Ⅰ. 入管法及び育成就労法の改正による中間処理業における育成就労制度の導入
1. 廃棄物処理業界における「育成就労」「特定技能」制度を利用した外国人材の受け入れ
産業廃棄物処理業界においては、人手不足が深刻化しており、特に若年層の確保が困難な状況が長期化している。こうした中、2024年の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)及び技能実習法の一部改正により、技能実習法は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(以下「育成就労法」という。)に改められ、技能実習制度に代わる「育成就労制度」が創設された。その上で、「資源循環」分野においては、破砕、選別、焼却などの廃棄物処理・再資源化作業などの「中間処理」業務が、「育成就労」及び「特定技能」制度による外国人材の受け入れ対象分野に位置付けられた(収集運搬及び最終処分は受け入れ対象分野から除外されていることに留意が必要である1。)。2027年4月1日の育成就労制度の施行に先立ち、2026年4月15日から監理支援機関の許可に関する施行日前申請の受け付けが外国人技能実習機構のウェブサイトにて開始されており、同年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請の受け付けが同ウェブサイトにて開始されることが予定されている。人手不足が深刻化している産業廃棄物処理業界において、「育成就労」「特定技能」制度を利用した外国人材の受け入れは、人材不足を解消するための一つの選択肢となるものであり、その活用が期待されるところである。
もっとも、廃棄物処理業界における「育成就労」「特定技能」制度を利用した外国人材の受け入れにあたっては、外国人受入れには、他業種にはない固有のリスクがある。すなわち、入管法違反(不法就労助長罪等)について役員等が拘禁刑(旧懲役・禁錮刑)に処せられた場合には、廃棄物処理法上の欠格事由(同法7条5項4号ハ)に該当し、業の許可の必要的取消し(同法7条の4、14条の3の2)に直結し得る。2024年6月に公布された改正入管法(令和6年法律60号)により、不法就労助長罪の法定刑が「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金」(併科可。法人については、両罰規定(入管法76条の2)。)に厳罰化されることになっており(令和7年政令340号により令和9年4月1日施行)、拘禁刑の選択可能性が高まっていることもあり、廃棄物処理法上の欠格事由に該当することのないように留意する必要がある。
本ジャーナルでは、「育成就労」「特定技能」の制度概要を説明の上、産業廃棄物処理業界で同制度を利用する上での留意点等について解説する。
2. 従来の制約―現場作業は身分系在留資格・留学生等に限られていた
改正前の制度のもとでは、産業廃棄物処理業界の現場作業に従事できる外国人は、第一に、永住者・日本人配偶者等の「身分系在留資格」保有者、第二に、資格外活動許可を受けた留学生等(ただし、週28時間以内等の制限あり)に限られていた。
そして、一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」は、大学・専修学校等で習得した専門知識又は一定の実務経験を前提とする在留資格であり、廃棄物処理現場の単純作業への従事は原則として認められていなかった。また、従前の技能実習制度も、職種・作業の指定が複雑で活用しにくいケースが多くあった。
その結果、産業廃棄物処理業界全体として、外国人材を登用できず、人材不足が深刻化する状況となっていた。
3. 新制度による変化―育成就労制度の創設と特定技能制度の拡充
このような背景のもと、2024年改正により創設された「育成就労」と、拡充される「特定技能」は、産業廃棄物処理業界についても「資源循環」分野として、破砕、選別、焼却などの廃棄物処理・再資源化作業などの「中間処理業務」を外国人材の受入れ対象とする。「特定技能」制度については、従前、資源循環分野は対象外とされていたが、2026年1月23日の閣議決定により、「物流倉庫」「資源循環(廃棄物処理)」「リネンサプライ」の3分野が追加され(これにより特定技能の対象分野は16分野から19分野に拡大)、その受け入れ対象に追加された。
「育成就労」と「特定技能」の制度全体としては、「育成就労→特定技能1号→特定技能2号」の三段階キャリアパスが設計されているが、「資源循環」分野においては、「育成就労」と「特定技能1号」のみが認められている。育成就労から特定技能1号への移行にあたっては、より高い技能水準及び日本語能力水準が求められる。以下、制度の概要を説明する。
