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GENIUS法の成立と日系企業への影響

Ⅰ. はじめに

2025年7月18日、米国において「GENIUS法」(GENIUS Act:Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)が成立し、初の連邦レベルによるステーブルコイン規制法として大きな注目を集めています。GENIUS法により、米国における支払い用途のステーブルコインに対して明確な法的枠組みが与えられることになります。2025年9月19日、米国財務省は、GENIUS法の実施に関する規則案をパブリックコメントに付しており、2026年前半には、財務省から最終的な規則が公表されることが予想されています。今後、GENIUS法及びそれに関連する規則が執行されることにより、安全で透明性が確保された市場が整備され、ステーブルコインの発行・利用が促進されることが予想されます。

本ニュースレターでは、GENIUS法の成立までの経緯から、規制の主要なポイントを体系的に紹介し、最後に、日本企業への実務上の影響や留意点について概説いたします。

Ⅱ. GENIUS法成立の経緯

従来、米国においては、州ごとに異なるステーブルコインのライセンス制度や規制がパッチワーク的に存在しており、連邦レベルで一貫したルールが存在せず、法的位置付けが必ずしも明確ではない状態でした。ステーブルコイン市場は急速に拡大する一方で、連邦レベルでの規制が不存在であるため、市場の不透明性や企業にとっての法的リスクにつながっていました。

GENIUS法によって、支払いステーブルコイン発行者に対して新たな連邦ライセンス制度が創設され、発行者に求められる要件、裏付け資産の在り方、アンチ・マネーロンダリング義務、監督の枠組みなどが包括的に定められました。

また、米国外で設立された外国の支払いステーブルコイン発行者についての規定も整備されています。

GENIUS法は、成立日から18か月後(2027年1月18日)又は「主要な連邦支払いステーブルコイン規制当局」(primary Federal payment stablecoin regulator)が最終規則を発表してから120日後のいずれか早い日に発効します。主要な連邦支払いステーブルコイン規制当局は、成立から1年以内に規則制定を行い、最終規則を発表することが求められています。

Ⅲ. GENIUS法の規制の概要

1. 「支払いステーブルコイン」の定義

GENIUS法において支払いステーブルコイン(payment stablecoin)は以下の通り定義されています。

 

「支払いステーブルコイン」とは:
デジタル資産(暗号化により保護された分散台帳に記録された価値のデジタル表章)であって、(i)支払い又は決済の手段として使用される、又は使用されるよう設計されているものであり、かつ、(ii)①その発行者が一定の金銭的価値(デジタル資産で表章されたものを含まない)での転換、償還、又は再購入を義務付けられており、また、 ②その発行者がそのような一定の金銭的価値について安定した価値を維持する、又は維持できるという合理的な期待を創出することを表明するものを指すとされています。

 

この定義は、既存の「デジタル資産」全般を包括するのではなく、あくまで決済や送金に利用されるとともに、発行者が一定額での償還を約したステーブルコインを対象としている点が特徴的です。また、上記の定義に続けて、(i)国家通貨、(ii)預金(トークン化預金を含みます。)、又は(iii)有価証券であるデジタル資産は、支払いステーブルコインに含まれないということが明示的に規定されています。

GENIUS法では、この支払いステーブルコインは、有価証券やコモディティには該当しない点が明確されるとともに、預金保険制度の対象外とされています。

2. ステーブルコインの発行者―誰が発行者となれるのか

GENIUS法は、ステーブルコインを発行できる者を「許可された支払いステーブルコイン発行者」(permitted payment stablecoin issuer)に限定しており、それ以外の者による発行を禁止しています。許可された支払いステーブルコイン発行者は、原則として、米国において設立された者である必要があり、大きく分けて三つの類型があります。

 

