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International Trade Law Newsletter

中国最新法令

米中輸出規制の最新動向~米国によるエンティティ・リスト規制の拡大と中国によるレアアース輸出規制強化~
目次

Ⅰ. はじめに

第2次トランプ政権の発足以降、米中間では、関税、輸出規制をはじめとする規制の応酬が続いています。両国間では、5月以降、複数回にわたり政府間のハイレベル交渉が行われ、相互関税の引き上げの延期や中国によるレアアース輸出規制の緩和等など一定の合意に達した部分もありますが、ここへきて両国間の緊張が再び高まっています。

特に、9月29日に米国商務省産業安全保障局(BIS)が発表した「関連事業体ルール(Affiliates Rule)」により、輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティ・リスト規制の対象となる中国企業等の範囲が大幅に拡大され、日本企業の中国ビジネスにも大きな影響が生じています。一方の中国側も、10月9日に、レアアース関連品目、レアアース生産技術等に対する輸出規制、一部のレアアース品目に関する再輸出規制、輸出管理制御者リスト及び注視リストの適用範囲の拡大を発表し、米国による規制強化を強く牽制しています。さらに米国は、中国の措置に対する“再報復”として、中国からの全ての輸入品への100%追加関税に加えて、ソフトウェアに対する輸出規制を導入する方針も発表しています。

本ニュースレターでは、米国による関連事業体ルールの導入(下記Ⅱ.)と、これに対する中国のレアアース輸出規制強化等の動き(下記Ⅲ.)を速報ベースで解説します。
 

Ⅱ. 米国輸出規制の最新動向─関連事業体ルールの導入

米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月29日、エンティティ・リストに基づく規制の大幅拡大を含む「関連事業体ルール」を導入する暫定最終規則(Interim Final Rule。以下「IFR」といいます。)を公表し、即日施行しました1

1. エンティティ・リストに基づく規制の概要

EARは、米国における軍事転用可能(デュアルユース)品目等の輸出管理(安全保障貿易管理)に関する行政規則です。EARに基づく輸出規制は、日本など主要国における輸出管理と同様、①軍事転用リスクが特に高いハイスペックな品目をCCLと呼ばれる商務省の規制リストに基づいて規制するリスト規制と、②機微度の低い汎用的な品目を含め、仕向地・最終用途(エンドユース)・最終需要者(エンドユーザー)等に関する一定の要件が満たされた場合に適用される補完的規制に分かれます。ただし、日本などと異なるEARの大きな特徴として、米国原産品など一定の品目(「EAR対象品目(items subject to the EAR)」と呼ばれます。)については、米国からの輸出だけでなく、日本を含む外国から別の外国への再輸出や、外国国内における移転(国内移転)にも規制が及ぶこと(域外適用)が挙げられます。EAR対象品目には、①米国に物理的に所在する品目のほか、②米国原産品、③米国原産品の組込品(原則として組込比率25%超のもの)、④直接製品(米国原産技術・ソフトを用いて生産された一定の外国製品)──の4類型があります。

エンティティ・リストは、EARに基づく補完的規制(エンドユーザー規制)の一部をなすもので、米国が安全保障等の観点から懸念があると判断した団体のリストをいいます。このリストに掲載された外国企業については、汎用的な品目を含めてEAR対象品目を輸出・再輸出・国内移転する際にBISからの許可取得が必要とされ、事実上の「禁輸リスト」と呼ばれることもあります。米国は、ここ5、6年の間、先端技術分野における中国の台頭への懸念も背景に、中国の大手通信機器メーカーや半導体メーカーなどをエンティティ・リストに次々に追加し、中国に対する締め付けを強化してきました。一方で、規制対象はリストに直接掲載された企業に限定され、子会社や関連会社など、法人格の異なる団体については対象外とされていました。
 

2. 関連事業体ルールに基づく“禁輸措置”の大幅拡大

今回のIFRによって導入された「関連事業体ルール」の下では、エンティティ・リスト掲載企業に加え、同リスト掲載企業(1社又は複数社)により直接又は間接に50%以上所有される事業体(子会社やグループ会社)についても、エンティティ・リスト掲載企業と同様の規制がなされることとなりました(改正後のEAR §744.11(a)(1))。このほか、関連事業体ルールに基づいてエンティティ・リスト掲載企業と同様の扱いとなるリスト非掲載企業により直接又は間接に50%以上所有される事業体にも規制が及びます。すなわち、例えばエンティティ・リスト掲載企業のA社が50%以上直接所有するエンティティ・リスト非掲載企業のB社と、B社が50%間接的に所有するC社がいる場合、関連事業体ルールにより、B社のみならずC社もエンティティ・リスト掲載企業と同様の扱いになります。

