Ⅰ. はじめに
2025年(令和7年)6月11日、総務省は、「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」(令和7年6月11日付け総行公第72号総務省自治行政局公務員部長通知。以下「総務省通知」といいます。)を発出しました。これは、兼業を希望する地方公務員が兼業できる環境を整備することを目的として、総務省から、各都道府県知事、各指定都市市長及び各人事委員会委員長に宛てて、地方公務員法に基づく地方公務員の兼業許可の運用について、技術的助言(地方公務員法59条、地方自治法245条の4)として行われたものです。この通知には直接的な法的拘束力はありませんが、今後、地方公共団体が職員の兼業を許可するか否かを検討するにあたって参照される重要な指標になるものと考えられます。
本号では、まず、民間企業、国家公務員及び地方公務員における兼業の状況について概観し、総務省通知の内容を紹介するとともに、過去の裁判例なども踏まえながら、特に地方公共団体における地方公務員の兼業許可に関する取扱いのポイントを解説します。
Ⅱ. 民間企業の労働者、国家公務員及び地方公務員における兼業の状況の概観
1. 民間企業の労働者
民間企業の労働者については、副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にあることを踏まえ、2018年1月に厚生労働者が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「厚生労働省ガイドライン」といいます。)を公表し、同ガイドラインは2020年9月及び2022年7月に改定されています。
厚生労働省ガイドラインは、副業・兼業に関する裁判例の考え方の整理として、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、
① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
に該当する場合と解されている」とした上で、「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる」としています。
2. 国家公務員
(1)国家公務員法の規定
国家公務員の兼業については、国家公務員法103条(私企業からの隔離)において、職員は、人事院の承認を得た場合を除くほか、営利企業の役員等の地位を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならないことが、同法104条(他の事業又は事務の関与制限)において、職員が報酬を得て、営利企業の役員等との兼業以外の兼業を行う場合には、内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可を要することがそれぞれ定められています。
(2)兼業許可の基準
1966年(昭和41年)に現在の内閣官房内閣人事局による「職員の兼業の許可について」(昭和41年2月11日付け総人局第97号。以下「昭和41年通知」といいます。)において、同法104条の許可の基準が示され、さらに2019年(平成31年)には「『職員の兼業の許可について』に定める許可基準に関する事項について(通知)」(平成31年3月28日付け閣人人第255号。以下「平成31年通知」といいます。)において、昭和41年通知の許可基準に関する事項の明確化が図られました。
昭和41年通知及び平成31年通知によれば、次の1.~5.のいずれかに該当する場合には原則として同法104条の許可をしないこととされています。
- 兼業のため勤務時間をさくことにより、職務の遂行に支障が生ずると認められるとき
- 兼業による心身の著しい疲労のため、職務遂行上その能率に悪影響を与えると認められるとき
※兼業先の勤務時間数が、週8時間又は1か月30時間を超えるとき、また勤務日において1日3時間を超えるときは、原則として、2.に該当する(平成31年通知)。 - 兼業しようとする職員が在職する国の機関と兼業先との間に、免許、認可、許可、検査、税の賦課、補助金の交付、工事の請負、物品の購入等の特殊な関係があるとき
- 兼業する事業の経営上の責任者となるとき
兼業することが、国家公務員としての信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるおそれがあるとき
※兼業先ごとの5.の該当性は下表のとおり(平成31年通知)。兼業先 上記5.の該当性 国、地方公共団体、独立行政法人等 原則として、5.に該当しない。 公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、更生保護法人、医療法人、特定非営利活動法人等 以下のいずれかに該当する場合、原則として、5.に該当する。
a) 当該団体がその設立目的に沿った活動実績があることを確認できないとき
b) 当該団体又はその役員等が、過去1年以内に業務に係る刑事事件で起訴された場合又は許認可の取消し等の行政処分を受けた場合一般社団法人、一般財団法人、自治会・町内会、マンション管理組合、同窓会等 上記の公益社団法人等の事由(a)若しくは(b)、又は、以下のいずれかに該当する場合、原則として、5.に該当する。
a) 当該団体の目的が国家公務員としての信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるおそれがあるとき
