Ⅰ. 廃棄物処理法改正によるスクラップヤード規制の導入
1. スクラップヤード規制の導入とその背景
使用済みの金属・プラスチック物品を保管・再生する事業場、いわゆる「スクラップヤード」は、資源循環の流れの中で重要な役割を担ってきた。
もっとも、その多くは、有価物として流通し、物の性状、排出状況、通常の取扱形態、取引価値及び占有者の意思等を総合考慮して「廃棄物」に該当しないと評価される限りは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)の規制対象外に置かれてきた。この間、平成29年改正により有害使用済機器の保管等届出制度(改正前廃棄物処理法17条の2)が創設されたものの、同制度の対象は政令で定める特定の使用済機器に限られ、金属スクラップ・雑品スクラップ一般には及ばなかった。その結果、一部のヤードにおける崩落・飛散、汚水の流出、火災、騒音・振動・悪臭等の生活環境保全上の支障が全国的な問題となり、環境省の実態調査でも全国で4,625件もの事業場が確認され、騒音・水質汚濁・火災等の問題発生が計275件報告されるに至った1。
こうした状況を受け、令和8年6月に成立した「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」(令和8年法律43号。以下、同法律に定める条文番号を指す場合には「改正法2」と記載し、改正法に基づく改正後の廃棄物処理法の条文を指す場合には単に条文番号のみを記載する。)によって、これまで規制の及んでいなかったスクラップヤードに対し、廃棄物処理業の許可制度を参照した新たな規制が導入されることとなった。
本ニュースレターでは、新設されたスクラップヤード規制の制度概要を整理した上で、既存の廃棄物処理事業者及びスクラップヤード事業者が同規制に対応するにあたっての実務上の留意点を解説する。
2. スクラップヤード規制の概要
(1)使用済金属・プラスチック物品の保管・再生に関する許可制の導入
今回の改正の最大の特徴は、廃棄物処理法上、「廃棄物」(2条1項)に該当しない物品の取扱事業に対し、廃棄物処理業の業許可に準じた「許可制」を導入した点にある。
この許可制は、スクラップを置く場所を一律に「スクラップヤード」として規制するものではなく、要適正保管使用済金属・プラスチック物品の譲渡のための保管を業として行う者、並びに要適正再生使用済金属・プラスチック物品の再生及び当該再生のために行う保管を業として行う者について、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けることを求めるものである(廃棄物処理施設の設置許可のように施設の設置そのものを直接の許可対象とする制度ではない。)。
改正法は、使用済金属・プラスチック物品について、新たに定義規定を新設し、以下の①~③のとおり分類する。典型的には、使用済家電等のいわゆる金属スクラップ・雑品スクラップが想定される。
| ① | 「使用済金属・プラスチック物品」(2条7項): 使用を終了し、収集された物品でその全部又は一部が金属又はプラスチックから成るもの(廃棄物並びに放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。) |
| ② | 「要適正保管使用済金属・プラスチック物品」(同条8項): ①のうち、適正でない保管(譲渡のためのものに限る。)が行われた場合には人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な保管と生活環境の保全上同等の保管(譲渡のためのものに限る。)を要するもの |
| ③ | 「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」(同条9項): ①のうち、適正でない再生及び当該再生のために行う保管が行われた場合には人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な再生及び保管と生活環境の保全上同等の再生及び当該再生のために行う保管を要するもの |