関連事業体ルールに基づく「50%ルール」は、エンティティ・リストのみならず、EARの軍事エンドユーザーリスト(Military End-User List)及びOFAC公表の資産凍結対象者のリストであるSDNリスト(Specially Designated Nationals and Blocked Persons List)掲載企業に対するエンドユーザー規制にも拡張されます。すなわち、これらのリスト掲載企業により直接又は間接に50%以上所有される事業体についても、各リスト掲載企業と同様の規制が及びます(EAR §744.8(a)(2)、§744.21(a)(3))。ある事業体の所有者にエンティティ・リスト掲載企業、軍事エンドユーザーリスト掲載者、SDNリスト掲載企業が混在している場合、それぞれのリスト掲載者の所有比率をすべて合算して50%以上になる場合には関連事業体ルールによる規制対象となり、当該事業体には、これらのリストに基づく規制の中でも「最も厳格なルール(the rule of most restrictiveness)」が適用されます(BISのFAQ2Q44参照)。

さらに、関連事業体ルールは、EARに基づく直接製品規制(FDPR)にも適用されます。従前のFDPRでは、エンティティ・リスト上で脚注1、3、4又は5が付された事業体との関係では、米国原産品や組込品のほか、一定の米国原産技術又はソフトを用いて外国で製造された幅広い製品がEAR適用対象とされ、輸出・再輸出・国内移転に際してBISの許可が必要とされていました。今回の改正により、これら脚注付きエンティティにより直接又は間接に50%以上所有されるリスト非掲載の関係会社にも、当該脚注に対応する直接製品規制が及ぶことになりました(EAR §734.9(e)、(g))。なお、複数所有者による所有比率が合算して50%以上となる場合において、これら所有者のうち1社のみが脚注付きFDPRの対象となる場合であっても、上述した「最も厳格なルール」の考え方に基づき、被所有企業に対して当該FDPRが適用されます(EAR §734.9(e))。
 

3. 実務への影響

現在、エンティティ・リスト及びMEUリストには合計3,500を超える企業・団体が掲載されており、SDNリストを含めるとさらに多数の企業・団体が掲載されています。Affiliates Ruleの導入によりEARに基づく“禁輸措置”の対象企業数は飛躍的に増加し、日本企業の海外顧客が新たに規制対象となる例も少なくないと考えられます。

前述のとおり、Affiliates Ruleでは、直接の所有者(株主)だけでなく、間接的な所有者がエンティティ・リスト等に掲載されている場合にも規制が及びます。また、今般のIFRで追加された「Red Flag 29」によれば、輸出者等が、取引先企業の直接又は間接の所有者の中に1社でもリスト掲載企業が含まれていることを知った場合には、その所有比率を可能な限り特定する積極的義務を負い、所有比率が確認できない場合には、許可例外に該当しない限り、BISからの許可を得なければ輸出・再輸出・国内移転ができないとされています(EAR Part 732, Supplement No. 3、前掲FAQ Q41)。さらに、取引後にAffiliates Ruleの適用対象であることが判明した場合には、違反が生じることを知りながら継続したとみなされ、その結果重いペナルティの対象になる可能性もあります(EAR §764.2(e)、§736.2(b)(10)、前掲FAQ Q41、Q42参照)。

これらを踏まえると、企業としては、取引先の外国企業について、直接・間接の株主のチェックを含む十分なデュー・ディリジェンスを尽くすことが求められます。どこまで注意を尽くすべきかについて実務上の基準は確立されていませんが、例えばスクリーニングツールを利用することにより確認を一定程度自動化する(前掲FAQ Q47参照)、取引先から株主構成に関する資料やAffiliates Rule対象でないことの誓約書又は表明保証を取得するといった対応が出発点になると考えられます。

 

Ⅲ. 中国輸出規制の最新動向─レアアース輸出規制の強化等

1. レアアース輸出規制等の大幅強化

(1)レアアース関連技術の全面規制
中国商務部は、10月9日に、2025第62号公告(以下「62号公告」といいます。)を公布、施行しました。62号公告では、輸出事業者が下記品目を輸出する際に、輸出許可を取得することが義務付けられました(1条1項)。

① レアアースの採掘、精錬分離、金属精錬、磁性材料3生産、レアアース二次資源回収利用(以下「レアアース生産等」といいます。)の関連技術及び媒体4(1E902.a)、
② レアアース生産等のラインの組立て、調整、メインテナンス、修理、アップグレード等の技術(1E902.b)

また、輸出規制品目以外の貨物、技術又はサービスについても、輸出事業者は、それが国外のレアアース生産等活動に利用される又は実質的に寄与することを知っている場合、キャッチオール規制5に基づき、商務部による輸出許可の取得が要求されることになりました(1条2項)。