「許可された支払いステーブルコイン発行者」とは、米国で設立された者であり、以下のいずれかの条件を満たすもの:
1.    保険付き預金機関の子会社であり、保険付き信用組合を含む、GENIUS法の5条(保険付き預金機関の子会社および連邦認定支払いステーブルコイン発行者の承認)に基づいて支払いステーブルコインの発行が承認されている者。
2.    「連邦認定支払いステーブルコイン発行者」と定義される者。具体的には以下の条件を満たす者:
 •    州認定支払いステーブルコイン発行者以外のノンバンク企業であり、5条に基づいて通貨監督庁(OCC)によって支払いステーブルコインの発行が承認されている者。
 •    保険なしの国立銀行であり、(i)改正法典の第LXII章に基づいてOCCによって認可され、(ii)5条に基づいてOCCによって支払いステーブルコインの発行が承認されている者。
 •    非米国銀行の連邦支店であり、5条に基づいてOCCによって支払いステーブルコインの発行が承認されている者。
3.    「州認定支払いステーブルコイン発行者」と定義される者。具体的には以下の条件を満たす者:
 •    州の法律に基づいて法的に設立され、州の支払いステーブルコイン規制当局によって支払いステーブルコインの発行が承認されている者であり、かつ、
 •    (i)第LXII章に基づいて認可された保険なしの国立銀行、(ii)非米国銀行の連邦支店、(iii) 保険付き預金機関、又は(iv)それらの子会社ではない者。

 

OCCによる承認は主に以下の考慮要素に基づいて審査されます。なお、オープン、パブリックな又は分散型ネットワーク上における支払いステーブルコインの発行であることは、申請を却下する正当な理由とはならないとされています。

 

考慮要素概要
財務・リソース申請者(又はその子会社)の財務状況及びリソースに基づき、発行者に係る要件を満たす能力
法令違反歴役員や取締役に、インサイダー取引、横領、サイバー犯罪、マネーロンダリング、テロ資金供与又は金融詐欺に関する重罪の犯罪歴があるか
役員・株主の資質①役員や主要株主の能力、経験、誠実性が十分かどうか
②過去に法令・規制を遵守してきたか
③当局への約束や条件を履行できるか
償還方針申請者の償還方針が法令の基準を満たしているかどうか
その他の考慮要素連邦当局が、承認を受けた支払いステーブルコイン発行者の安全性及び健全性を確保するために必要と認めるその他の要素

 

許可された支払いステーブルコイン発行者は、GENIUS法に基づき、以下の規制に服します。

 

①    業務範囲規制
②    裏付資産に関する規制
③    月次報告
④    償還に関する規制
⑤    資本規制、流動性その他のリスク管理
⑥    AML規制
⑦    資産凍結に関する命令の遵守
⑧    禁止行為
⑨    財務監査・報告
⑩    非金融サービス上場企業による発行規制          等

 

特に、許可された支払いステーブルコイン発行者は業務範囲規制として、①支払いステーブルコインの発行、②支払いステーブルコインの償還、③関連する裏付資産の管理(裏付資産の取得、売却、保有を含みます。)、④支払いステーブルコイン、必要な裏付資産又は支払いステーブルコインの秘密鍵の保管サービスの提供、⑤上記①から④のいずれかを直接支援するその他の活動のみ行うことが可能であり、業務範囲をステーブルコイン関連業務に限定することで、監督権限が及ばない他業の失敗による破綻等を抑止しようとしています。

また、主な事業が金融ではない公開会社やその子会社・関連会社は、原則として支払いステーブルコインを発行できないとされている点も特徴的な規定になります。主な事業が金融ではない公開会社やその子会社・関連会社が支払いステーブルコインを発行するためには、次の条件を満たし、ステーブルコイン認証審査委員会の全会一致の承認を得ることが必要とされています。

 

①    ステーブルコインの発行により、米国の銀行制度や金融の安定性又は預金保険基金に重大な悪影響を与えないと認められること
②    利用者同意なしに、取引データから得た個人情報を以下のように使わないこと
 •    広告やコンテンツをターゲティング・個別化・順位付けするために使うこと
 •    第三者に販売すること
 •    関係会社ではない会社と共有すること
③    他の商品やサービスを買わせるための条件付き販売(いわゆる「抱き合わせ」)をしないこと

 