(1)「育成就労」と「特定技能」の制度概要
育成就労制度は、日本国内で外国人材を計画的に育成し、人手不足分野へ定着させることを目的とした新制度である。育成就労では、原則3年間の就労を通じて、特定技能1号水準の技能と日本語能力を身につけることが求められる。いわば、育成型の在留資格である。また、一定の要件を満たした場合には転職も認められ、監理支援体制や日本語教育の強化など、労働者保護が強化されている点が特徴である。
他方で、特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野において、即戦力として働く外国人材を受け入れるための在留資格である。一定の技能水準と日本語能力を有することが要件とされており、採用時点で業務に従事できる即戦力人材であることが前提となっている。特定技能には1号と2号があり、特定技能1号では在留期間の更新は認められるものの通算5年が上限とされ、家族の帯同も原則として認められないが、より高度な技能が求められる特定技能2号へ移行すれば、在留期間の更新回数に制限がなくなり、家族帯同も認められるなど、安定した長期就労が可能となる。特定技能制度は、育成就労を修了した人材や試験に合格した外国人材が、日本で長期的に働くためのゴールとなる制度であり、今後の外国人雇用の中心を担う在留資格といえる。
表形式で整理すると、以下のとおりである。
| 育成就労制度 | 特定技能制度 | |
| 概要 | 特定技能への移行を前提とした育成制度 | 即戦力外国人材の受け入れ |
| 制度の目的 | 人材育成・人材確保 | 人手不足分野での就労者確保 |
| 在留資格の種類 | 育成就労(1種類) | 特定技能1号・2号 |
| 在留期間 | 原則3年 (特定技能1号試験に不合格の場合、再受験のため、最長1年の範囲内で、一定の在留継続が認められる方針) | 1号:通算5年 2号:在留期間の更新回数に上限なし |
| 日本語能力 | CEFRのA1相当、JLPTのN5相当以上 (日常的な挨拶や、ゆっくり話された簡単な会話の理解ができる程度の日本語能力) | 1号:CEFRのA2相当、JLPTのN4相当以上 (簡単な買い物や、家族・近所に関する基本的な話ができる程度の日本語能力) 2号:試験は不要(ただし、漁業分野及び外食業分野ではJLPTのN3以上の合格が必要) |
| 転籍(転職) | 一定期間経過後、要件を満たせば同一分野内で可能 | 同一分野内で可能 |
| 家族帯同 | 不可 | 1号:不可2 2号:可 |
| 支援・監督機関 | 監理支援機関(新設) | 登録支援機関 |
| キャリアパス | 育成就労修了後、試験合格により特定技能1号へ移行 | 特定技能1号取得後、特定技能2号評価試験又は技能検定1級の合格、及び、所定の実務経験が認められれば特定技能2号に移行し、長期就労が可能(漁業分野及び外食業分野ではJLPT N3以上の合格も必要) |
育成就労から特定技能1号への移行にあたっては、技能試験(技能検定試験3級等又は特定技能1号評価試験)及び日本語能力試験(CEFRのA2相当、JLPTのN4相当)の合格が要件となる(現行の技能実習制度においては、技能実習2号良好修了者は試験が免除されるが、育成就労制度においてはこのような免除制度はない。)。また、育成就労の途中であっても、上記要件を満たし、かつ、現に在籍している育成就労の受入れ機関における就労期間が一定期間を超えている場合には、特定技能1号へ移行が認められる(出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(以下「Q&A」という。)・Q65)。
実務上、特に留意すべきは、特定技能1号への移行に必要な試験に不合格となった場合の取扱いである。この場合、育成就労の原則3年の在留期間を経過した後であっても、再受験のため、最長1年の範囲内で、一定の在留継続が認められる方針とされている(Q&A・Q13)。すなわち、育成就労期間3年+再受験期間1年の最長4年間、日本に在留しつつ、特定技能1号への移行を試みる機会が確保されている。
(2)「資源循環」分野における「育成就労」「特定技能」の概要
ア 上記のとおり、「資源循環」分野においては、破砕、選別、焼却などの廃棄物処理・再資源化作業などの「中間処理」業務が外国人材の受け入れ対象分野に位置付けられた。しかし、「収集運搬」業務及び「最終処分」業務は受け入れ対象分野から除外されている。