これまで、中国では、「技術輸出入管理条例」(輸出管理規制法に基づく輸出規制とは別枠の規制となります。)の付属書である「輸出禁止・輸出制限技術目録」によって、レアアース抽出分離、精錬、レアアース金属及び合金の生産技術及び一部のレアアース化合物、磁性材料の生産技術が輸出禁止、又は輸出制限の対象技術として規定されていましたが、62号公告により、レアアースの採掘、精錬分離、金属精錬、磁性材料生産、二次資源回収利用を含むレアアース生産プロセスにおける一連の技術及びレアアース生産設備に関する技術が全面的に規制されることになりました。

62号公告は、輸出許可を申請する際の提出書類として、「管理規制対象技術移転・提供情報説明」(国外移転の場合)、及び「管理規制対象技術国内提供情報説明」(国内における外国人等への提供の場合)のフォーマットを別紙として公布しています。情報説明では、輸出事業者、エンドユーザー6、輸出予定の技術、輸出方法、エンドユースについて、当局に詳細な状況を説明する必要があります。

また、あらゆる組織及び個人による第62号公告に違反する行為の紹介、斡旋、代理、運輸、通関、第三者ECプラットフォーム、金融サービスの提供が禁止されています(5条)。理論上、中国国内の組織のみならず、国外の組織等によるこれらのサービスの提供も禁止されていると解釈されます。

(2)再輸出規制
中国商務部は、10月9日に、2025第61号公告(以下「61号公告」といいます。)を公布し、一部のレアアース品目について、国外組織及び個人(以下「国外輸出事業者」といいます。)による第三国への輸出に関する規制(再輸出規制)に関するルールを定めました。

具体的には、61号公告は、以下の品目について、国外輸出事業者が中国以外の第三国に対して輸出する際に、中国商務部による許可を取得する義務があると規定しています。

① 外国で生産された61号公告別紙1(以下「別紙1」といいます。)第2部分に列挙された製品(レアアース磁石材料及びレアアースターゲット材)であって、かつ、別紙1第1部分に列挙された中国原産のレアアース及びレアアース合金・化合物を0.1%(価格比率)以上含有、集成、もしくは混合するもの(1条1号)
② 中国原産のレアアース生産等技術を利用して国外で生産された別紙1に規定する規制品目(1条2号)、
③ 中国原産の別紙1に規定する規制品目(1条3号)7

中国では、もともと両用品目輸出管理規制条例49条に再輸出規制に関する原則的な規定が設けられていましたが、61号公告は、この再輸出規制の枠組みを、初めて具体的な運用に落とし込んだ例となります。上記①は、外国で生産された製品に中国原産品が含まれている場合に再輸出規制の対象とするもので、米国EARに基づく組込品の再輸出規制に類似する規制といえます。ただし、組込比率の閾値(いわゆるデミニミス基準)を、価格比率0.1%という低い値に設定していることが注目されます。また、②は、上記(1)に記載した62号公告で定められたレアアース生産等の関連技術により外国で生産された対象品目を規制対象とするものと考えられ、米国EARの直接製品規則を意識した規制と評価できます。

また、再輸出規制の実効性を担保するため、中国国内の輸出事業者が別紙1に規定する対象品目を輸出する際は、輸出先(国外の輸入者、エンドユーザー)に対して、62号公告別紙2項に規定する「コンプライアンス告知書」を発行し、再輸出する際には中国商務部から許可を取得する義務があることを明記しなければならないこととされています。

(3)半導体関連申請に対する“逐一審査”
上記のほか、61号公告4条では、輸出申請される品目の最終用途(エンドユース)が、14ナノメートル以下のロジック半導体又は256層以上のメモリチップの研究開発もしくは製造、又はこれらのプロセス半導体を製造するための生産装置・試験装置・材料の製造、又は潜在的に軍事用途を有する人工知能の研究開発である場合、輸出申請は“逐一審査”の対象となるとされています。“逐一審査”が具体的に何を指すかは61号公告では明確に定められていませんが、こうした“逐一審査”が実質的に審査の厳格化、審査期間の長期化につながる場合は、上記の半導体関連品目の供給に重大な影響を及ぼす可能性もあります。

(4)その他輸出規制品目追加
商務部は、61号公告、62号公告と同日の10月9日に、2025年55号56号57号58号公告も公布しており、以下の関連品目を輸出規制対象に追加されています。

公告輸出規制対象
55号超硬質材料関連品目8
56号レアアースの生産、加工設備及び補助原料等
57号一部中、重レアアース9の関連品目
58号リチウム電池及び人工黒鉛負極材の関連品目