その上で、改正法は、上記②の要適正保管使用済金属・プラスチック物品の保管(譲渡のためのものに限る。)を業として行う「保管業」(24条の7以下)と、上記③の要適正再生使用済金属・プラスチック物品の再生及び当該再生のために行う保管を業として行う「再生業」(24条の15以下)の2類型について、それぞれ都道府県知事の許可を要することとした3。これに伴い、従来の有害使用済機器保管等届出制度(改正前17条の2)は、本改正の施行時に廃止され、より広範な使用済金属・プラスチック物品を対象とする新たな許可制に置き換えられる。
許可の有効期間は、5年を下らない期間であって、当該許可に係る事業の実施に関する能力及び実績を勘案して政令で定める期間とされており(24条の7第2項、24条の15第2項)、廃棄物処理業と同様の更新制が採用されている。
許可基準としては、施設及び申請者の能力に関する基準(24条の7第5項1号、24条の15第5項1号)のほか、一定の欠格要件(24条の7第5項2号イからワ、24条の15第5項2号)が定められている。欠格要件は、廃棄物処理業の許可に係る欠格要件とおおむね同様の内容となっている。
(2)行政による監督・是正措置、罰則
また、都道府県知事は、報告徴収(24条の22)、立入検査(24条の23)、改善命令(24条の24)及び措置命令(24条の25)を行うことができ、許可業者が欠格要件に該当するに至った場合等には許可を取り消さなければならない(必要的取消。24条の10第1項、24条の17)。また、施設・能力に係る基準への不適合又は許可条件への違反がある場合には許可を取り消すことができる(任意的取消。24条の10第2項、24条の17)。暴力団排除の観点から、都道府県知事が許可又は許可の取消しを行おうとするときは、暴力団員等に該当する事由の有無について警察本部長等に意見聴取を行うものとされ(24条の29)、許可業者について暴力団員等に該当すると疑うに足りる相当な理由があり、適当な措置を講ずる必要があると認める場合には、警察本部長等から都道府県知事への意見提出を可能とする規定(24条の30)が設けられた。
無許可で保管業又は再生業を行った者及び不正の手段により許可を受けた者は、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処せられ、又はこれらが併科される(25条1項17号・18号・24号・25号)。これは、廃棄物処理業の無許可営業(同項1号)と同水準の法定刑である。
法人の代表者・従業者等が業務に関し違反行為をした場合には、両罰規定(32条)により法人にも罰金刑が科され、無許可営業・不正の手段による許可取得・無確認輸出等を行った法人に対しては3億円以下の罰金が重科される(32条1項1号)。
許可業者自身がこれらの違反により罰金刑に処せられた場合には、当該許可業者は欠格要件に該当し(24条の7第5項2号ニ、24条の15第5項2号)、保管業又は再生業の許可は必要的取消の対象となる(24条の10第1項、24条の17)。この点は、廃棄物処理業の許可制度と同様である。
廃棄物処理業の許可に係る欠格要件との関係では、スクラップヤード規制違反により罰金刑に処せられたことを許可の欠格事由の対象から除外する取扱いが明示されている(7条5項4号ニ括弧書き、14条5項2号イ)。そのため、スクラップヤード規制違反により罰金刑に処せられたとしても、それのみをもって既存の一般廃棄物処理業、産業廃棄物処理業又は特別管理産業廃棄物処理業の許可に係る欠格事由には該当せず、これらの許可の必要的取消の対象ともならない(なお、拘禁刑以上の刑に処せられた場合には、違反した法令の種類を問わず、欠格事由(7条5項4号ハ)に該当し得ることには留意が必要である。)。
(3)国内再生の原則と輸出確認の義務付け
さらに、改正法は、国内において収集された要適正保管・要適正再生使用済金属・プラスチック物品であって特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)2条1項に規定する特定有害廃棄物等に該当するもの(「特定要適正保管使用済金属・プラスチック物品」等)について、その保管・再生はなるべく国内において適正にされなければならないとする国内処理の原則(24条の13、24条の20)を定めるとともに、これらを輸出しようとする者に対し環境大臣の確認を義務付けた(24条の14、24条の21)。
輸出確認の対象となるのは、国内において収集された要適正保管使用済金属・プラスチック物品又は要適正再生使用済金属・プラスチック物品のうち、バーゼル法2条1項の「特定有害廃棄物等」に該当するものに限られる(24条の13、24条の14、24条の20、24条の21)。輸出確認の対象物品は、許可制の対象となり得る物品の一部であり、両者の範囲は同一ではない。