また、「特定技能2号」については、在留期間の上限がなく、要件を満たせば配偶者及び子の家族帯同(「家族滞在」の在留資格)が認められるが、現時点で、「資源循環」分野については、特定技能2号の対象とはされていない。もっとも、過去には、閣議決定により、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(分野別運用方針)の変更が行われ、特定技能2号の対象分野が拡大された例もある。資源循環分野の特定技能2号への拡張可能性は、政府における制度見直しの動向次第であり、今後の検討状況を、注視する必要がある。
このように「資源循環分野」では、「育成就労」と「特定技能1号」のみが外国人材の受け入れ対象となっていることから、資源循環分野で受け入れた外国人材は、育成就労(原則3年)+特定技能1号(通算5年)の合計8年間が、日本における就労可能期間の事実上の上限となる。8年経過後の継続的な就労を確保するためには、「資源循環」分野が「特定技能2号」の対象分野とされていない現在、身分系在留資格(永住者・日本人配偶者等)の取得可能性や、要件を満たす場合における他の専門・技術系在留資格(「技術・人文知識・国際業務」等)への変更可能性を検討することが必要となる。いずれにしても、「育成就労」「特定技能1号」を用いた長期的な外国人材定着戦略の設計にあたっては、この8年の在留期間制限が、廃棄物処理事業者にとって極めて重要な制約条件となる。
イ なお、「特定技能1号」については、原則として家族帯同が認められておらず、長期定着のキャリアパスを設計するにあたっての課題となっている。
もっとも、例外として、日本で「特定技能1号」として在留する者同士の間に生まれた子どもや、「留学」から「特定技能1号」に在留資格を変更する際、既に「家族滞在」の在留資格で本邦に在留している配偶者や子どもについては、特に人道上の配慮が必要であるとして、「特定活動」3としての在留資格への変更が認められ、家族帯同が認められる場合がある。「資源循環」分野においても、特定技能1号であっても家族帯同が例外的に認められる場合があることを念頭に置いておくことは、登用した外国人材の長期定着のキャリアパスを設計するにあたり重要である。ただし、この場合でも、本国に一時帰国して出産する、いわゆる「里帰り出産」の場合には、このような取扱いが認められない運用となっていることには留意が必要である(Q&A・Q9)。
ウ 「育成就労」「特定技能」制度の施行スケジュールについてであるが、冒頭に記載したとおり、2027年4月1日の育成就労制度の施行に先立ち、2026年4月15日から監理支援機関の許可に関する施行日前申請の受け付けが外国人技能実習機構のウェブサイトにて開始されており、同年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請の受け付けが同ウェブサイトにて開始されることが予定されている。
受入れを検討する事業者においては、本格施行(2027年4月)までの残期間において、①受入れ目的・規模・職種の整理、②監理支援機関・登録支援機関の選定、③社内体制(在留資格管理、安全教育、生活支援等)の整備、④業界協議会への加入準備、⑤社内コンプライアンス・労務体制の見直しを完了させ、2027年4月以降の本格運用に備えることが、肝要である。
4. 受入要件と実務上のポイント
「育成就労」「特定技能」制度を活用して外国人材の登用を検討する廃棄物処理事業者においては、外国人材を受け入れるにあたっての要件を満たしているかを事前に確認する必要がある。以下、受入要件とその実務上のポイントについて、要点を絞って整理する。
(1)業務区分の限定(中間処理に限る)と協議会加入要件
「育成就労」「特定技能」制度を用いて「資源循環」分野において外国人材を受け入れるには、当然のことながら、受け入れ対象分野である「中間処理」業務に関する許可、すなわち、廃棄物処理法7条6項に基づく一般廃棄物処分業の許可又は同法14条6項に基づく産業廃棄物処分業の許可(いずれも中間処理を業務範囲に含むものに限る。)を保有していることが必要である。
また、「育成就労」「特定技能」制度を用いた外国人材の受け入れ先においては、対象は以下の事業者に限定されている(分野別運用方針・別紙19の別添(第二2及び第三4関係))