2. 中国版関連事業体ルール」─管理制御対象者リスト及び注視リストの規制範囲の拡大

61号公告2条では、国外の軍事エンドユーザー10、管理制御対象者リスト11及び注視リスト12に掲載された輸入者及びエンドユーザーに対する輸出許可申請は、原則不許可とし、かつ、管理制御対象者リスト及び注視リストの掲載対象に関しては、その50%以上を支配する子会社、支店等の関連主体も含むという「50%ルール」が規定されました。本条は、上記Ⅱ.2.に記載した米国の「関連事業体ルール」を意識した改正と考えられます。61号公告では、「50%以上を支配する」について具体的にどのように判断するか明確な規定は置かれていませんが、いずれにしても、「輸出管理規制法」及び「両用品目輸出管理規制条例」で定める管理制御対象者リスト及び注視リストの掲載対象者に対する規制の範囲は拡大したといえます。

3. 米国の反応

トランプ大統領は、中国によるレアアース輸出規制の強化等を踏まえ、10月11日、中国からの全ての輸入品への100%追加関税に加えて、“あらゆるかつ全て”の必要不可欠なソフトウェア(any and all critical software)に対する輸出規制を11月1日より導入する方針を発表しました。トランプ大統領は、これらの措置は、中国が半導体製造や電気自動車の製造に不可欠なレアアースへの輸出規制を再び導入する計画を示したことへの対抗策である旨を明言しています。現在、中国産品に対しては違法薬物関税20%と相互関税10%の合計30%の追加関税が課されているところ、仮にこれが100%引き上げられた場合には合計130%の追加関税が課されることになります。

ただし、トランプ大統領は、10月末に韓国で中国の習近平国家主席と対談することを予定しており、対談の場で、米中の追加関税や輸出規制について何らかの議論や“ディール”がなされる可能性もあります。
 

IV. おわりに

米国と中国における輸出規制の新たな動向は、日本を含む世界中の企業のビジネスに重大な影響を及ぼすことが懸念されます。とりわけ注目すべき点として、これまでは、EARに基づく再輸出規制やエンティティ・リスト規制をはじめとして、米国が積極的に規制を導入し、中国側はどちらかというと“守り”に回るという構図が続いていたところ、直近の中国のレアアース輸出規制の強化、管理制御対象者リスト及び注視リストの規制範囲の拡大等は、今後は中国も“攻撃”側に回る可能性を示すものとも評価できます。日本企業にとっては、米・中双方の規制への対応を迫られることとなり、取引を行う際におけるサプライチェーン管理、クライアント管理の重要度と複雑さがより一層高まることが予想されます。

  1. Federal Register :: Expansion of End-User Controls To Cover Affiliates of Certain Listed Entities 
  2. entity-list-faqs.pdf。BIS公表のEARに関するFAQのうち、Q41~Q53がIFRに関する内容となります。
  3. サマリウムコバルト、ネオジム鉄ホウ素、セリウム磁石をいいます。
  4. 例えば、設計図面、工程仕様、パラメータ、加工プログラム、シミュレーションデータ等が含まれます。
  5. 輸出管理規制法12条及び両用品目輸出管理規制条例14条
  6. エンドユーザーの情報には、基本情況、出資構成、発展歴史、生産状況、主要クライアント及び事業の主要分野、技術情況、高級管理者及び実質的支配者の情況、重要な資質及び輸出許可の取得状況、知的財産権情況等が含まれます。輸出者と関連関係又は取引関係がある場合は、関連関係、投資関係、長期的な取引関係等の情況についても説明する必要があります。
  7. 1条1号及び1条2号2025年12月1日から施行し、1条3号については、即日施行されます。
  8. 人工ダイヤモンドの関連品目及び直流アークプラズマ噴射化学気相成長(DCPCVD)設備、工程技術
  9. ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)
  10. 軍事エンドユーザーについて、リストが公布されておらず、その範囲は明確ではありません。
  11. 輸出管理規制法18条に基づき作成されているリストです。①エンドユーザー又はエンドユースの管理要求に違反した者、②国の安全及び利益をおびやかすおそれがある者、③管理規制品目をテロリズムの目的に用いた者のいずれかに該当する輸入者又はエンドユーザーを管理制御対象リストに追加し、輸出を禁止、制限します。2025年1月以来、複数の米国企業、台湾企業が中国商務部により当該リストに追加されています。
  12. 両用品目輸出管理規制条例26条に基づき作成されるエンドユーザーリスト。輸入者、エンドユーザーが期限内において検査に協力し、証明資料を提出できないため、エンドユーザー、エンドユースを確認できない場合、かかる輸入者、エンドユーザーを注視リストに追加する。米国の未検証エンドユーザーリストに類似すると考えられます。本稿が作成された時点では、注視リストに掲載された例がありません。
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