々な形態でのロケットの打上げが出現しつつあります。こうした変化を背景として、打上げ価格の低廉化等の状況が生じており、大学や民間企業が打ち上げる記念的モニュメントや、位置・姿勢・状態の制御機能を有しない研究用の人工物体が地球周回軌道又はその外に投入されるなど、打ち上げられる物体の多様化が進んでいます。

現行の「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」(平成28年法律76号。以下「宇宙活動法」といいます。)は、軌道上で制御される人工衛星の軌道投入を中心に規制する体系となっており、許可制度も人工衛星の搭載・分離を前提としています。そのため、ダミーペイロードを搭載した開発段階の試験打上げ、制御不能な物体の打上げ、新たな輸送コンセプト等の新興活動が規制の対象外となるなど、現行法では対応しきれない課題が生じています。

このような、最近における宇宙の開発及び利用をめぐる状況に鑑み、公共の安全を確保しつつ、人工衛星の打上げ等に関する多様な需要に対応するため、人工衛星等の打上げに係る許可制度を拡充し、人工衛星の搭載又は分離を伴わないものを含め宇宙ロケットの打上げを許可の対象とするとともに、ロケット落下等損害の賠償に関する制度の対象となる者として人工衛星の打上げ用ロケット以外の宇宙ロケットの打上げを行う者を追加する等の措置を講ずるものとして、今年3月27日、「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」といいます。)が閣議決定され、第221回特別国会に提出されました。

本改正案は、宇宙活動法に加えて、宇宙基本法(平成20年法律43号)、内閣府設置法(平成11年法律89号)及び宇宙資源法(「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」(令和3年法律83号。以下「宇宙資源法」といいます。))の改正を含む、打上げに関する総合的な法整備であり、人工衛星の軌道投入を中心とする規制体系から、ロケットの打上げに着眼した規制体系への抜本的な転換を図るものです1

本ニュースレターでは、本改正案の主たる内容である宇宙活動法の改正案の主な内容や(Ⅱ.)、その他の改正案や施行スケジュール等について紹介した上で(Ⅲ.)、ステークホルダーへの影響(Ⅳ.)について概説します。

図表1:本改正案の概要

項目概要
(1)宇宙活動法の改正人工衛星の軌道投入を中心とする規制体系から、ロケットの打上げに着眼した規制体系に変更。多様な打上げ形態に対応するための制度的基盤を整備。
(2)宇宙基本法の改正宇宙開発利用に係るロケットの開発等に必要な機器・技術等の研究開発の推進を基本的施策に追加し、「公共の安全の確保」を明記。
(3)内閣府設置法の改正宇宙政策委員会の調査審議の対象を拡充し、新たな打上げ形態における安全確保や宇宙環境の保全に関する重要事項を対象に位置付ける。
(4)宇宙資源法の改正宇宙活動法の規定に基づく人工衛星の管理に係る許可の特例として、宇宙活動法の改正に伴う所要の改正。

Ⅱ. 宇宙活動法の改正案の主な内容

本改正案のうち、宇宙活動法の改正案の主な内容は、以下のとおりです。なお、以下で、条文番号のみ掲げているものは、宇宙活動法の改正案が成立した場合の改正後の条文番号を指します。

1. 宇宙活動法の名称の変更

宇宙活動法の法律名が、現行の「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」から「宇宙ロケットの打上げ及び特定人工衛星の管理に関する法律」に改められます。軌道上で制御される人工衛星に対する規制中心から、後述のとおり、それに限られない物体の打上げに対する規制を中心とする体系への転換が示されます。

2. 人工衛星中心の規制から打上げに対する規制体系への移行

(1)現行法と規制体系の転換の方向性
現行の宇宙活動法は、日本の領域等からの人工衛星等の打上げ(人工衛星の打上げ用ロケットからの軌道上での人工衛星の分離を含みます。)を許可制とした上で(現行法第2章)、日本の領域等に所在する人工衛星管理設備を用いて、地球を回る軌道等で運用される当該人工衛星を管理する行為も許可制とすることで(現行法第3章)、人工衛星の打ち上げ及び管理を一連の流れとして規制しています。他方、近年では、人工衛星の打上げ用ロケットの開発・実証段階において、(a)人工衛星もダミーペイロード2も搭載していないロケット単体や、(b)ダミーペイロードのみを搭載したロケットの打上げのほか、(c)地球を回る軌道等に投入される人工の物体でも、モニュメントや遺骨等を納めた小型容器、反射材の特性を実験するために使用する人工の物体等の、人工衛星管理設備を用いた「管理」の対象とならない人工の物体も、地球を回る軌道等に投入されています。