このような規定からは、非金融事業者がネットワーク効果を効かせて、ステーブルコイン市場を独占することについての警戒感が見られます。

3. 裏付け資産(リザーブ)要件ほか発行者の義務・禁止事項

GENIUS法は、発行されたステーブルコインの裏付け資産について厳格な要件を定めています。発行者は、コインの発行総額に対して常に1対1の価値を担保する裏付け資産を保有する義務を負い、その資産は米ドル、短期国債、適格レポ取引、一定のマネー・マーケット・ファンドといった高流動性・低リスク資産に限定されています。

発行者はステーブルコインの固定額での償還義務を負い、償還方針を公開するとともに、手数料を明示しなければなりません。発行者はまた、保有資産の内容について少なくとも毎月開示を行う必要があり、ステーブルコインの発行残高が500億米ドルを超える大規模発行者については、年次の外部監査も義務付けられます。

マーケティングに関する規制も厳格で、例えば「米政府が保証している」あるいは「FDIC保険が付保されている」といった誤解を招く表示は禁止されています。また、発行者自身による利払い、すなわち利息やイールドの付与は禁止され、いわゆる「利回り型ステーブルコイン」のモデルは認められません。

4. アンチ・マネーロンダリング・資産凍結対応

許可された支払いステーブルコイン発行者は、銀行秘密法(BSA)における「金融機関」として扱われ、アンチ・マネーロンダリング(AML)や経済制裁プログラム等を遵守する義務を負います。したがって、許可された支払いステーブルコイン発行者は適切な取引記録を保持し、疑わしい活動を監視及び報告し、発行済みのステーブルコインの凍結等を行い、顧客の本人確認プログラム等を維持することが求められます。こうした規制に許可された支払いステーブルコイン発行者が違反した場合は、刑事責任が問われる可能性があります。

財務長官は、GENIUS法に従って、「デジタル資産を含むマネーロンダリングなどの不正活動を検出するために、規制された金融機関が使用している、又は使用する可能性のある革新的又は新しい方法、技術、戦略を特定する」ため、2025年8月にパブリックコメントを求めました。

また、発行者は、法的命令(lawful order)の条件を遵守する技術的能力を有し、かつ遵守する場合に限り、支払いステーブルコインを発行することが可能とされています。ここで、「法的命令」とは、連邦法に基づいて、裁判所や権限を持つ連邦機関から正式に出された有効な決定や命令等で、次の条件を満たすものを指します。

 

①    発行者が出した支払いステーブルコインの差押え、凍結、無効化、送金の停止を求めること
②    対象となる支払いステーブルコインや口座が明確に特定されていること
③    法律に基づき裁判や行政の場で不服を申し立てたり審査を受けたりできること

 

したがって、支払いステーブルコインは、発行者が、特定のウォレット内にある支払いステーブルコインの差押え、凍結、無効化、送金の停止が技術的に可能なブロックチェーン上で発行される必要があります。

5. 規制監督体制

監督体制は発行者の類型ごとに分かれています。

発行済みの支払いステーブルコインが100億米ドルを超える許可された支払いステーブルコイン発行者は、OCC、連邦準備制度理事会、連邦預金保険公社(FDIC)、全国信用組合管理局などの指定された連邦機関による監督を主に受けることになります。

発行済みの総額が100億米ドル以下の許可された支払いステーブルコイン発行者は、州の監督下で事業を運営することができますが、州の体制が連邦の枠組みに「実質的に類似している」とステーブルコイン認証審査委員会によって認定されている必要があります。州レベルで監督されている許可された支払いステーブルコイン発行者の発行済み総額が100億米ドルの規模を超えた場合、原則として、連邦機関による監督に移行しなければなりません。

100億米ドルを超えるステーブルコインを発行する州認可の預金機関は、連邦と州の共同監督を受けます。

連邦及び州の規制当局は、ライセンスの発行、監督、検査、及び適用要件の遵守を強制する広範な権限を持ちます。

6. 外国発行ステーブルコインに関する規制

GENIUS法は、許可された支払いステーブルコイン発行者以外の米国での支払いステーブルコインの発行を禁止するとともに、許可された支払いステーブルコイン発行者以外が発行した支払いテーブルコインの米国での取扱いを原則として、禁止しています(もっとも、デジタル資産サービス事業者1には、許可された支払いステーブルコイン発行者以外のステーブルコインの取扱いにつき3年間の猶予期間が認められています。)。