(1)から(3)の内容を整理すると、下表のとおりである。
| 項目 | 内容 |
| 規制対象物 | 使用済金属・プラスチック物品(使用を終了し、収集された物品で、その全部又は一部が、金属又はプラスチックから成るもの。廃棄物・放射性物質等を除く。)のうち、要適正保管・要適正再生に該当するもの(2条7項から9項) |
| 規制類型 | ①保管業(要適正保管物品の譲渡目的の保管。24条の7)、②再生業(要適正再生物品の再生及び当該再生のための保管。24条の15。ただし、完成品の製造における工程の一部として行われる再生及び当該再生のために行う保管は除外。)。いずれも都道府県知事の許可制(敷地面積が政令面積以下の者等は許可不要。)。 なお、事業範囲の変更についても許可が必要(24条の8及び24条の16)。 |
| 許可の有効期間 | 5年を下らない政令で定める期間ごとの更新制(24条の7第2項、24条の15第2項) |
| 許可基準・遵守事項 | 施設・能力基準及び欠格要件への適合(24条の7第5項、24条の15第5項)、再生・保管基準の遵守(24条の7第7項、24条の15第7項)、帳簿の備付け・記載・保存(24条の7第8項・9項、24条の15第8項) 等 |
| 監督権限 | 報告徴収(24条の22)、立入検査(24条の23)、改善命令(24条の24)、措置命令(24条の25)、許可の取消し(24条の10、24条の17) 等 |
| 罰則 | 無許可営業、不正手段による許可取得、事業停止命令・措置命令違反等:5年以下拘禁刑・1,000万円以下罰金(併科可。25条1項)/改善命令違反等:3年以下拘禁刑・300万円以下罰金(併科可。26条7号)/帳簿備付・記載・保存義務違反等:30万円以下罰金(30条)。法人には両罰規定により、無許可営業等につき3億円以下の罰金(32条1項1号) 等 |
| 輸出規制 | バーゼル法上の特定有害廃棄物等に該当する物品の輸出につき、原則として、環境大臣の確認が必要(24条の14、24条の21)。 |
| 既存許可業者の特例 | 一般廃棄物・産業廃棄物の処理業者、特別管理産業廃棄物の処理業者、処理施設設置者に関する特例(24条の12、24条の19)。なお、個別リサイクル法上の認定事業者についても、各個別法に許可を不要とする特例が設けられている。 |
| 施行期日 | 公布日(令和8年6月19日)から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日(令和10年12月18日まで。改正法附則1条) |
(注)本表は改正法及び環境省公表資料に基づき作成した概要であり、許可基準、再生・保管基準の技術的内容、許可を要しない事業場の敷地面積等の細目は、いずれも今後の政省令に委ねられている。
3. 施行スケジュールと経過措置
改正法のうち、スクラップヤード規制に係る規定の施行日は、公布の日(令和8年6月19日)から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日とされており(改正法附則1条)、遅くとも令和10年12月18日までに施行される4。
最長で約2年6か月の準備期間が設けられているとはいえ、後述するとおり、既存事業者が許可基準に適合するための施設改修や社内体制の整備には相当の時間を要する。保管業及び再生業の許可取得に関しては、施行日前に許可申請を行い、都道府県知事から許可を受けることができ、施行時に許可が間に合わない場合でも、施行日前に申請を行っていれば、申請に対する処分がなされるまでの間、保管業及び再生業の許可を受けたものとみなされるものの(改正法附則2条)、それでもなお、新たな「許可制」の導入による影響は大きい。
具体的な申請時期、申請書類及び審査手続については、今後の政省令の整備や各都道府県における運用の具体化を待つ必要があるものの、事業者においては、早期に情報収集を開始するとともに、許可の要否、施設改修の必要性及び申請準備に要する期間を確認し、政省令の具体化に応じて速やかに申請手続に移行できる体制を整えておくことが肝要である。
Ⅱ. 既存事業者への影響と実務上のポイント
1. 既存事業者・既存制度への影響
(1)既存事業者の許可取得義務