| 1. 優良認定一般廃棄物処分業者、優良認定産廃処分業者 2. 再生利用認定業者 3. 広域的処理認定業者等 4. 無害化処理認定業者 5. 容器包装リサイクル法に基づく認定特定事業者等 6. 家電リサイクル法に基づくリサイクル業者等 7. 小型家電リサイクル法に基づく認定事業者等 8. プラスチック資源循環促進法に基づき、市町村から委託を受けてプラスチックの「一括回収」された資源物を再商品化する事業を行う事業者 9. プラスチック資源循環促進法に基づく再商品化事業者等 10. プラスチック資源循環促進法に基づく認定自主回収・再資源化事業者等 11. プラスチック資源循環促進法に基づく認定再資源化事業者 12. 資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律に基づく認定高度再資源化事業者 |
また、特定技能制度では、業界協議会(資源循環分野特定技能・育成就労協議会(仮称))4への加入が義務付けられており、廃棄物処理分野においても、環境省が関与する協議会が設置される予定である。今後設置される協議会において、受入れ機関の適正性確認や運用上の基準・様式等が整備されることが想定されるため、受入れ事業者は、協議会が定める手続・基準に従う必要が生じる点に留意が必要である。さらに、受入れ企業は、外国人ごとの育成計画(技能・日本語支援・目標水準)を策定・提出する義務、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入、労基法・労働安全衛生法等の労働関係法令の遵守等が受入れ条件として求められる。
(2)職種外作業の常態化の防止
受入れ認定を受けた業務区分以外の作業に常態的に従事させることは、在留資格の活動外就労として、不法就労に該当し得る。「たまに手伝わせる程度」であっても、頻度・時間・業務上の位置付けに照らして、常態化と判断されれば違反となる。
資源循環分野の場合、特に問題となりやすい場面として、①中間処理場内における収集運搬車両の運転・荷下ろし補助(収集運搬は受入れ対象外)、②最終処分場(埋立処分場)での作業補助(最終処分は受入れ対象外)、③系列会社の他業務(建設、解体作業、リサイクル品の販売・配送等)への応援等が挙げられる。これらは、いずれも、敷地内であっても、また短時間であっても、頻度・反復性によっては不法就労助長罪のリスクを生じさせる。
実務上は、(ⅰ)業務区分の整理と当該外国人材が従事可能な業務範囲・不可能な業務範囲のリスト化、(ⅱ)現場ごとの業務分担の文書化(日報・作業指示書での業務記録の徹底)、(ⅲ)現場責任者・班長クラスへの教育・研修、(ⅳ)人手不足時の応援要請ルールの整備(職種外作業の指示権限を現場任せにせず、本社・受入れ機関責任者の事前承認を要するルール)等を通じて、職種外作業の常態化を防止することが肝要である。
(3)入管法の遵守-外国人の雇用管理
ア 廃棄物処理法上の許可と入管法
産業廃棄物処理業界において外国人雇用管理が特に重要な理由は、入管法違反があった場合、廃棄物処理法上の許可取消事由に該当し得るため、事業継続性そのものに影響が生じるという点である。
廃棄物処理法においては、許可申請者(法人の場合は役員及び政令で定める使用人5を含む。)の欠格要件非該当を求め(同法14条5項2号、7条5項4号)、欠格事由該当に至った場合には、許可の必要的取消事由に該当する(同法14条の3の2、7条の4)。
この点、不法就労助長罪(入管法73条の2)の法定刑は、2024年6月に公布された改正入管法(令和6年法律60号)により「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金」(併科可。法人については、両罰規定(入管法76条の2)。)に厳罰化されることになっており(令和7年政令340号により令和9年4月1日施行)、万が一、廃棄物処理事業者の役員等が入管法違反により拘禁刑(執行猶予を含む。)に処せられた場合には、廃棄物処理法7条5項4号ハ所定の欠格事由(拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者)に該当し、許可の必要的取消事由に該当する(同法14条の3の2第1項1号)。また、入管法違反で罰金刑にとどまる場合であっても、その違反態様の悪質性等によっては廃棄物処理法7条5項4号チ(その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者)に該当するものと評価され、取消事由に該当する可能性もある。欠格事由該当に至った場合の許可取消しは、当該欠格事由該当に直接関係する許可のみならず、同一法人が他の都道府県・政令市で取得している産業廃棄物処分業許可等についても、同じ欠格事由を理由として取消しの対象となり得る。すなわち、ある自治体管内における一営業所での入管法違反を契機として、全国規模で同一法人の全許可が連鎖的に取り消される結果となりかねず、影響は甚大である。この連鎖は、他業種には見られない、産業廃棄物業界特有のリスクであり、外国人材の受け入れにあたり、留意が必要である。
