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Administrative Law Newsletter

行政職員に対するカスハラ対応の最新動向

本ニュースレターでは、行政職員に対するカスタマーハラスメント対応の最新動向をテーマとして取り上げ、カスハラをめぐる背景事情、行政の対応例、実務対応、裁判例などについて紹介します。

Ⅰ. 背景事情

1. カスハラの社会問題化

カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)は、民間・行政を問わず、昨今、大きな社会問題となっています。

厚生労働省による民間企業を対象とした「職場のハラスメントに関する実態調査報告書1では、カスハラを過去3年間の内に受けた経験のある従業員は10.8%であったのに対し、総務省による「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書2では、カスハラを過去3年間の内に受けた経験のある職員は35.0%であるなど、行政職員に対するカスハラは深刻な問題であると考えられます。

各自治体においては専門家とも相談しながら、カスハラへの対応を進めていくことが望まれます。

2. 労働施策総合推進法改正及びカスハラの定義

2025年6月4日には、カスハラ対策を事業主に義務付ける法律(労働施策総合推進法等の一部を改正する法律。以下「労働施策総合推進法改正法」といいます。)が国会にて可決・成立しました3。この改正法は、2026年10月までに施行されることになっています4。これにより、地方公共団体を含む事業主においてカスハラ対応の義務化が行われることになりました5

カスハラの定義は、労働施策総合推進法改正法33条に以下のように規定されています。

  • 職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(顧客等言動)により当該労働者の就業環境が害されること


具体的なカスハラの対象となる行為については、指針で具体的に示される予定となっており、指針(案)の概要も公表されています6

3. カスハラが行政に与える影響

カスハラを行う住民等に行政職員が対応せざるを得ないことによる、行政サービスの質低下や、カスハラによる行政職員のストレス増大、それによる心的疾患を原因とする休職・退職など、行政職員に対するカスハラの影響は多岐に渡ります。

市役所、町村役場、一部事務組合などの地方自治体で働く職員のほか、福祉・医療に関わる民間労働者、臨時・非常勤等職員、公共交通労働者などの公共サービスに関連する組合が結集する労働組合である全日本自治団体労働組合(以下「自治労」といいます。)による「職場における迷惑行為、悪質クレームに関する調査」報告書では、カスハラを受けた職員の95.5%がストレスを、65.7%の職員は「強い」ストレスを感じていると回答し7、またカスハラを受けることにより、多くの職員が「出勤が憂鬱になった」、「仕事に集中できなくなった」、「眠れなくなった」と回答しています8。また、同調査では、カスハラを行う住民は「ほとんど同じ人」である場合が約半数であるとしており、実態として同じ人物から日常的に繰り返しカスハラを受けるケースが多く、窓口対応の職員への精神的な負担は非常に大きいといえます9

4. 民間企業と行政の対応可能策の違い

カスハラ問題への対応は、行政機関と民間企業で共通する部分もあれば、異なる部分もあります。例えば、カスハラが、傷害や名誉毀損などの刑事事件にまで至るような場合であれば、警察がカスハラを行った者を逮捕することができる点は同じです。一方で、異なる点としては、民間企業では契約自由の原則が認められていること(民法521条)から、カスハラを行う顧客に対しては最終的に出入り禁止を行ったり、既存顧客であれば契約解除を行い、顧客との関係を断ったりすることで従業員の保護を優先することができます。しかし、行政サービスの公共性という性質上の問題や、生活保護の申請、住民票の異動届など実際に自治体の庁舎に赴かなければ行えない事務もあることから、行政が民間企業と同様に「謝絶」の対応を行うことはできません。

自治労の調査によれば、行政へのカスハラが発生する原因の内、「不満やストレスのはけ口」に次いで多かった「公務サービスへの過剰な期待」の背景には「住民の権利意識の高まり」があるとされています10

Ⅱ. 法律、条例、要綱、規則、指針・方針レベルでの行政の対応

1. 国レベルでの法律制定等の対応

国レベルでの公務員を対象とするカスハラ対策に関する法律制定等の対応としては、民間・地方公共団体職員の双方を対象とするものとして労働施策総合推進法及び厚労省による指針の制定、地方公共団体職員を対象とした総務省による通知の発出、国家公務員を対象とする人事院の規則があります。以下、順次説明します。

第一に、労働施策総合推進法は、前記のとおり、労働施策総合推進法改正法により、本年10月1日を施行日予定として、地方公共団体を含む事業主に対してカスハラを防止する措置を義務付けることになりました。そして、令和7年11月7日には第3回「カスタマーハラスメントの防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」(厚生労働省)が開催されており、労働施策総合推進法改正法に関する下位法令の検討状況が議題として挙げられています。第3回会議では、「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の骨子(案)」についても検討されています。