このような動向を受け、①搭載物の有無及び種類を問わず、ロケットの打上げ自体を許可制による規制対象とし、人工衛星に着眼した規制体系から、ロケットに着眼した規制体系へ転換することが志向されました。その上で、②現行の宇宙活動法の人工衛星の定義に該当しない、地球を回る軌道等で使用しない人工の物体の打上げも正面から法令で想定し、これらの物体も新たに規制対象に含めることとされました。

(2)改正法案における「人工衛星等」の整理
宇宙活動法の改正案では、すでに管理が規制されている人工衛星を「特定人工衛星」という名称に改めた上で(下記(a))、軌道上等で「使用」されない人工の物体を含む「人工衛星等」という定義を創設し、規制対象としました(下記(c))。併せて、規制対象となるロケットの定義も「宇宙ロケット」という名称に調整されています。

(a)「特定人工衛星」(2条7号):人工衛星のうち、位置、姿勢及び状態を制御することができるものを指す新たな定義です。現行法で単に「人工衛星」として管理許可の対象とされていたものに相当し、分離後の管理に係る許可制度(3章)は、「特定人工衛星」にのみ適用されることになります。 

(b)「人工衛星」(2条3号):現行法では、「人工衛星」は、地球を回る軌道若しくはその外に投入し、又は地球以外の天体上に配置して「使用」3する人工の物体をいうものとされています(現行法2条2号)。本改正案では、規定振りは実質的に変わっていません4。もっとも、現行法上の人工衛星のうち、すでに管理が規制されているものが「特定人工衛星」と定義されたことの反面として、改正後の「人工衛星」は、位置・姿勢・状態の制御機能を有しない(「管理」されず、管理許可の対象ともならない)けれども「使用」される人工の物体(例えば、制御用無線設備を有しない、研究用の人工衛星等)も含むことが、より明確になっています。

(c)「人工衛星等」(2条4号):①人工衛星及び②人工衛星以外の宇宙ロケットに搭載する人工の物体であって、地球を回る軌道若しくはその外に投入し、又は地球以外の天体上に配置するものをいいます。現行法上の人工衛星(管理許可の対象となる「特定人工衛星」や、管理されないけれども使用される人工衛星)に加え、ダミーペイロードや、モニュメントや研究用物体等の、軌道上で「使用」されない人工物体も含めるよう定義がなされています5

(d)「宇宙ロケット」(2条2号)及び「宇宙ロケットの打上げ」(2条6号):地球から発射するロケットであって、発射した場合に地球を回る軌道若しくはその外又は地球以外の天体に達する推力を有するものを、新たに「宇宙ロケット」として定義します。現行法の「人工衛星の打上げ用ロケット」には明確な定義がありませんが(現行法2条3号等参照)、規制対象となる打上げが「人工衛星等の打上げ」と定義された上で、人工衛星の分離までを含む行為のみを指し(現行法2条5号)、ロケットの用途が人工衛星の打上げに限定される前提でした。新たな「宇宙ロケット」の定義では、ロケットとペイロードを別に取扱い、搭載物の有無・種類を問わず、ロケットの打上げ自体を規制対象とすることが可能になります。

その上で、改正法では、宇宙ロケットに人工衛星等を搭載した上で、一定の速度及び高度に達した時点で当該人工衛星等を分離する場合は、分離する行為も「宇宙ロケットの打上げ」に含まれるものとされ、人工衛星等の打上げの終点(打上げ実施者と(特定)人工衛星管理者の責任の分界点)は、人工衛星等の分離時であるとして、現行法の整理を実質的には維持しています。

図表2:改正後の「宇宙ロケット」と「人工衛星等」の整理

3. 打上げに係る許可制度の変更・拡充

(1)人工衛星等の搭載・分離を伴わない打上げの規制
これまで述べてきたとおり、日本の領域等から(国内に所在し、又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に搭載された打上げ施設を用いて)宇宙ロケットの打上げを行おうとする者は、その都度、内閣総理大臣の許可を受けなければなりません(4条1項)。人工衛星等の搭載・分離を伴わない打上げを含む、全ての宇宙ロケットの打上げが許可対象に含まれることになります。