都道府県の許可更新審査・立入検査において、外国人雇用管理体制や在留資格確認の状況が確認対象となる可能性もある。許可更新時に在留資格管理体制の不備が指摘された場合、許可更新が遅延するリスクや、更新を機に追加的な是正計画の提出を求められるリスクがある。廃棄物処理事業者としては、入管法・労働関係法令のコンプライアンスを、廃棄物処理法上の許可維持と一体的なものとして捉え、統合的な管理体制を構築することが、肝要である。
イ 入管法遵守のための予防的対応
上記アのリスクをヘッジするための予防的対応としては、実務上、以下のような対応が講じられていることが多い。不法就労助長罪は、雇用主側に「過失がある」場合にも成立し得るため(入管法73条の2第2項)、確認義務を尽くしたことの記録化(チェックリスト・スクリーン保存等)が、実務上の鍵となる。
| ① | 外国人雇用管理の社内責任者の設置 |
| ② | 在留資格・就労資格の定期的な確認体制の確立。確認は、採用時のみならず、在留期間更新時、転籍時、退職時に加え、少なくとも半期ごとに行うことが望ましい。出入国在留管理庁が無償で提供する「在留カード等読取アプリケーション」によるICチップ照合(同アプリには、令和7年11月14日以降、在留カード等番号失効情報照会機能が追加されている。)の活用が、不法就労助長罪における「過失」(入管法73条の2第2項)の不存在を基礎付ける実務上の防御として、強く推奨されている。育成就労外国人については、加えて、監理支援機関による月次の在留状況確認と連携することが望ましい。確認の都度、確認年月日・確認者氏名・照合結果のスクリーンショット又はログを保存することが、過失の不存在を立証する上で、極めて重要である。 |
| ③ | 不法就労助長罪のリスクが高い場面(採用、契約更新、転籍、退職時等)における手続フローの整備(在留期間満了日のリマインダーシステムの導入(満了3か月前・1か月前・2週間前のアラート等)が、特に有効である。) |
| ④ | 監理支援機関・人材紹介会社・派遣元等の取引先における外国人雇用管理状況の事前確認 |
| ⑤ | 内部通報制度を通じた早期問題発見の仕組み |
| ⑥ | 役員・経営層に対する定期的な研修等 |
(4)外国人材の安全衛生の確保
外国人労働者を受け入れる事業者には、業務時間の10分の1相当の安全教育(行政指針)が、求められる。これは、日本人への義務水準を上回るものである。産業廃棄物処理施設では、アスベスト含有廃棄物・特定化学物質・重金属含有廃棄物等の有害廃棄物を取り扱う場合があり、入国時・雇入れ時には、母国語での説明が必要となる。石綿障害予防規則・特定化学物質障害予防規則に基づく特別教育も、母国語版テキスト又は通訳を介して実施し、実施記録(通訳者名・使用言語付記)の保管が、義務付けられる。
実務上の対応としては、①外国語版安全教育テキストの整備(厚生労働省・業界団体が作成する外国語教材の活用6)、②外国語対応の安全ルールポスター・ヒヤリハット報告書の施設内整備、③外国語対応可能な安全担当者又は通訳者の配置・外部委託、④教育後の外国語での確認テストの実施と理解度の記録、⑤現場単位での日次・週次の安全ミーティングへの組込み等が挙げられる。厚生労働省が公開する「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」においては、産業廃棄物処理業向けに、英語だけでなく、中国語、韓国語、ベトナム語、タイ語等の多言語版の教材が用意されており、これを活用することは非常に有用である。
特に注意が必要なのは、安全衛生教育の形骸化である。書面上「実施済み」となっていても、外国人本人が内容を理解していない状態では、法令上の義務を履行したことにはならない。当局の調査では、外国人本人への聴取が行われることがあり、書面と実態の乖離が発覚すれば、教育義務違反として処分対象となる。教育後の理解度確認を、書面・対話・実地確認の組合せで、複層的に行うことが肝要である。
(5)転籍制限の特例と昇給
育成就労では、一定期間後の転籍(転職)が認められる。転籍可能となる最短在籍期間は、原則1年であるが、資源循環分野(廃棄物処分業(中間処理))については、受入・選別・処分・搬出からなる一連の工程の理解と労働安全教育の修得に「同一の受入れ機関において2年程度の育成」を要するとの認識から、当分の間、2年の転籍制限期間が設定されている(分野別運用方針・別紙19)。