b) 直近3年分の事業報告、活動計算書等の資料がHP等により広く公表されていないとき営利企業 原則として、5.に該当する。 ※兼業によって得る報酬が社会通念上相当と認められる程度を超える額である場合には、5.に該当する(平成31年通知)。
(3)最近の動向
人事院「公務員人事管理に関する報告」(令和6年8月8日)では、国家公務員の兼業に関し、兼業制度の見直しは、公務の魅力を向上させ、人材確保につながり得るものであるとした上で、職員アンケートによる兼業に関する職員の意識の把握や、民間企業へのヒアリングによる兼業・副業の実態の把握等を行うこととし、兼業制度の見直しについて具体的な検討を進めていくことが示されました。
3. 地方公務員
(1)地方公務員法の規定
地方公務員の兼業については、地方公務員法38条1項において、職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員等の地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得て事業若しくは事務に従事してはならないこととされています。また、同条2項において、人事委員会は、人事委員会規則により許可の基準を定めることができるとされています1。
このように、国家公務員の場合と比べて、やや制限が緩和され、任命権者の許可を受けさえすれば、営利企業等に従事することができるものとされています。この点については、地方公共団体の実情を考慮したものとされています2。
(2)兼業許可の基準
兼業許可の基準は、人事委員会が人事委員会規則により定めることができるとされています(地方公務員法38条2項)。人事委員会(地方公共団体の規模等によっては公平委員会)は地方公共団体ごとに設置されるものですので、兼業許可の基準は地方公共団体ごとに定められますが、兼業を許可するに当たっては、次の3点の基本的な原則(以下「基本的原則」といいます。)を満たすことが求められるとされています3。
- 職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないこと(公務能率の確保)
- 相反する利害関係を生じるおそれがなく、かつ、その他職務の公正を妨げるおそれがないこと(職務の公正の確保)
- 職員及び職務の品位を損ねるおそれがないこと(職員の品位の保持)
(3)地方公務員の兼業の現状
地方公務員の兼業許可件数については、総務省の2024年度の調査(「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する実態調査(R6.4.1時点)」(総務省通知の別添2))によれば、全体の許可件数は41,587件であり、これは2019年に実施された前回調査の結果(41,669件)からほぼ横ばいとなっています。このうち、社会貢献活動に関する許可件数は13,498件であり、前回調査から1,992件増加しています。
また、兼業の許可基準を設定している団体は、1,152団体で全体の64%となっており、前回調査と比べると25ポイント増加しています。このうち、許可基準の内容が国基準となっている団体が982団体、独自基準となっている団体が170団体と、基準を定めている団体のうち85%が国基準となっています。
さらに、許可基準を対外的又は庁内に周知している団体は、1,008団体で全体の56%となっており、前回調査と比べると21ポイント増加しています。
Ⅲ. 地方公務員の兼業許可に関する総務省通知について
1. 総務省通知が発出された経緯・背景
総務省では、「社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会」(令和5年10月から開催)のもとに、「地方公務員の働き方に関する分科会」(以下「分科会」といいます。)を令和6年9月に設置しました。
分科会では、人口減少、多発する自然災害など、住民が求める役割は複雑、高度化し、自治体を取り巻く状況は一層厳しさを増している中、「人」に着目して、職員が自らの能力を存分に発揮できるよう、時間外勤務、ハラスメントなどの阻害要因を極力排除し、研修等の能力開発機会、兼業・副業などの促進要因を増やすことで、自己成長と社会貢献が両立できる、真に「やりがい」が感じられるような職場にしていくための検討が行われ、2025年6月に報告書が取りまとめられました。
総務省通知は、同報告書を受けて発出されたものであり、分科会の設置から総務省通知の発出に至る背景として、次のように述べられています。
「地方公務員の兼業については、職員による自律的なキャリア形成、自己実現のニーズの高まりや、高齢化、人口減少など社会情勢の変化を背景として、兼業を希望する職員が兼業できる環境を整備することが各地方公共団体に求められています。また、こうした環境整備は、公務を支える有為な人材に選ばれ、働き続けてもらう職場づくりに資するものであり、さらには、職員が兼業を通じて、地域を知り、人と交わり、そこで得た学びを、職務遂行や行政サービスの向上に活かすことにより、地域住民の信頼を高め、効率的な公務運営の確保にもつながるものと考えられます。」
2. 総務省通知の概要及びこれを踏まえた対応のポイント
(1)兼業許可の基準の設定について