(2)許可申請書記載事項の改正
打上げの許可対象が拡大されることに伴い、打上げに係る許可申請書の記載事項も、類型に応じて追加・変更されることになります(4条2項)。例えば、宇宙ロケットの打上げの目的も異なり得ることから、「宇宙ロケットの打上げの目的」(同項2号)が申請書の記載事項に追加されます。また、宇宙ロケットに、管理に係る許可の対象となる(特定)人工衛星以外の人工衛星等が搭載されることがあり得るため、「宇宙ロケットに人工衛星等を搭載するかどうかの別」や、宇宙ロケットに人工衛星等を搭載する場合は一定の事項(例:人工衛星等の投入先の軌道、利用目的、方法、構造)が申請書の記載事項とされます(同項5号)。

(3)許可基準の改正
宇宙ロケットの打上げに係る許可基準が改正され、例えば以下のような基準(従前は、ガイドライン等で実質的にカバーされていたものも含みます。)が、法律レベルで整備されることとなります。
 

  • 打上げの目的:宇宙ロケットの打上げの目的が、宇宙基本法の基本理念に則したものであり、かつ、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること、という許可基準が追加されます(6条1号)。
  • 人工衛星等汚染等防止・安全基準:人工衛星等を搭載する場合、その構造が投入先の軌道等に応じ、宇宙空間の有害な汚染等6の防止及び公共の安全確保のための基準に適合していることが求められることになります(6条4号ロ)。現行法では、人工衛星の管理に係る許可においてこのような適合性が求められていますが(現行法22条2号)、打上げ許可ではこのような適合性は求められていませんでした。改正法案では、管理や軌道上等での使用がなされない人工の物体を含めて、打上げ許可の段階で、このような適合性が求められることになります。
  • ロケット打上げ計画と遂行能力:ロケット打上げ計画(申請書記載事項。4条2項6号)が、公共の安全を確保し、及び宇宙空間の有害な汚染等を防止する上で適切なものであり、かつ、申請者が当該ロケット打上げ計画を実行する十分な能力を有することが求められます(6条5号)。前述のとおり、現行法では、宇宙空間の有害な汚染等の防止は、人工衛星の管理に係る許可では求められていたところ、打上げ許可においてはこのような適合性は求められていませんでした。例えば、一定のロケットの上段は、能力的に火星軌道に到達し得るため、宇宙条約9条に定められた「月その他の天体を含む宇宙空間の有害な汚染の防止」の実効的な要求として、国際宇宙空間研究委員会(COSPAR)が定める惑星保護方針(Planetary Protection Policy)に沿って、火星への衝突確率を評価することが求められているところ7、このような宇宙条約の履行担保の性質が明確化されたものといえます。
     

(4)許可を受けていない人工衛星等の搭載禁止
許可を受けていない人工衛星等の打上げ用ロケットへの搭載が明確に禁止されます。すなわち、打上げ実施者は、宇宙ロケットに人工衛星等を搭載する場合に打上げ許可に係る申請書に一定の事項を記載した上で許可を受けた人工衛星等以外は、宇宙ロケットに搭載してはならないこととされます(8条3項)。

4. ロケットの型式認定から設計確認への制度変更

現行法の、ロケットの設計に関する「型式認定」制度が、「設計の確認」制度に変更されます(13条1項)8。現行法では、ロケットの型式についてまとめて型式認定を取得し、同一型式の複数回の打上げに適用することが可能でしたが、改正後は個別のロケットごとに設計確認を行う仕組みとなります9。確認を受けた者には、設計確認番号が付された設計確認書が交付されます(13条4項)。設計確認を受けた場合は、打上げ許可申請書において、宇宙ロケットの設計の記載に代わり、設計確認番号を記載することで足りることになります(4条2項3号、3項)。実務上は、設計確認を経てから打上げ許可申請を行う場合が多いと考えられます。

現行法上の「外国認定」制度(外国政府によるロケット設計の認定を同等として受け入れる制度。現行法4条2項2号参照)は廃止されます10

なお、打上げ施設の適合認定も、打上げ用ロケットの型式認定ごとから、宇宙ロケットの設計ごとの確認制度に変更されます(16条1項)。

5. 搭載前人工衛星等の適合認定制度の創設

本改正案では、宇宙ロケットに搭載する前の人工衛星等(特定人工衛星を除きます。)を「搭載前人工衛星等」と定義し(2条8号)、その構造が、人工衛星等汚染等防止・安全基準(宇宙空間の有害な汚染等の防止及び公共の安全の確保に支障を及ぼすおそれがないものとするための基準)に適合していることを、打上げ前に、搭載前人工衛星等について所有権その他の管理の権原を有する者の申請により11、内閣総理大臣が認定する(適合認定)制度が創設されます(18条の2第1項)。管理許可の対象となる特定人工衛星以外についても、事前に公共の安全確保や宇宙空間の有害な汚染等を防止するための制度として設けられています。