もっとも、外国のステーブルコイン発行者が次の条件を全て満たした場合には、上記の禁止の規律は適用されないことになります。

 

①    現地規制当局の監督を受けており、その規制体制が米国の規制枠組み(特に発行者行為規制)と同等であることにつき財務省の認定を受けていること。
②    米国顧客の流動性需要を満たすのに十分な裏付資産を米国内の金融機関に保有していること。ただし、相互承認で別に認められる場合を除く。
③    発行国が、米国による包括的な経済制裁の対象国でないこと、また財務省により「マネーロンダリングの主要懸念国」と指定されていないこと。
④    発行者のOCC登録

 

上記①の財務省による同等性認定は、ステーブルコイン認証審査委員会の(財務省以外の)他の全メンバーから勧告を受けた場合のみ行うことができるとされており、同等性認定の申立ては、外国のステーブルコイン発行者と規制当局が行うことができるとされています。

このような外国のステーブルコイン発行者には、①OCCが定める報告・監督・検査の義務に服することや②GENIUS法の執行に関し、米国の裁判管轄権に従うことに同意することなどの義務が課されることになります。そして、OCCへの登録を受けた外国発行者が発行したステーブルコインは、デジタル資産サービス事業者が適法に取り扱うことができることになります。

なお、GENIUS法は、ステーブルコインに関する相互協定に関する規定を定めており、財務長官は、米国と、GENIUS法と同等のステーブルコイン法制を持つ国・地域との間で、相互協定や二国間合意を結び、運用することができるとされています。相互協定や二国間合意の締結に当たっての考慮要素として、以下のものが規定されています。
 

①    その国・地域の規制に、発行者に係る行為規制と同様の要件が含まれているか。
②    マネーロンダリング防止やテロ資金対策、制裁遵守のための十分な基準が設けられているか。
③    国際取引を支え、米ドル建ての海外発行ステーブルコインと相互運用できるだけの監督・執行能力が備わっているか。

7. 支払いステーブルコインのカストディ規制

GENIUS法は、支払いステーブルコインの取扱いに関する一般的な業規制を規定している訳ではありませんが、支払いステーブルコインの裏付資産、担保として使用される支払いステーブルコイン、あるいは発行に必要な秘密鍵を保管・管理する業務に従事できるカストディ業者について以下の資格要件を定めています。
 

①    次のいずれかの規制・監督を受けていること。
 (i)    連邦レベルのステーブルコイン規制当局、又はドッド=フランク法で定められた主要金融規制機関による監督。
 (ii)   連邦預金保険法で定義される州銀行監督当局、又は2020年マネーロンダリング防止法で定義される州信用組合監督当局による監督を受けており、必要に応じて理事会に関連情報を提供できること。
②    GENIUS法に定めるカストディ業務に関する規制を遵守すること。ただし、OCC、SEC又はCFTCが定める同様の基準に従って資産を保有している場合はこの限りではない。

 

また、GENIUS法では、カストディ業者に以下のような義務を課しています。
 

①    顧客財産は顧客勘定の財産として扱わなければならない。
②    裏付資産、ステーブルコイン、現金その他の財産は、カストディ業者による分別管理が必要。事業者自身の資産とは切り離して扱い、コミングルは禁止。
③    顧客が保有するステーブルコイン、秘密鍵、現金などの資産を、債権者からの差押えや請求から保護するため、適切な措置を講じなければならない。

 

そして、GENIUS法は、顧客に対して、カストディ業者が顧客のために保有するステーブルコインについて、他の債権者に対する優先権を認めています。

Ⅳ. 日本法との比較

日本においては、2023年6月1日に施行された2022年資金決済法改正により、ステーブルコイン(電子決済手段)の発行・法制が導入されています。

資金決済法において、1号電子決済手段は「物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)」と定義されています(資金決済法2条5項1号)。①決済などに使用することが想定されていること、②法定通貨での履行を前提とすると通貨建資産であることが要件であること、③電子的に移転できるものであること、④有価証券などが除かれていることなどを踏まえると、日本法上の電子決済手段と、GENIUS法の定める支払いステーブルコインは似通った性質を有するといえます。