ア 改正法は、新規参入者のみを対象とするものではなく、長年操業している既存事業者を含め、全国一律に許可の取得を義務付ける点で、実務への影響が大きい。これまで届出も許可も不要であった有価物取扱事業者(雑品スクラップ業者等)であっても、施行後は、原則として、許可を得なければ事業を継続することができなくなる。
既存事業者が許可を取得するためには、①許可基準(施設・能力基準。24条の7第5項1号、24条の15第5項1号)への適合に向けた施設・設備の改修や保管方法の変更、②今後、政令で定められる再生・保管基準の遵守体制の構築(防油・防水・防火対策等)、③トレーサビリティを確保するための帳簿の備付け体制の新設(24条の7第8項、24条の15第8項)、④許可申請書類の作成・行政手続対応といった作業を並行して進める必要がある。加えて、役員等が欠格要件(24条の7第5項2号、24条の15第5項2号)に該当しないことの確認も、申請前に済ませておく必要がある。
イ また、保管業の規制対象となる保管は、「譲渡のためのもの」に限られている(2条8項、24条の7第1項)。この譲渡目的の保管との関係で実務上問題となる可能性があるのは、解体工事業者等の規制対象となるスクラップ物品の発生元となる事業者が、自らの事業活動に伴って生じたスクラップ物品を、売却までの間、工事現場や自社の資材置場で一時的に保管する行為の「保管業」該当性である。
この点、条文上、許可の対象となる事業者は、要適正保管使用済金属・プラスチック物品の保管(譲渡のためのものに限る。)を「業として行おうとする者」(24条の7第1項)であり、スクラップ物品の発生元となる事業者による自己保管を明示的に除外する規定は置かれていない。許可を要しない事業者の範囲については、24条の7第1項ただし書に基づく政令に委ねられており、今後制定される政令やガイドラインの内容に留意する必要がある。
(2)既存事業者に対する適用除外
改正法は、既存の廃棄物処理業者等に対する重複規制を回避するための特例を設けている。
まず、保管については、一般廃棄物及び産業廃棄物の収集運搬業者・処分業者、特別管理産業廃棄物の収集運搬業者・処分業者並びに一般廃棄物処理施設・産業廃棄物処理施設の設置許可を受けた者は、本許可を受けることなく、それぞれの許可に係る廃棄物について行う保管と生活環境の保全上同等の範囲で、要適正保管使用済金属・プラスチック物品の保管を行うことができる(24条の12)。これに対し、再生及びそのための保管について特例を受けることができるのは、収集運搬業者を除く、一般廃棄物・産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の処分業者及び廃棄物処理施設の設置者である(24条の19)。収集運搬業者につき、保管業と再生業で特例の取扱いが異なるのは、廃棄物の収集運搬業には運搬に伴う積替保管が含まれ得るため、既存の収集運搬業の許可に係る廃棄物の保管と生活環境の保全上同等の範囲では、改めて保管業の許可を求める必要性が低いと考えられたものと解される。一方、再生は、処分・加工に係る行為であり、収集運搬業の内容とは異なることから、再生業の特例の対象とはなっていない。
また、資源有効利用促進法・小型家電リサイクル法・プラスチック資源循環促進法・再資源化事業等高度化法上の各認定事業者や、自動車リサイクル法上の解体業者・破砕業者等については、廃棄物処理法の改正に伴い各個別法が改正され、適用除外に関する一定の要件(当該認定計画の対象物が要適正物品に相当すること、認定計画に従った行為であること、廃棄物の再資源化等に必要な行為との生活環境保全上の同等性があることなど、各法律が個別に定める要件)を満たす限り、対象となる物品及び行為の範囲内では、本許可を要しないものとされている(改正法2条から6条まで)。
もっとも、上記の特例は無限定ではない。
第一に、特例が及ぶのは、要適正物品の保管・再生が、各許可・認定に係る廃棄物の処理と生活環境の保全上同等と評価される行為の範囲に限られる。したがって、産業廃棄物処分業の許可を有する事業者であっても、当該保管・再生が、既存の許可に係る廃棄物の保管・処分と生活環境の保全上同等とは認められない場合には、本許可が別途必要となり得る。なお、生活環境の保全上同等か否かを判断する具体的な基準は、現時点では明らかにされていない。