内閣総理大臣は、申請があったときは、その申請に係る搭載前人工衛星等の構造が人工衛星等汚染等防止・安全基準に適合していると認めるときは、適合認定をしなければならないものとされます(同条3項)。認定を受けた者には、適合認定番号が付された搭載前人工衛星等認定書が交付されます(同条4項)。

適合認定を受け、宇宙ロケットの打上げの許可申請書に、搭載する人工衛星等の全部又は一部について適合認定に係る適合認定番号を記載した場合12、当該人工衛星等の構造について、申請書に記載することが不要となります(4条5項、2項5号へ)。実務上は、搭載前人工衛星等について適合認定を受けてから打上げ許可申請を行う場合が多いと考えられます。

認定後、打上げ前に人工衛星等の投入先や構造を変更する場合は変更認定が必要とされます(18条の3第1項)。偽りその他不正の手段により適合認定や変更認定を受けた場合、事後的に人工衛星等汚染等防止・安全基準に適合しなくなった場合、無認定での変更や、是正命令違反等の場合は、内閣総理大臣は、適合認定を取り消すことができます(18条の4)。

6. 損害賠償制度の拡充

これまで述べたとおり、本改正案において、人工衛星等の搭載・分離を伴わない宇宙ロケットや、(特定)人工衛星に該当しない人工の物体等が、打上げに係る規制対象として拡大されました。これに対応して、本改正案では、現行法で設けられているロケットや人工衛星の落下等により生ずる損害の賠償に関する制度について、(1)ロケット落下等損害と(2)人工衛星等落下等損害の二類型のそれぞれについて、制度を拡充しています。許可の反面として無過失責任を追加し、被害者保護も徹底することで、引き続き我が国の責任ある宇宙活動の実現を図ることが目的とされています。

(1)ロケット落下等損害(5章)
軌道投入ロケット単体を打ち上げる行為や、人工衛星等を分離しない軌道投入ロケットを打ち上げる行為のような、人工衛星等の打上げ以外の軌道投入物のある宇宙ロケットを打ち上げる行為は、人工衛星等の打上げと同等の危険性を有するものと考えられます。そのため、被害者保護の観点から、特定人工衛星を搭載するか否かにかかわらず、宇宙ロケットの打上げ実施者に対して、現行法の人工衛星の打上げ実施者と同様に、損害賠償担保措置を講ずる義務(9条)を課した上で、宇宙ロケットの打上げに伴うロケット落下等損害の賠償について無過失責任(35条)を課し、ロケット落下等損害を賠償する責任を集中する(36条)反面、政府補償の対象となります(40条)。これにより、被害者保護を図りつつ、ロケットの開発を促進し、民間による新たな宇宙輸送の実現を後押しすることが企図されています。

(2)人工衛星等落下等損害(6章)

  • 特定人工衛星の管理者の無過失責任(53条1項):国内等の特定人工衛星管理設備を用いて特定人工衛星の管理を行う者は、人工衛星等落下等損害について無過失責任を負います。すなわち、人工衛星のうち、位置、姿勢及び状態を制御することができるもの(特定人工衛星)に関する落下等損害について、現行法と同様、引き続き無過失責任が課されます。
  • 特定人工衛星以外の人工衛星等に関する新たな無過失責任(53条2項):国内の打上げ施設等 を用いて、特定人工衛星以外の人工衛星等を搭載して宇宙ロケットの打上げが行われた場合、当該人工衛星等による人工衛星等落下等損害が生じたときは(i)委託によらずに当該人工衛星等を搭載した場合は宇宙ロケットの打上げを行った者が、(ii)委託により当該人工衛星等を搭載した場合は委託をした者が、それぞれ無過失責任を負います。現行法では、軌道上で制御できる「人工衛星」以外は人工衛星の管理に係る許可制度の対象外であり、明確な賠償責任の規定がなかったことから、打上げ許可による規制対象とすることの反面として無過失責任を追加するものです。