また、労働施策総合推進法は、既にパワハラを防止する措置を事業主に課していますが、同法に基づく指針11(パワハラ防止指針)には、既にカスハラ対策についての言及もあります。すなわち、同指針には、事業主が顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組として、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、被害者への配慮のための取組、顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組が例示されています。

第二に、令和7年の総務省の通知12では、地方公共団体におけるカスハラ対策として、①職員アンケートによる実態把握、②職種や現場等の違いに応じた対応マニュアル等の整備、③行政サービスの利用者・取引先に対する相談等の対応の向上が挙げられ、取組に当たっては下記でも紹介する厚労省の民間企業向けのマニュアルや総務省作成の地方公共団体の取組事例集13を参考にすべきことが記載されています。また一方で、①上記のとおり、民間企業では顧客を選別した対応が可能である一方、公務職場では全ての行政サービスの利用者に対して、公平・公正に行政サービスを提供することが必要であること、②行政サービスの利用者からの要求等は、行政サービスの利用者の生命・財産に関わる問題を背景とする場合も想定されること、③行政サービスの利用者の権利を不当に侵害しないよう慎重な対応が求められることにつき、留意点として指摘されています。

第三に、人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)4条1項及び2項では、パワー・ハラスメントの防止に関する各省各庁の長の責務が定められていますが、「人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について」(令和2年4月1日職職第141号)4条1項5号においては、各省各庁の責務として「職員が担当する行政サービスの利用者等からの言動で、当該行政サービスをめぐるそれまでの経緯やその場の状況により、その対応を打ち切りづらい中で行われるものであって、当該言動を受ける職員の属する省庁の業務の範囲や程度を明らかに超える要求をするものに関する苦情相談があった場合に、組織として対応し、その内容に応じて、迅速かつ適切に職員の救済を図ること。」が掲げられています。

2. 地方自治体における条例制定等の対応

(1)条例
民間・行政職員双方を対象としたカスハラ対策条例(東京都、北海道、群馬県、三重県桑名市など)に比べ、行政職員保護に特化したカスハラ対策条例は未だ数が少ないのが実情です。

もっとも、徳島県牟岐町では、行政サービスに焦点を絞った条例を制定しています。「牟岐町カスタマーハラスメント防止条例」、「牟岐町カスタマーハラスメント防止条例施行規則」が令和7年10月1日に施行されています。同条例では、「カスタマーハラスメント」を「行政サービス利用者等からのクレーム及び言動のうち、当該言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段及び態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段及び態様により、職員の就業環境が害されるものをいう。また、当該手段及び態様には電子メール並びに嫌がらせ、著しい迷惑行為及び広くこれらに類する行為も含まれる。」(2条2号)とし、カスハラを禁止する(4条)他、氏名公表を含むカスハラ事案に対する措置等(11条)等を定めています14

また、京都府綾部市においても、市職員に対するカスハラへの対策を定めた「綾部市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」が令和7年4月1日に施行されています15

(2)要綱、規則、指針・方針
その他、条例より下位規範である要綱、規則、指針・方針を定めることで対策を行う自治体もあります(別紙参照)。

Ⅲ. 実務対応例

1. 国が示した実務対応例

民間企業向けではありますが、厚生労働省は、令和4年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」やリーフレット、啓発ポスター、研修動画を作成しています。マニュアルやリーフレットには、学識経験者等の議論や顧客と接することが多い企業へのヒアリングを踏まえ、カスハラを想定した事前の準備、実際に起こった際の対応など、カスハラ対策の基本的な枠組みが記載されています。

2. 自治体におけるカスハラ対策マニュアルの策定

自治体レベルでは、カスハラへの対応策等を記載した「カスハラ対策マニュアル」を制定する自治体が増加しています。以下では、カスハラ対策マニュアルを制定している自治体の一部をご紹介します。また、自治労においても、マニュアル(「カスタマーハラスメントのない良好な職場をめざして(全日本自治団体労働組合)」)が作成されています。

 

新潟県新潟県カスタマーハラスメント対応マニュアル
→カスハラの定義、基本的な対応、各類型と対応例等を記載
札幌市広聴部門におけるカスタマーハラスメント対策マニュアル
→カスハラの定義、防止策(録音・ポスター掲示)、対応策、留意事項等を記載
姫路市カスタマーハラスメント防止に係る取組み | 姫路市
→カスハラの定義、カスハラが与える営業、具体的な対応方法、留意点等を記載
福岡県カスタマーハラスメント対策を実施します ~STOP‼ カスタマーハラスメント~ - 福岡県庁ホームページ
→カスタマーハラスメントの判断基準、判断までの流れ、警告や対応終了などの判断後の対応、4つの類型に分類した態様別の対応要領、対応上の留意点等を記載