第二に、上記の特例が適用される場合、対象者は、本許可を別途取得することなく保管・再生を行うことができる。しかし、これは、保管・再生に関する規制そのものが適用されなくなることを意味するものではない。廃棄物処理法上の特例対象者は、24条の12第2項及び24条の19第2項により、個別リサイクル法上の特例対象者は、各個別法の規定により、保管基準・再生基準の遵守義務、帳簿の備付け・記載・保存義務等を負う。したがって、特例の適用により免除されるのは本許可の取得手続であり、各種基準を遵守するための施設・設備や管理体制の整備、帳簿管理等の実務対応まで免除されるものではない。
(3)動脈産業への影響
改正法は、廃棄物処理業者等の静脈産業側の事業者だけではなく、動脈産業側の事業者にも及ぶ可能性がある。使用済金属・プラスチック物品は、有価物として、動脈産業側でも広く取引されているため、個別のスクラップ物品が要適正保管物品又は要適正再生物品に該当するかに関する今後の解釈・運用や、行為規制の内容、許可を要しない事業者の範囲等を定める政令の内容によっては、廃棄物処理法上の許可を有しない動脈側の事業者についても、保管業・再生業の許可取得が必要となる場合が生じ得る。
具体的には、①金属スクラップ・非鉄原料等を買い取り、自社のヤード・倉庫で保管した上で製鋼・製錬メーカーや海外に転売する商社・原料問屋、②使用済鉛蓄電池や使用済部品を顧客から引き取り、専門業者への売却までの間保管する自動車ディーラー・整備工場・カー用品店、③下取り・店頭回収した使用済家電等を、売却目的で保管する小売事業者等が想定される。
取り扱っているスクラップ物品がスクラップヤード規制の対象となった場合の動脈側事業者の対応としては、自ら新たに許可を取得するほか、許可事業者又は改正法に基づく特例の適用を受ける事業者に保管・再生に関する業務を外部委託することや、これらの事業者をM&Aにより買収した上で、保管・再生事業を当該事業者に行わせることが考えられる。もっとも、M&Aにより、許可事業者又は改正法に基づく特例の適用を受ける事業者を買収したとしても、買収主体である動脈側事業者が自社で保管・再生事業を行うことはできず、あくまで買収した許可事業者又は改正法に基づく特例の適用を受ける事業者に保管・再生事業を行わせる必要があることに留意が必要である。
(4)地方自治体の各条例との関係
千葉県・千葉市をはじめ、既に独自の金属スクラップヤード等の規制条例を制定している自治体は複数存在する。全国一律の許可制が導入された後も、これらの自治体条例が併存し、法律と条例の規制対象が重複する場合には、先行条例に基づく許可を取得している場合であっても、改正法上の許可対象に該当する限り、改正法上の許可を別途取得する必要がある。他方、各条例が施行後に廃止されるか、又は上乗せ・横出し規制として改正されるかは、各自治体の今後の対応による。
既に条例が存在する地域の事業者においては、施行までの間、当該条例の存廃・改正の動向を継続的に確認する必要がある。
2. スクラップの発生元事業者の留意点
改正法は、金属・プラスチックスクラップを売却・引き渡す発生元事業者に対して、産業廃棄物の委託基準(廃棄物処理法12条5項等)に相当する確認義務(許可の有無の確認、契約の書面化等)を課すものではない。
しかし、無許可で保管業・再生業を行った事業者には罰則(25条)が課されるところ、そのまま刑事摘発又は行政上の命令等により取引継続が困難となれば、自社が排出するスクラップの引き渡し先がなくなるという実務上の問題が生じるほか、そのような取引先と取引をしていたということで、コンプライアンス遵守やレピュテーション上の問題にもつながり得る。改正法の施行後は、取引先の許可取得状況等(例えば、許可証又は特例適用根拠、許可の対象物・対象区域・有効期間の確認など)について、必要に応じて確認したり、契約上、適法性を表明保証させるなどの対応も考えられよう。
Ⅲ. 政省令制定にあたっての課題と事業者の対応方針
スクラップヤードにつき、環境省の実態調査(令和7年度)により全国で4,625件もの事業場が確認され、騒音・水質汚濁・火災等の問題発生が計275件報告されたこと、バーゼル法上の輸出手続を経ないスクラップの不適正輸出の事例が確認されたことという立法事実を踏まえると5、廃棄物処理法の改正の必要性(立法事実)自体は否定しがたい。また、「許可制」という構造についても、事業開始前に施設、事業遂行能力及び欠格要件を審査して不適格な事業者の参入を防止するとともに、許可後も事業停止又は取消しにより不適正な事業者を排除するという目的を考慮すると、合目的的であるといえる。