現行法上、ロケット落下等損害と異なり、人工衛星等落下損害については、損害賠償担保措置を講ずることが義務付けられておらず、責任集中や政府補償も設けられていません。この構造は、改正後も変わらず、特定人工衛星以外の人工衛星等を打上げ、又は打上げを委託した者は、無過失責任を負うことになるため、人工衛星等の性質に応じ、損害賠償保険への加入等、損害賠償を担保するための対応を検討することになります。

Ⅲ. その他の改正案及び施行期日・経過措置

1. 宇宙基本法の改正

宇宙基本法の基本的施策として、(人工衛星の打上げにかかわらない)宇宙開発利用に係るロケットの開発等に必要な機器・技術等の研究開発の推進が新たに追加されます(宇宙基本法改正案15条)。また、宇宙開発利用の基本理念として「公共の安全の確保」を明文化し、安全に関する規制・基準の法的根拠がより明確にされます(同20条)。

2. 内閣府設置法の改正

宇宙活動法の改正に対応し、宇宙政策委員会の調査審議の対象も、現行の「人工衛星等の打上げ及びその打上げ用ロケット」の安全の確保又は宇宙の環境の保全に関する重要事項から、「宇宙ロケットの打上げ」の安全の確保又は宇宙の環境の保全に関する重要事項に改められます(内閣府設置法改正案38条1項2号)。 さらに、改正後の宇宙活動法に基づく事項が、同委員会の所掌に明記されます(同項3号)。

3. 宇宙資源法の改正

宇宙資源法は、宇宙資源の探査及び開発を人工衛星の利用の目的とする場合に、宇宙活動法の規定に基づく人工衛星の管理に係る許可の特例を定めるものです。そのため、宇宙活動法の名称や、従前の管理許可の対象となる「人工衛星」に対応する用語が変更されたことに伴い、宇宙資源法の条文も形式的な変更がなされます(改正法附則6条)。

4. 施行期日・経過措置・見直し規定

宇宙活動法及び内閣府設置法の改正は、公布の日から起算して1年以内で政令で定める日に施行されます。ただし、宇宙基本法の改正は、公布の日に施行されます(改正法附則1条)。

経過措置として、施行日前に既存の許可を受けて地球を回る軌道若しくはその外に投入し、又は地球以外の天体上に配置した人工衛星の管理については、従前の例によるものとされています(改正法附則2条)14

宇宙活動法は、改正法の施行後3年を目途として、施行状況等を勘案しつつ検討を行い、必要があれば所要の措置を講ずるものとされています(改正法附則5条)。この見直し規定により、改正後の実務上の運用を踏まえ、制度の改善が図られることになります。

Ⅳ. 関係者への影響

本改正案は、国内外の関係者に幅広い影響を及ぼし得ます。
 

  • 打上げサービス事業者・ロケット開発者:試験打上げを含む全ての宇宙ロケットの打上げに許可が必要となり、ロケット打上げ計画の提出義務も課されます。型式認定から個別ロケットごとの設計確認への移行により、これまで同一型式の型式認定で複数回の打上げに対応することを想定していた事業者は、フローの見直しが求められます。
  • 衛星事業者・メーカー・大学等の研究機関・軌道上で人工物体を用いるサービス提供者:管理される特定人工衛星以外の人工衛星等については、搭載前人工衛星等の適合認定制度により、打上げ前に人工衛星等汚染等防止・安全基準に適合していることの認定を受けることが、実務上は通常になると考えられます。超小型衛星や、制御不能な研究用物体等の、必ずしも標準的ではないペイロードについては、打ち上げまでのタイムラインやコストを検討することになります。
  • ペイロード搭載委託者(ライドシェア顧客等):特定人工衛星以外の人工衛星等の搭載を委託した者は、分離後の当該人工衛星等による落下等損害について、新たな無過失責任を負うこととなります。このため、契約上の取決め、保険カバレッジ及び補償条項の見直しが重要となります。
  • 保険会社・金融機関:損害賠償担保措置を講じる義務の対象が宇宙ロケットの打上げ実施者に拡大されたことや、特定人工衛星以外の人工衛星等の落下等損害に関する無過失責任が拡大したことにより、新たなリスク評価をもとに、商品設計を検討することが考えられます。
  • 海外の関係者:日本の打上げサービスを利用する外国の衛星事業者やペイロード提供者は、搭載前適合認定の対象となり得ます。搭載委託者に課される無過失責任規定も、海外の事業者が委託を行った場合にも適用されるものと考えられます。外国認定制度の廃止により、外国で設計されたロケットを日本国内から打ち上げる場合にも、日本法に基づく設計確認が個別に必要となる点にも注意が必要です。