総務省通知では、まず、「各地方公共団体は、兼業が地域や社会が抱える課題解決に寄与するといった点等も踏まえ、地域住民の理解と納得を得られるよう、地方公務員法の趣旨の範囲内で創意工夫をしながら、詳細かつ具体的な許可基準を設定すべき」とされています。そして、「職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないこと」、「相反する利害関係を生じるおそれがなく、かつ、その他職務の公正を妨げるおそれがないこと」及び「職員及び職務の品位を損ねるおそれがないこと」の基本的原則を踏まえて、次のa~eの留意点が記載されています。
総務省の2024年度の調査によれば、許可基準を設定している地方公共団体は1,152団体で全体の64%を占めており、いまだ設定していない地方公共団体においては、総務省通知を踏まえて新たに設定することを検討する好機と考えられます。また、すでに設定している地方公共団体においても、総務省通知を踏まえて、その内容の見直しを検討する好機と考えられます。
a. 営利企業の従業員との兼業も可能であること
総務省通知では、地方公務員においては、地方公共団体の実情及び人的資源の有効活用の点から、一律にこれを禁止するのではなく、基本的原則を満たす場合においては、各任命権者の判断において、営利企業の従業員との兼業を許可してよい旨が指摘されています。
国家公務員の場合、前記Ⅱ.2.(2)のとおり、営利企業の従業員との兼業(有報酬)については、原則、許可されません。従前、総務省は、各自治体に対して、国家公務員の取扱いを踏まえ、各地方公共団体において詳細かつ具体的な許可基準を設定すべき旨の通知を行っていました(「『営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する調査(勤務条件等に関する附帯調査)』の結果等について(通知)」(令和2年1月10日付け総行公第1号総務省自治行政局公務員部公務員課長通知))。総務省の2024年度の調査によれば、許可基準を設定している地方公共団体のうちの85%が国家公務員についての兼業許可の基準と同様の基準としています。
今般の総務省通知は、各任命権者の判断によって地方公務員が営利企業の従業員との兼業を許可してよい旨を明示的に示した点で従前の通知とは異なっており、地方公共団体の実情に照らして柔軟な対応を取ることを許容することを示したものです。したがって、国家公務員の基準に単に追随していたような地方公共団体においては、今般の総務省通知を踏まえて、基準の見直しを検討する好機であると考えられます。
b. 兼業先との相反する利害関係を確認する必要があること
総務省通知では、任命権者が職員から兼業申請を受け、兼業許可を行うに当たっては、職務の公正性を確保するため、兼業する職員の職務と兼業先の団体、事業又は事務との間に相反する利害関係がないこと(又は生じるおそれがないこと)を確認することが必要である旨が指摘されています。
総務省通知では、具体的な確認・判断の方法については、「相反する利害関係の確認に当たっては、相反する利害関係を見逃すことがないようにする一方で、事案に応じて過剰に制限されることがないよう、相反する利害関係の有無を検討する単位(組織レベル、部レベル、課レベルなど)について、一律の基準を設けず、個別具体的に判断を行う必要がある」旨指摘されています。
c. 報酬額が社会通念上相当と認められる範囲であること
総務省通知では、兼業することによって得られる報酬額については、兼業先や兼業する事業又は事務の内容や性質によって、相当と考えられる額は異なるため、例えば、同種の事例における報酬額を参考とするなど、社会通念上相当と認められる程度であるかどうかといった観点や、地方公務員としての地位を利用した不適正な報酬額となっていないかといった観点などから、個別に判断する必要がある旨が指摘されています。
具体的に、許可基準を設定する際には、総務省通知において「一律に具体的な報酬額を定めるのではなく、『社会通念上相当と認められる程度を超えない額』等とすることが考えられる」とされています。
d. 兼業先の勤務時間数を確認する必要があること
総務省通知では、兼業による心身の著しい疲労のため、職務遂行上、能率に低下を来してはならず、許可基準を設定する際には、予め、兼業先の勤務時間数(以下「兼業時間数」といいます。)の上限を定め、職員から申請があった際には、上限の範囲内であるか確認するとともに、兼業を行った後については、実績報告等により、兼業の内容や兼業時間数を確認すること、特に、繁忙期は、適時、時間外勤務も含めた公務の勤務状況にも目配りするなど、当該職員の状況を丁寧に把握することが重要である旨が指摘されています。
兼業時間数の上限については、国家公務員については平成31年通知において、(i)週8時間、(ii)1か月30時間、(iii)勤務日において1日3時間とされていることが参考になると考えられます。
e. 職員個人のスキルや地域の実情を踏まえた自営兼業も可能であること
総務省通知では、職員が、任命権者の許可を得て、いわゆる自営兼業を行うことは、報酬を得て事業又は事務に従事する場合と同様に、基本的原則を満たすことを任命権者が確認し、全体の奉仕者としての性質を維持できる場合には、職員個人のスキルや地域の実情を踏まえた自営兼業を認めることも可能である旨が指摘されています。