他方で、本改正は、金属又はプラスチックを含む使用済物品を適用対象とした上で、無許可営業等に廃棄物処理業者に対するものと同等の重い罰則が設けられている。許可を要しない事業場の敷地面積及び事業者の範囲、施設・能力基準並びに再生・保管基準の具体的内容は、政省令に委ねられ、未だその具体的な内容は定められておらず、今後の制定を待つ状況にある。この意味において、スクラップヤード規制の外縁はまだ確定されていない。
廃棄物処理法について、「廃棄物」だけでなく「有価物」についても規制を及ぼす改正という点で、本改正は非常に重要な改正となるが、その適用・実務運用にあたっては、今後定められる政省令等の内容が極めて重要である。政省令の制定にあたっては、特に、規制対象の範囲、許可の適用除外及び各種基準を可能な限り明確化し、事業者の法適用に関する予測可能性を十分に担保することが必要であると考えられ、今後、改正法の施行に向けて対応すべき実務上・法制上の課題は大いにある。
このような状況において、事業者においては、施行時に適法な事業継続が困難となる事態を避けるため、政省令の制定状況を注視しつつ、①再生・保管基準の内容の確認、②施設改修の要否の確認、③既存許可に基づく適用除外の確認、④輸出を行う事業者においては輸出確認制度の適用関係の確認等を進めることが肝要である。
Ⅳ. まとめ
以上でみたとおり、新たに導入されることとなったスクラップヤード規制は、廃棄物に該当しない使用済金属・プラスチック物品の保管・再生事業に対し、廃棄物処理業と同水準の許可制を導入するものであり、資源循環・静脈産業に関わる事業者にとって、大きな制度変更である。
今後、許可基準への適合や施設改修に相応の資金を要することとなれば、自力での対応が困難な事業者が事業から撤退し、又は他の事業者への事業売却を選択する一方、資金力、施設及び許認可対応のノウハウを有する廃棄物処理業者、リサイクル事業者その他の事業者が、これらの事業者を買収するなど、業界再編が進む可能性もある。特に、産業廃棄物処理業者等には、既存許可に係る行為と生活環境の保全上同等の範囲において、新制度上の許可を受けずに保管又は再生を行うことができる特例が設けられているため、既存の許可、施設及び人材を有する事業者が、M&Aにおける有力な買手となることも考えられる。
M&Aの場面において、対象会社が金属・プラスチックスクラップの保管・再生事業を行っている場合には、新制度への対応状況及び対応方針(許可取得の要否、特例適用の可否、タイムライン、投資規模)を許認可デュー・ディリジェンスの評価項目に組み込む必要がある。また、政省令の公表前に実施されるM&Aについては、現時点で把握可能な事業実態及び公表資料を前提として、新制度が対象会社の事業に及ぼし得る影響を暫定的に評価し、その不確実性を開示資料及び契約条件に適切に反映させることが求められる。
今後、当事務所においても、廃棄物処理法の改正に伴う政省令の制定過程を注視し、その内容を動脈・静脈双方の事業者様に対して発信していくとともに、「スクラップヤード規制」を端緒とした規制対応から業界再編の動きまで、幅広くサポートできるよう引き続き取り組んでいく次第である。
- 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案について」(環境省・令和8年4月)(https://www.env.go.jp/content/000392050.pdf)
- 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」(環境省・令和8年4月10日閣議決定)(https://www.env.go.jp/content/000392045.pdf)
- 事業場の敷地面積が政令で定める面積以下である者等については、許可を要しない(24条の7第1項ただし書、24条の15第1項ただし書)。
- なお、同改正法に盛り込まれた災害廃棄物処理の推進に係る主要な規定(市町村の一般廃棄物処理計画の法定記載事項に、非常災害時における一般廃棄物の適正処理等に関する施策を追加する規定、災害廃棄物を受け入れる最終処分場の設置者の指定制度の創設等)は、公布の日から起算して3か月を超えない範囲で政令で定める日から施行される。
- 前掲注1