Ⅴ. WGとりまとめのうち改正法案に反映されていない事項

宇宙政策委員会 宇宙活動法の見直しに関する小委員会 宇宙活動法改正ワーキンググループの「宇宙活動法の見直しの基本的方向性 最終とりまとめ」(令和7年12月9日)(以下「WGとりまとめ」といいます。)では、本改正案に反映された「早急に法改正を行うべき事項」の他にも、様々な検討事項が取り上げられていました。以下では、WGとりまとめにおいて検討されながらも、審査基準やガイドラインでの対応や、今後の検討課題とされるなどにより、今回の改正法案には反映されなかった、主な事項を整理します。これらの事項は、施行後3年以内の見直し検討(改正法附則5条)を含めて、今後の課題として引き続き議論がなされる可能性があります。

1. 再突入許可制度

WGとりまとめでは、民間企業による再突入機器(地球を回る軌道等から地球表面に実質的に無傷で帰還するように設計された機器)の大気圏への意図的な再突入・着陸・着水行為について、人工衛星管理許可とは独立した「再突入許可」制度を導入する必要があるとされました(Ⅳ.1.)。しかし、WGとりまとめでは、同時に、本邦領域内に着陸させる計画を有する米国事業者の初飛行が延期される等により、再突入行為に関する知見の獲得に支障が生じていることから、宇宙活動法に直ちに導入することはせず、知見の集積を待って可及的速やかに法改正を行うべきとの結論が示されました。WGとりまとめでは、再突入行為に伴う第三者損害賠償制度(無過失責任・損害賠償担保措置・政府補償)についても、再突入許可制度の導入と併せて検討すべきとされています。このような議論を踏まえ、本改正案には再突入に関する規制は含まれていません。

2. サブオービタル飛行の規律

WGとりまとめでは、有翼型サブオービタル機(翼状の構造を有し揚力の活用を前提に設計された機体)の飛行やサブオービタルロケット(観測ロケット等、一定の高度以上に上昇するが地球を回る軌道等への投入物のないロケット)の打上げ行為について、宇宙活動法や新法による規制の在り方を検討すべきとされました(Ⅳ.2.)。しかし、WGとりまとめでは、同時に、サブオービタル機には、人工衛星等の打上げとは異なり「軌道投入」というメルクマールがないため、規制対象とするロケットと規制対象外とするロケットの法制上の切り分け方法(到達高度による区分や、機体性能による区分等)、宇宙空間と空域の境界に関する国際法上の未解決問題、航空法との関係整理、被害者保護の観点からの第三者損害賠償制度の在り方等、多くの法制上の課題が存在するとされました。WGとりまとめでは、当面の対応として、安全確保に関する推奨事項を取りまとめた手引書の作成が提言されるにとどまり、本改正案にはサブオービタル機の飛行等に関する規制は盛り込まれていません。

3. 有人宇宙飛行・輸送制度の在り方

WGとりまとめでは、国内においても2030年代の有人宇宙輸送の実現を目指して技術開発が進められていることを踏まえ、有人ロケットの打上げの許可も想定していくべきとされました。もっとも、観光や二地点間輸送といった旅客運送を念頭にした搭乗者安全確保を目的とした規制については、過剰な規制となるおそれがあり時期尚早とされました。また、今後数年以内で想定される有人ロケットの打上げは、リスクを承知し訓練された関係者(スペシャリスト)がロケットに搭乗する場合が想定されるところ、このような観点からも過剰な規制を行うことは避けるべきであり、現時点で搭乗者安全に関する特別な規定を設けるべきではないとされました。その上で、スペシャリストが登場した際に求められる対応について、公共の安全確保の観点から整理した上で、必要に応じて審査基準やガイドラインに反映することを検討することや、搭乗者安全に関する推奨事項について取りまとめることも視野に、事業者が行う技術実証で得られる搭乗者安全に関する知見の蓄積を官民で進めていくべきであるとされました(Ⅴ.1.)。これらの議論を踏まえ、有人宇宙飛行・輸送に関する規制は、本改正案には反映されていません。