なお、自営兼業の場合は、労働時間の通算(労働基準法38条1項)が適用されませんが、総務省通知では「その場合であっても、職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないかといった観点から、問題が生じないかを確認することが必要であり、許可する際に、個別の事案に応じて、一定の条件を付すことや、許可した後も定期的に兼業の状況について報告を求めるなど該当職員の状況を丁寧に把握することが重要である」とされており、個別の事案においてはこれを踏まえた対応が求められます。
(2)許可基準の公表について
総務省の2024年度の調査によれば、許可基準を庁外又は庁内に周知している団体は、1,008団体で全体の56%となっています。許可基準を設定している団体は、1,152団体であり、許可基準を設定している団体の中でも一部は庁外にも庁内にも周知していない状況です。
総務省通知では、「許可基準を公表していない地方公共団体においては、兼業許可の透明性や予測可能性を確保し、兼業を希望する職員が許可申請を躊躇なく行えるようにすることや、許可基準が明確でなく、許可を得ずに兼業を行ったために懲戒処分に至るといった事案を防ぐため、各地方公共団体において許可基準を公表・周知することが重要である」とされています。
また、「住民等に対する透明性や予測可能性を確保する観点から、庁内のみならず、庁外に対しても許可基準を公表することが求められる」とされています。
各地方公共団体においては、許可基準を設定した場合には、これを庁内及び庁外に公表することを検討することになります。
(3)兼業許可の運用について
総務省通知では、兼業許可の運用に当たって、以下の留意点が指摘されています。
- 兼業許可に一定の有効期間を設定した上で、兼業先の業務内容の報告を受けるなど、実態把握等を定期的に行うべきこと。また、人事異動等により職員の職務と兼業先の団体、事業又は事務との関係に変化が生じた場合などは、兼業許可の有効期間内であっても、再度、許可手続を行う必要があること。
- 職員の自発性を確保する必要があるため、職員の意に反した動員的な運用とならないよう留意するべきこと。
- 職員の健康確保に対して配慮する必要があること。これには、職員の時間外勤務の状況を確認することなどが含まれています。
- 兼業しやすい職場づくりに取り組むべきこと。例えば、業務見直しやノー残業デーの設定、フレックスタイム制度の導入等といった働き方改革を進めること。
- 住民に対する説明責任を果たすとともに、透明性の確保を図るべきこと。具体的には、許可基準を公表するほか、各地方公共団体が兼業の許可件数の状況について毎年公表するなどの取組を行うべきであること。
3. まとめ―兼業許可を巡って紛争が生じる場合も想定しながら
兼業許可を巡って、地方公共団体と地方公務員との間で紛争が生じる場合としては、①地方公務員が兼業許可を受けずに兼業を行った場合、②地方公共団体が兼業申請を不許可とした場合が考えられます。
まず①の場合、当該地方公務員は懲戒処分の対象となり得るため(地方公務員法29条1項)、地方公共団体としてはその要否等を検討することとなります。ただし、懲戒処分を行った場合、兼業であったといえるのか、懲戒処分が重すぎないか、そして、懲戒処分の手続が適法であるか等をめぐって、懲戒処分の取消訴訟4や国家賠償請求訴訟が提起される可能性があります。過去の裁判例の中には、無許可兼業を理由とする懲戒処分の取消訴訟において、原告(公務員)から、当該地方公共団体において許可基準の整備等が十分にされておらず、原告は、兼業には許可が必要とは認識していなかったことが、裁量権の逸脱又は濫用を基礎づける事情として主張された事案があります(名古屋地判令和4年9月7日判時2609号51頁)。裁判所は「(原告が)許可又は承認を要する兼業か否か問題となることを認識することが困難であったとはいえず、許可の要否に関する具体的基準が公表されていなかったことをもって原告の責任を軽減する方向に斟酌すべき事情とみることはできない」と述べて当該主張を採用しなかったものの、一般論としては、許可基準を設定して周知しておくことが無許可兼業の防止になる面もあるものと考えられます。
また②の場合、不許可処分に処分性が認められることを前提とした取消訴訟や、国家賠償請求訴訟が提起される可能性があります。不許可処分に対する取消訴訟は主要な公刊物には見当たりませんが、兼業を許可するか否か、また、許可するとしてどのような条件を付するべきかについては、行政裁量が認められると考えられることから、その裁量権に逸脱又は濫用があったかどうかが争点になることが想定されます。裁量逸脱又は濫用の判断にあたっては、許可基準の合理性や、仮に許可基準とは異なる基準を用いて判断をした場合にはその判断の合理性などが問われる可能性が高いと考えられます。総務省通知は裁判所の判断を拘束するものではないものの、上記合理性を判断するにあたっては、裁判所にも一定程度参照される可能性があるため、兼業許可申請への対応にあたっては総務省通知の内容に留意することが有益と考えられます。
まとめになりますが、各地方公共団体においては、総務省通知を踏まえ、兼業の許可基準やその運用の見直しを確認、検討することが推奨されるといえます。
- なお、教育公務員が教育に関する兼職等をすることについては別の規律がありますが(教育公務員特例法17条1項)、総務省通知では触れられていません。
- 昭和25年11月24日衆議院地方行政委員会における鈴木俊一政府委員の説明
- 橋本勇『新版逐条地方公務員法<第6次改訂版>』(学陽書房、2023年)809~810頁
- なお、審査請求前置とされています(地方公務員法51条の2)。