実務上、資源循環分野では転籍制限期間が2年に設定されているため、受入れ機関には、毎年、業界協議会において設定・公表される昇給率(所定内給与の定期昇給分及びベースアップ分を基準)に基づき、育成就労外国人の所定内賃金を1年目から2年目にかけて昇給させる必要がある(分野別運用方針・別紙19)。なお、受入れ機関が自主的に転籍制限期間を1年に短縮することも可能である(出入国在留管理庁FAQ Q43)。事業者としては、業界協議会基準を踏まえつつ、自社の処遇水準・人材定着戦略に応じて、いずれの設計を採用するかを、早期に検討する必要がある。
なお、賃金・処遇の面では、外国人労働者についても、日本人と同等以上の報酬支払が義務付けられている。日本人従業員より低い賃金での雇用、未払残業代、不当な費用控除(寮費・食費等の過大請求)は重大な違反であり、入管法違反として、前記のとおり廃棄物処理法に基づく許可の取消事由等になり得る点に留意が必要である。
Ⅱ. まとめ
2024年入管法等改正法による「育成就労」制度の創設、「特定技能」制度の拡充は、産業廃棄物処理業界にとって外国人材の受け入れによる人材不足問題解消に向けた重要な契機となる。しかし、外国人材の雇用管理の問題は、入管法違反を端緒とした許可の必要的取消事由にも繋がり得るため、実務上重要なポイントになる。他の法令違反が許可の必要的取消事由に該当し得るという法律構造は、他の業種には見られない廃棄物処理法特有の問題であり、「育成就労」「特定技能」制度の活用にあたっては、この問題に留意してコンプライアンス遵守に向けた社内体制を構築していく必要がある。
このように外国人材の登用にあたっては、対処すべき実務上の課題も多くあるが、長い期間、人材不足に悩まされてきた廃棄物処理業界にとっては、人材不足問題を解消する大きな契機になる。これを機に、外国人材登用の局面だけでなく、全社的にクリーンでコンプライアンスを重視した職場づくりに取り組むことは、「育成就労」「特定技能」制度を活用した外国人材の確保のみならず、魅力的な職場として、国内人材の確保にも繋がり得る。外国人材の登用に向けた準備を端緒として、国内人材・外国人材から「選ばれる企業」として、資源循環・サーキュラーエコノミーの実現に必要不可欠な産業廃棄物業界の魅力が見直されるきっかけとなることを願う。
当事務所としても、「育成就労」「特定技能」制度を活用した外国人材の登用の問題にとどまらず、静脈産業におけるコンプライアンス体制の拡充に向けたサポート等に引き続き取り組んでいく次第である。
- 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針及び特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(分野別運用方針の別紙19(https://www.moj.go.jp/isa/content/001454707.pdf) 以下「分野別運用方針・別紙19」という。)参照。
- ただし、例外として、日本で「特定技能1号」の方同士の間に生まれた子どもや、「留学」から「特定技能1号」に在留資格を変更する際、既に「家族滞在」の在留資格で本邦に在留している配偶者や子どもについては、特に人道上の配慮が必要であるとして、在留資格「特定活動」への変更が認められ、家族帯同が認められる場合がある(Q&A・Q9)。
- 入管法別表第一の五の表「特定活動」のうち、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動(いわゆる「告示外特定活動」であり、法務大臣が告示で類型的に定める活動の枠外で、申請者ごとに個別に在留が認められる類型)をいう。
- 令和8年度資源循環分野における外国人材受入れ支援等業務の概要及び企画書作成事項(https://www.env.go.jp/content/000374808.pdf)参照。
- 「政令で定める使用人」は、廃棄物処理法施行令4条の7に列挙される者であり、本店・支店の代表者、廃棄物処理事業の事業場・営業所の代表者等が含まれることから、外国人材を直接管理する現場責任者・事業場長クラスについても欠格要件該当の有無が問題となり得る点に留意が必要である。
- 厚生労働省「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」のうち産業廃棄物処理業向けの外国語用教材(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html)等を参照。