4. 再使用型ロケット等に係る安全基準の明示

WGとりまとめでは、宇宙活動法上、人工衛星の打上げにおいて、再使用する第一段目等(再使用段)を有するロケットが含まれていることは必ずしも排除されておらず、再使用段を有するロケットの打上げは法改正を行わなくとも規制が可能であるとしています。他方、人工衛星の打上げ用ロケットからの分離物等は宇宙活動法の条文に明示がなくとも審査基準が設けられている一方で、同じく地上に降下して再使用する再使用段の降下・回収行為に係る審査基準が設けられていないことから、降下・回収地点周辺の公共の安全を確保するため、審査基準やガイドラインに必要な安全基準を明示的に規定すべきとされました(Ⅴ.2.)。なお、地球を回る軌道等に投入されたロケットの軌道投入段を地上に降下させる行為(再使用型ロケットの帰還行為)については、上記1.の再突入許可制度と合わせた検討課題とされています。

5. ロックーン方式に係る安全基準の整備

WGとりまとめでは、気球を用いてロケットを上昇させ空中でエンジン/モーターに点火する「ロックーン方式」による人工衛星等の打上げについて、気球の特性に応じた審査基準やガイドラインの整備が提言されました(Ⅴ.3.)。また、気球を国内から放球したものの、我が国の領域外においてロケットエンジン/モーターに点火するような場合に、現行の宇宙活動法が規制する、国内の打上げ施設を用いた打上げとして捕捉できるか等の法制上の論点も指摘されました。議論の結果、ロックーン方式による人工衛星等の打上げについては、上記の法制上の課題を引き続き検討しつつ、公共の安全確保の観点から、審査基準やガイドラインレベルでの対応をすべきとされています。

6. 包括的な許可制度(複数回打上げの一括許可)

WGとりまとめでは、米国等の他国における複数回の打上げを対象とする許可・ライセンス制度を参考に、我が国においても包括的な許可制度の導入が検討されました(Ⅴ.4.(1))。しかし、我が国では人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全確保の方策等が標準化・定型化した状況には至っていないことや、複数回の人工衛星等の打上げの許可は、反復継続的な業規制としての更なる検討を要すること等から、直ちに制度を導入することはせず、規律のあり方を引き続き検討していくべきとされました。

7. 事故報告制度の法定化

WGとりまとめでは、現行の宇宙活動法上、打上げ実施者や人工衛星管理者に対し、ロケット落下等損害発生時や人工衛星落下等損害の発生時に、報告をする義務が課せられていないことから、報告義務を法令上課すことも検討されました(Ⅴ.5.(1))。もっとも、打上げに対して都度許可を行う現行法の体系下では、義務違反時の効果(許可取消し等)の規定を設けることが困難であること等から、法令上の報告義務は課さず、事業者の予見可能性を確保し、負担を軽減する観点から、一定の事態について「事故・重大インシデント」の分類を規定した手引書の作成し、事業者と国の間で行われるコミュニケーションの円滑化を図るべきとされました。本改正案には、事故報告制度に関する規定は含まれていません。

8. 日本人・日本法人が本邦領域外で行う打上げ等の規律

WGとりまとめでは、米国等の他国が自国民や自国法人が自国領域外で行う人工衛星等の打上げ等の宇宙活動を許可対象としている例があること等を踏まえ、日本人や日本法人が本邦領域外で行う人工衛星等の打上げ等について宇宙活動法上の規律を及ぼすべきかどうかについて、検討されました(Ⅵ.1.)。もっとも、これらの活動により、我が国が宇宙損害責任条約上の「打上げ国」としての損害賠償責任を負う可能性は認識されつつも、現時点では具体的な計画を有する民間企業が存在しないこと等から、中長期的課題として引き続き検討すべきとされました。

9. 宇宙物体登録手続の法制化

WGとりまとめでは、宇宙物体登録条約の的確な履行の観点から、宇宙物体登録手続を国内法で法定化することが検討されました(Ⅵ.2.)。しかし、宇宙物体登録条約上「打上げ国」となる基準等の整理を含めて、慎重な検討が必要であり、国際的な統一ルールが未確定であること等から、現時点では法制化せず、国際的な議論の進展に合わせて検討すべきとされました。

10. その他の中長期的検討課題

WGとりまとめの注記(注11)においては、以下のような事項についても、必要に応じて時機に遅れることなく所要の対応を講ずることができるよう、引き続き検討すべきとされています。
 

  • 軌道上損害に係る政府補償制度
  • 宇宙空間の持続的かつ安定的利用の確保を推進する事業を促進・奨励するための措置
  • 人工衛星の型式認定制度
  • JAXAによる申請手続の特例制度等