また、日本では電子決済手段の発行・償還は為替取引に該当するという整理の下、銀行や資金移動業者、(特別な要件を充足した)信託会社が発行者として想定されています。GENIUS法も銀行の子会社と銀行当局であるOCCから承認を受けたノンバンク企業などが発行者として規定されており、発行者の範囲に関する基本的な考え方についても、日米で似通っているという評価も可能だと思われます。

もっとも、日本においては既存の為替取引に関する規律をベースに電子決済手段のルールを整備したのに対して、GENIUS法は新たに支払いステーブルコインの発行者に関する規制を整備しており、ステーブルコインの特性を踏まえた独自のルールがみられます。例えば、GENIUS法は、主な事業が金融ではない公開会社やその子会社・関連会社による支払いステーブルコインの発行を原則として禁止しており、一定の要件を満たした上でステーブルコイン認証審査委員会の承認を得た場合に限り発行を許諾するルールを設けていますが、このようなプラットフォーマーによるネットワーク効果を考慮した規定などについては、今後日本のステーブルコイン法制のアップデートを検討する際に参考になるものと思われます。

他方で、日本の資金決済法は、電子決済手段の売買・交換・仲介・カストディなどを行う業者について電子決済手段等取引業の登録制度を整備し、仲介者規制を整備しています。これに対し、GENIUS法では一般的な仲介者制度を設けている訳ではなく、別途支払いステーブルコインのカストディ業務に関する資格要件や義務を規定しており、支払いステーブルコインの取扱いを行う者のルールに関しては、日米で差異がみられるところです。

さらに国外で発行されたステーブルコインの国内流通のルールについても差異が見られます。日本の資金決済法においては、外国で発行された電子決済手段を電子決済手段等取引業者が取り扱う場合の要件を整備し、日本の監督当局の監督権限が及ぶ仲介者に規制を課すことで、外国電子決済手段の国内流通の適切性を確保しようとしています。これに対して、GENIUS法は外国の発行者が発行する支払いステーブルコインの米国内での流通を原則として禁止し、一定の要件を満たしたうえでOCCの登録を受けた場合に限り、米国内での流通を許容するという形で、発行者自身に監督権限を及ぼす形で対応している点に差異があります。

Ⅴ. 今後の想定される動向と日本企業への影響

GENIUS法が成立したことを受けて、米国では支払いステーブルコインの発行に向けた動きが活発化されることが予想されます。特に、米国ではUSDCを始めとするステーブルコインの発行事例があるため、既存の発行者がどのようにGENIUS法に対応していくかが注目されます。また、GENIUS法では銀行も子会社を通じて支払いステーブルコインの発行が可能とされていますので、今後はノンバンク企業のみならず、銀行による発行の検討も進められていくことが予想されます。

日本企業においても、米国でステーブルコインの発行を検討する場合には、GENIUS法に準拠することになるため、大きな影響を受けることになります。また、日本で発行したステーブルコインを米国で流通させることは原則としてできないことから、その例外要件の充足がポイントになるとともに、米国で発行されたステーブルコインを日本に持ち込む際には、GENIUS法に基づく発行者の対応が資金決済法のルールを充足しているかの検討が必要になります。したがって、ステーブルコインに関連する事業に携わる日本企業においては、今後、財務省から公表される予定の最終規則その他の詳細なルールの整備や施行の動きを注視していくことが必要だと考えられます。

  1. 「デジタル資産サービス事業者」は、米国において又は米国内の顧客・利用者のために、業として、①デジタル資産と金銭的価値の交換、②デジタル資産と他のデジタル資産の交換、③デジタル資産の第三者への移転、④デジタル資産のカストディ、⑤デジタル資産の発行に関する金融サービスの提供を行う者をいい、分散台帳プロトコルなどは含まれないとされています。

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