3. 各自治体の具体的な対策取組例

その他の各自治体の取組については、上記のとおり総務省が「地方公共団体における各種ハラスメント対策に関する取組事例集」として紹介しているほか、各自治体がホームページ等で紹介しています。以下、総務省の上記事例集記載のものを中心に各自治体の取組について紹介します。

(1)名前の表記変更(仙台市、佐賀市、広島県竹原市、渋谷区など)
職員の名札への氏名記載は、名札から個人情報を検索されたり、SNSなどインターネット上に氏名が公表されたりするプライバシー侵害というカスハラを招来する危険性があります。そこで、名前の表記を漢字「姓名」からひらがな「姓のみ」への変更等の見直しを行う自治体が増えています。

(2)録音機能付電話機の導入(栃木県宇都宮市、長野県松本市、沖縄県うるま市、東京都、札幌市など)
行政サービスの向上、カスハラ防止を目的とし、電話機について、通話録音装置の設置を導入している自治体も増えています16

(3)防犯カメラの設置・増設(栃木県宇都宮市など)
窓口等の防犯カメラを増設している自治体もあります。

(4)対応フローやポスターの作成(札幌市、栃木県宇都宮市、兵庫県明石市、沖縄県うるま市など)
札幌市はカスハラ防止啓発ポスターを作成し、令和7年7月から札幌市本庁舎などでの掲示を開始しました17

(5)職員向け研修の実施(栃木県宇都宮市、兵庫県明石市、沖縄県うるま市、京都市下京区など)
職員向け研修の中には実践的なものも行われており、京都市下京区役所ではさすまたの使用方法や護身術を学ぶ職員向け防犯講習会が実施されています18

(6)アンケート・ヒアリングの実施(栃木県宇都宮市、長野県松本市、沖縄県うるま市など)
うるま市では令和5年頃から窓口でのカスハラ被害が顕著化したことからカスハラ対策を強化し、同年11月には庁内外19課の窓口対応職員に対してヒアリングを実施し、ヒアリングに基づく周知啓発・研修等が実施されています。

(7)警察OBの知見の活用・警察との連携(長野県松本市、兵庫県明石市、沖縄県うるま市など)
兵庫県明石市では、不当要求行為への対応における県警との連携を重視し、県警から出向者一名を不当要求に対応する対策室に受け入れるという対応を取っています。

(8)対策室(長野県松本市など)
長野県松本市では、令和7年4月から「カスタマーハラスメント対策室」を設置しています。同対策室には警察OBも配置し、専門的知見を得ながら課題解決を図ることとされています。なお、カスタマーハラスメント対策室長は職場全体を把握する観点から人事課長が兼務することになっています19

(9)共同宣言(長野県、長崎県市長会)
長野県では「長野県カスハラゼロ共同宣言~カスハラのない社会の実現へ~」が、長崎県市長会では「行政へのカスタマーハラスメントの対応に関する共同宣言」が行われ、カスハラ撲滅へ取り組むこと(長野県)や厳正かつ毅然とした対応を行うこと(長崎県市長会)が宣言されています。

4. 行政に求められる対応

以上のほか、組織としての地方公共団体においては、カスハラ対策マニュアルの作成及び周知、カスハラ対策室の設置、職員への実践的研修等を通した教育、カスハラ対策の事前検討及び実施が重要です。こうしたカスハラ対応に関する体制整備については、専門家からのサポートを受けることも一案です。

特に、被害防止や被害に対する民事・刑事の対応に関する法的手続を速やかに実施するには、専門家と緊密に連携のうえ打ち合わせておくことも重要と考えられます。

Ⅳ. 近時の裁判例・事例

以下では、行政職員に対するカスハラ行為が問題となった近時の裁判例や事例をご紹介します。

1. 大阪市面談強要行為等差止等請求事件

大阪市は、男性に対し、当該男性が、市に対して情報公開請求を多数回に渡り濫用的な態様で行ったり、不当な要求を繰り返したりして、大阪市の平穏に業務を遂行する権利を侵害しており、今後も同行為が繰り返されるおそれがあるとして、同権利に基づく面談強要行為等の差止め及び不法行為に基づく損害賠償等を求めた事例があります。裁判所は、差止めを認めるとともに、80万円の損害賠償請求を認容しました(大阪地裁平成28年6月15日判決判例時報2324号84頁)。