Ⅵ. 終わりに

国内外における宇宙活動が、活発化かつ多様化する中で、我が国における規制の在り方についても多くの議論がなされ、今回の本改正案に結実しています。一方で、実際の運用に向けて検討を進めるにあたり、新たな論点が出てくる可能性もあります。また、公共の安全の確保や宇宙空間の有害な汚染等の防止等の要請を確保しつつ、民間事業者の活動を促進するというバランスも重要です。そのような中で、規制の明確性・予見可能性を確保する要請と、過剰規制の防止や立法の根拠事実の有無といった考慮に基づいて、今後の検討課題とされた事項も多く残っています。国内法にとどまらず、多国間の協調と競争関係の中で、法規制や政策の在り方を不断に検討していく必要性は増すばかりです。このような環境下において、引き続き、宇宙活動法の改正の施行に向けた政省令やガイドライン等の具体化や、WGとりまとめにおいて今後の課題とされた事項について、注視をしていく必要があります。本稿が、そのような取り組みの前提としての、宇宙活動法等の改正についての理解の一助となれば幸いです。

  1. 日本における宇宙活動に関連する法律には、これらのほか、いわゆる衛星リモセン法(衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律)もありますが、今回は改正対象には含まれていません。
  2. 「ダミーペイロード」とは、人工衛星に相当する質量・寸法等を有する人工の物体を指します。地球を回る軌道等で使用することを目的として設計・製造されていないという特徴を有します。
  3. 「使用する人工の物体」とは、性質として宇宙空間で使用することを目的として設計・製造される人工の物体であることを指すものであることが示されています(内閣府「宇宙活動法の見直しの基本的方向性 最終とりまとめ(概要)」8頁参照)。
  4. 人工衛星の定義に、「宇宙ロケットに搭載する人工の物体であ」ること、という表現は追加されていますが、これは「宇宙ロケット」と「人工衛星」を区別するために追加されたものと思われます。
  5. なお、現行法の「人工衛星等」は、人工衛星及びその打上げ用ロケットをいうため(現行法2条3号)、同じ用語でも、改正後はロケットを含まないこととなります。
  6. 「宇宙空間の有害な汚染等」とは、宇宙条約9条に規定する月その他の天体を含む宇宙空間の有害な汚染並びにその平和的な探査及び利用における他国の活動に対する潜在的に有害な干渉をいうものとされています。
  7. 宇宙政策委員会 基本政策部会 宇宙活動法の見直しに関する小委員会 第4回会合における、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)提出資料参照。
  8. 設計の確認は、発射前の宇宙ロケットについて「所有権その他の管理の権原を有する者」の申請によることとされています。現行法の型式認定にはない主体要件ですが、申請主体を明確にする趣旨と考えられます。ただし、例えばロケットの製造メーカーと打上げ主体が異なり、宇宙ロケットの製造中や、引き渡しが済んでいない段階で設計の確認を行う場合に、「所有権その他の管理の権原を有する者」には、誰がどのような根拠で該当するかといった点は、現状では必ずしも明確ではないようにも思われます。
  9. 実務運用により対応されることも想定されますが、実務上事業者の負担が増大することにならないかは注視が必要です。
  10. 現行法上求められる「外国認定」として認められる国を定める内閣府令も定められておらず(現行法4条2項2号参照)、制度の使用実態がなかったことも影響したものと思われます。
  11. 宇宙ロケットの設計の確認と同様、申請の時点や製造者・所有者等の契約関係次第で、誰が申請者として適切か、個別に検討をする必要が生じるものと考えられます。
  12. 特定人工衛星の管理に係る許可(20条1項)を受けたことを証する書面、又は宇宙条約の締約国である外国の政府が監督することを証する書面を添付した場合も、同様の取扱いを受けることができます。
  13. 国内に所在し、又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に搭載された打上げ施設を指します。
  14. 例えば、本改正案では、特定人工衛星の管理許可申請書に記載が求められる、特定人工衛星の投入先又は配置先(軌道)を変更しようとする場合が、変更許可を要する対象に追加されています(20条2項3号、23条1項)。もっとも、既に軌道投入されている(特定)人工衛星については、改正後の基準に新たに適合させることが困難であると考えられることから、その軌道を変更する場合であっても、従前の例によるものとして、変更許可申請や、新たな基準への適合までは求められないこととなります。

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