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Capital Markets Newsletter

SpaceXのIPO及び国内オファリング(POWL)

Ⅰ. はじめに

2026年6月12日(日本時間)に、Space Exploration Technologies Corp.(SpaceX)が米国Nasdaq及びNasdaq Texasに上場し、それに伴い総額約862億5,000万米ドル1の新規株式公開(IPO)が行われました。当事務所は、SpaceXのIPOの一環として実施された、日本におけるPOWL(Public Offering Without Listing:上場を伴わない公募)について、SpaceXの日本法カウンセルを務めました。

本件は、史上最大規模のIPOであるとともに、日本を含む世界6つの法域の個人投資家が参加可能となった、初の本格的なグローバル・リテール・オファリングとなりました。また、本件は、日本における外国発行体によるPOWLとして10年以上ぶり、さらに米国発行体によるPOWLとしては約20年ぶりの事例となります。

類似性の高い前例のない本件においては、国内POWLに関して数多くの新規性を伴う論点への対応が求められました。例えば、米国におけるマーケティング・プライシングを含む上場プロセスが我が国の一般的な実務と異なる中で、本件の国内POWLにおいては、日本の実務を形式的に適用することによって米国の実務に対する重大な支障が生じることとならないよう、日本での一般的な実務とは異なる開示方法について検討する必要がありました。当事務所は、SpaceXのIPOにおけるリードカウンセルを務めたGibson, Dunn & Crutcher LLPのHillary Holmes氏、Harrison Tucker氏及びAtma Kabad氏を中心とするチームと緊密に連携し、国内POWLを成功に導きました。

Ⅱ. 発行数・発行価格に関する決定プロセスに関する開示

以下、本件において特に検討を要した開示上の対応の一端をご紹介いたします。

米国におけるマーケティング・プライシングのプラクティスについて、我が国の一般的な実務が異なる点としては発行数・発行価格に関する決定プロセスが挙げられます。

米国においては、IPOにおける条件決定にあたって、募集価格及び募集・売出株数が、直近で提出されているS-1(米国法に基づく証券発行届出書)(Amendmentで訂正された内容を含む)に記載された仮条件レンジ等からどの程度逸脱してよいかについて、SECの諸規則やガイダンスによって以下のとおり規定されています。

ア.アップサイズとなる場合

  • 募集価格の増額には上限なし。
  • 但し、募集・売出株数の増加を伴う場合など、単なる募集価格の変更以外の理由でオファリングサイズが拡大する場合には、「仮条件レンジの上限価格×募集・売出株数(OA株数を含む)」の120%が上限。


イ.ダウンサイズとなる場合

  • 「仮条件レンジの下限価格×募集・売出株数(OA株数を除く)」から「仮条件レンジの上限価格×募集・売出株数(OA株数を除く)」の20%を差し引いた額まで。
  • 但し、S-1の記載内容に重大な虚偽や記載すべき事項の欠缺が生じない範囲であれば、20%を超えるダウンサイズが認められる場合もある。


本件においては、以上に基づく米国のプラクティスをふまえつつ、我が国の法令においても許容されるプライシングの方法が検討されました。そのような検討の結果、本件の有価証券届出書においては以下の記載がなされています2

(1)    発行数について

<(1)【新規発行株式】(注2)>
米国市場の現行の慣行に従って上限及び下限の制限なく、本書提出時における見込数のレンジは変更されることがあります。国内募集における発行数は、本オファリングにおいて行われるブックビルディングの結果を考慮して、条件決定日に、発行価額の決定と合わせて、上記見込数のレンジ(中略)の下限の80%(中略)以上、当該レンジの上限の120%(中略)以下の範囲で決定される可能性があります。


(2)    発行価格について

<(2)【募集の方法及び条件】②【募集の条件】(注1)>
                                                        (中略)
以下のとおり、本オファリングにおける条件決定方法と日本における一般的な上場前の募集の条件決定方法は異なることにもご留意ください。
まず、(i)日本における一般的な上場前の募集とは異なり、本オファリングにおいては、上記のとおり、当初仮条件は条件決定日以前に変更される可能性があります。
また、(ii)本オファリングの条件決定において、発行価格は、米国市場の現行の慣行に従い、当初仮条件又は修正後仮条件より高い価格又は低い価格で決定されることがあります。そのため、発行価格は条件決定日に先立つ事前の通知又は本書の訂正を行うことなく、当初仮条件又は修正後仮条件とは異なる価格に決定されることがあります。ただし、上記(ii)の場合においても、発行価格は、最小で、決定された発行価格に本オファリングの対象となる株式数(中略)を乗じた値が、(a)当初仮条件(中略)に当初仮条件(中略)とあわせて示された対象株式数を乗じた値から、(b)当初仮条件(中略)に当初仮条件(中略)とあわせて示された対象株式数を乗じた値の20%を差し引いた額の範囲となるような金額とします(中略)。また、条件決定時の発行価格の増額については、決定された本オファリングにおける対象株式数が当初仮条件(中略)とあわせて示された対象株式数から増加しない限り、発行価格は、当初仮条件(中略)の金額に対して、その金額の2倍の金額の増額を上限とする(中略)ものの、決定された本オファリングにおける対象株式数の合計数が当初仮条件(中略)とあわせて示された対象株式数から増加する場合には、発行価格は、最大で、決定された発行価格に増加後の対象株式数を乗じた値が、当初仮条件に当初仮条件とあわせて示された対象株式数を乗じた値の120%の範囲となるような金額とします(中略)。
                                                        (後略)


(3)    発行価額の総額

<(2)【募集の方法及び条件】①【募集の方法】(注3)>
(前略)なお、国内募集における発行価額の総額は条件決定日に決定する予定ですが、(中略)本オファリングの条件決定において、発行価格は、米国市場の現行の慣行に従い、当初仮条件又は修正後仮条件と異なる価格で決定されることがあり(例えば、本オファリングにおける条件決定時の発行価格の増額については、決定された本オファリングにおける対象株式数が当初仮条件(中略)とあわせて示された対象株式数から増加しない限り、発行価格は、当初仮条件(中略)の金額に対して、その金額の2倍の金額の増額が上限となります。)、その場合には、国内募集における発行価額の総額は本書に記載した国内募集における発行価額の範囲の見込額と大幅に異なる可能性があります。

Ⅲ. 結び

本件は日本市場の厚みを世界的にアピールするまたとない機会となり、AIやテクノロジー分野を中心に、旺盛な資金需要を要する海外企業による国内POWLの可能性への注目は高まりつつあるものと思われます。当事務所においても、健全な実務が形成されるよう貢献してまいりたいと考えております。

  1. 当該金額は、オーバーアロットメントによる発行分を含みます。
  2. SpaceX提出の2026年6月5日付有価証券届出書の訂正届出書 第一部【証券情報】第1【募集要項】1【株式の募集】より抜粋

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