当該男性は、対象文書が数百枚に上る情報公開請求をゴールデンウィーク直前の平成21年4月30日に行ったり、質問文書(質問例:情報公開請求による公開情報に関する質問、公開文書への誤記の指摘、防犯パトロール中の職員がガムを噛んでいたことにつき当該職員の氏名、特定の職員の昼食弁当の中身にニンニクが入っていた理由、特定の職員がいつも長袖の服を着ている理由、特定の職員について退職や更迭要求)の送付を行ったりすることもありました。

また当該男性は、特定の職員に対し暴言を延々と1時間以上繰り返し吐いたり、平成24年4月3日から同年8月30日の間に総所要時間23時間となる合計95回(平均で週に2~3回、多い時には1日に連続して5~6回。)の架電を行ったりすることもありました。裁判所は、当該男性の行為は、頻度・態様から正当な権利行使として認められる限度を超えるものであり、市の資産の本来予定された利用を著しく害し、かつ、その業務に従事する者に受忍限度を超える困惑・不快を与え、その業務に及ぼす支障の程度が著しいもので、今後もこのような行為が繰り返される蓋然性が高いことから、上記一連の行為の差止めと、男性に80万円の損害賠償責任があることを認めました。

2. 船橋市庁舎内撮影禁止請求事件

船橋市庁舎において執拗な動画撮影などを行った男性に対し、市の許可がないことを条件に庁舎内における撮影を禁じた裁判例があります(千葉地裁令和2年6月25日判例地方自治466号13頁)。

当該男性は生活保護受給者であり、市職員の対応に不満を持ち、生活保護受給のために庁舎を訪れた際、庁舎内の様子の動画撮影を行い、動画配信サイトで市職員の様子などの配信等を行うようになりました。市職員は、当初、市の庁舎管理規則9条5号(面会の強要、座込み、練歩きその他公務の妨害となる行為の禁止)に基づき、動画撮影をしないように求めましたが、当該男性は応じず、建造物侵入罪で現行犯逮捕されています。

その後も被告男性による動画撮影が止まなかったことから、市の申立てにより、裁判所から動画撮影を禁じる内容の仮処分命令が発令され、さらに、訴訟に発展することとなりました。

裁判所は、当該男性の行為が、同市の「平穏に業務を遂行する権利」に対する違法な権利侵害に当たると判断し、同市の請求を認めました。

3. 福岡県警によるカスハラでの初の逮捕事例

福岡県では2023年、警察署に正当な理由なく居座り続けた男性が建造物不退去容疑で現行犯逮捕されています。逮捕された男性は逮捕当日午後1時頃に、「自分の訴えを刑事に聞いてほしい」と来署した後、大声でわめいたり、受理できない要求をしつこく繰り返したりしており、午後2時半から午後4時15分頃まで、署の刑事課取調室で、一方的な発言に終始し、警察署課長らから「このまま居座られても業務の妨害になっているので、お引き取りください」などと5回以上にわたって警告されたものの、退去しなかったとされています。

福岡県警は、2023年5月、警察組織として全国初のカスタマーハラスメント指針を定め運用しており、本件はこの運用に基づく対応をした上での初めての逮捕事例となりました20

Ⅴ. 今後の課題

上記のとおり、全国の自治体ではカスハラ対策として、様々な対応が行われている一方で、神奈川県総務局総務室による「県職員へのカスタマーハラスメントに関するアンケート調査結果」(令和6年9月)においては、職員からの要望として、「クレームを上席にあげるのは恥との考えから、こちらに非が無くても謝罪して何とか沈静化させてきたのが現場の実情であるため、カスハラ対策のためには、クレームが上がってくることを良しとする幹部職員の意識改革も必要になると考える。」、「暴言や、同じ内容の繰り返し、本来の相談を越えた長時間の電話対応などの場合は、こちらから電話を切断できるよう、県統一の基準を設けてほしい。」、「カスハラに該当するのか疑義があるような案件や対応方法に関して相談できる窓口の設置。」といった記載があります21

また、自治労の調査からは、職員がカスハラによって受ける負担は住民からの直接的な迷惑行為等だけでなく、人事評価基準及び人事評価への影響がわからない状況や職場での人間関係への影響等、複合的な要因から構成されていることに加え、自治体の職種によってもカスハラ行為の態様や発生の頻度が異なることがわかります22

各自治体においては、適切な行政サービスの維持やカスハラによる行政職員に対する悪影響の防止の観点からも、直接住民への対応を行う職員限りでの解決を試みるという旧態依然とした対応ではなく、他の自治体の取組も参考にしながら、組織として住民による迷惑行為をカスハラとして認定し、弁護士等の専門家への相談を行い、被害実態に応じた対策を行うことが求められます。その際には上記通知にも記載のとおり、行政サービス利用者への配慮を行うことも留意すべきと考えられます。

別紙

条例より下位規範である要綱、規則、指針・方針を定めることで対策を行う自治体の例は、次の表のとおりです。
 

  • 要綱
大阪市大阪市職員に対するカスタマーハラスメント対策基本方針運用要綱
新潟県新潟県カスタマーハラスメント対策要綱
小牧市小牧市職員のハラスメントの防止等に関する要綱
高鍋町高鍋町カスタマーハラスメントの予防及び対応に関する要綱

 

  • 規則
瀬戸市カスタマーハラスメント防止対策について | 瀬戸市(瀬戸市庁舎管理規則9条)
船橋市船橋市庁舎管理規則23(船橋市庁舎管理規則9条、10条) 
宇都宮市宇都宮市庁舎管理規則(宇都宮市庁舎管理規則7条7号、8号)
生駒市生駒市庁舎管理規則(生駒市庁舎管理規則15条)

 

  • 指針・方針
杉並区杉並区の不当要求行為、カスタマー・ハラスメント行為対応の基本方針|杉並区公式ホームページ
函館市函館市職員カスタマーハラスメント対策基本方針 | 函館市
佐賀県県庁におけるカスタマーハラスメント対策 / 佐賀県
みやま市カスタマーハラスメントに対する基本方針を策定しました|みやま市

  1. 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(2024)106頁
  2. 総務省「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書」(2025)103頁
  3. 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について
  4. 厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令案について【概要】」(令和7年12月10日)
  5. 各種ハラスメントに関する民間労働法は、地方公共団体にも原則適用されている一方、国家公務員については人事院規則で定められています(総務省 第1回 地方公務員の働き方に関する分科会 資料4「地方公務員のハラスメント対策について」(令和6年9月30日))(総務省自治行政局公務員部 第1回 カスタマーハラスメントの防止対策の推進に係る関係省庁連携会議 資料3-8「地方公共団体におけるカスタマーハラスメント対策について」(令和7年1月17日))。
  6. 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)について【概要】」(令和7年12月10日)
  7. 全日本自治団体労働組合「『職場における迷惑行為、悪質クレームに関する調査』報告書」(令和2年10月実施)61頁
  8. 全日本自治団体労働組合・前掲注7)63頁
  9. 全日本自治団体労働組合・前掲注7)47頁
  10. 全日本自治団体労働組合・前掲注7)44頁
  11. 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第三十条の二第三項の規定に基づき、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号)
  12. 総務省自治行政局「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査結果等を踏まえた各種ハラスメント対策の効果的かつ積極的な取組について(令和7年4月25日総行女第20号)
  13. 総務省「地方公共団体における各種ハラスメント対策に関する取組事例集
  14. 一般財団法人地方自治研究機構「カスタマーハラスメントに関する条例 | 法制執務支援 | 条例の動き | RILG 一般財団法人 地方自治研究機構」(令和7年11月29日)
  15. 綾部市「綾部市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例を制定しました
  16. 東京都「通話録音装置の設置について|2025年度|東京都」(令和7年7月14日)
  17. 札幌市「カスタマーハラスメント防止啓発の取り組み/札幌市
  18. 京都市「下京区役所職員向け防犯講習会の実施~さすまたの使用方法や護身術を学ぶ~」(令和7年9月29日)
  19. 松本市「市長記者会見 令和7年(2025)1月16日 - 松本市ホームページ」(令和7年1月16日)
  20. 厚生労働省「職場におけるハラスメント対策シンポジウム」内・齊木茂人「企業のカスタマーハラスメント対策について」(2023年12月5日)22頁、朝日新聞デジタル「署に2時間近く居座り続けた疑い 福岡県警、カスハラ対策で初の逮捕 [福岡県]:朝日新聞」(令和5年6月15日)、読売新聞オンライン「福岡県警がカスハラ対策に本腰、長時間要求や暴言は対応打ち切りも…「苦慮」経験8割:地域ニュース : 読売新聞」(令和5年5月25日)
  21. 神奈川県総務局総務室「県職員へのカスタマーハラスメントに関するアンケート調査結果」(令和6年9月)12頁
  22. 全日本自治団体労働組合・前掲注7)30頁、52~53頁、58~59頁、山谷清秀「自治体のカスハラ対策の目的と手段」(大阪経大論集・第76巻第1号・2025年5月)135頁
  23. 船橋市庁舎管理規則、宇都宮市庁舎管理規則については各例規集にて参照が可能です(船橋市例規集宇都宮市例規集)。
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